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異世界の成金道  作者: (ちきん)
第四章奴隷商人と3人の奴隷
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4-3売れ残り

六太は自宅のある第4区の宿屋ファインにふらふらしながら帰る。

いつの間にか既に日も傾いており、影も大分伸びていた。



「親方。

 オレ今度旧ドルント領まで行くから

 用心棒を雇おうかと考えてるんですけど、

 一般的にはやっぱり冒険者ギルドに依頼するんですかな?」


「用心棒か、う~ん。

 俺は自分自身が用心棒みたいなところがあるから

 よくわからんが、

 ま、旅の間だけなら冒険者ギルドだろ」



帰宅後すぐ風呂屋で汗を流しさっぱりした六太は、

宿屋ファインの地下一階の厨房に夕飯の賄いを食べに来ていた。


ごつい親方の手は一定の速度を保ったまま、

寸胴鍋の中にある何かのスープを掻き混ぜている。

明日の朝の仕込みをしているらしい。


朝食の仕事が終わると夜の仕込みをし、

夕食の仕事が終わると朝の仕込みをする。

一体いつ休んでいるのかと心配になるが、

疲れなど微塵も感じさせない親方であった。


「旅の期間だけでないなら、そ~だなやはり奴隷だろ」


「ど 奴隷?」


「奴隷買った方が何かと使い勝手もいいんじゃないか。

 六太は金持ちなんだから奴隷の一人や二人買えるだろう」


買っていいのか?

異世界から来た六太の価値観ではかなり抵抗はあったが、

これも文化の違いということで、

とりあえずこの世界での奴隷制度について質問してみる。


「奴隷ってどんな制度になっているんですか?

 あまりよく知らないんですけど」


「なんだ、お前さんはホント色々知らないんだな。

 田舎と街では随分違うこともあるが、

 お前さんは色々幸せなとこに住んでたんだな」


なんとも耳が痛い親方の指摘を苦笑いしながら聞く。


「奴隷には条件付奴隷と無制限奴隷の二種類あんだ。

 条件付の方は普通の雇用と同じようなもんだが、転職の自由はねぇ。

 無制限の方は人生に自由がねぇ」


護衛だけなら条件付奴隷で足りるらしいが、護衛以外の仕事も頼むつもりなら

無制限奴隷が適しているらしい。

価格もやはり無制限の方が条件付に比べれば数倍以上は値段が違うとのこと。


「俺は条件付奴隷だから、どんな感じかは掴めるだろ」


頷く六太。親方は鍋を掻き混ぜる手を休めることなく、

半身を六太に向けて続ける。


「俺のように料理人の条件付なら料理以外はやらない。

 例えば客室の掃除とかフロントとかは断固として俺はやらん」


価格は聞き辛かったのだが、大したことでもないといった感じに

親方の方から教えてくれた。

大体100万ジェジェくらいとのこと。

料理人の条件付奴隷としてはかなり高めの金額らしい。


それ以上のことを六太は聞くつもりはなかったが、

親方は物のついでに教えてくれた。



親方は元々とある領主のお抱え料理人だった。

その腕は多くの貴族らを満足させ、領主の覚えもめでたかった。


しかし、親方の料理への情熱は果てしなかった。


他人からの評価もある時期からは良好なものばかりになり、

研究に没頭するようになった。

夢中になりすぎて食材や道具の購入で借金を作り、

領主からも面倒みきれないと愛想を尽かされた。

そして、借金を返せなくなったために奴隷に身を落としたとのこと。



六太からすれば驚きも同情もなかった。

自業自得だし、普段の親方の料理に対する暑苦しいほどの情熱からすれば、

十分想定内の話だ。


「それでハロル・ファイン様に拾われたんだが、

 ここの宿屋で俺は“ほどほど”という言葉を学んだ。

 それに珍しい食材や道具を追い求めているだけでは

 見られない料理の奥深い世界も知った。

 だから、奴隷になって良かったってもんよ、ガハハハッ」


親方の豪快な笑い声を聞いて、

六太はほんの少し『奴隷』という言葉への嫌悪感が薄れた気がした。

止まっていた料理を口へ運ぶ手もまた動きだしていた。


親方は聞いてもいないことまえ色々教えてくれるので、

六太はダメもとで親方に奴隷購入の付き添いをお願いしてみた。

しかし、そんなどうでもいいことには付き合ってられないと、

一蹴された。


やはり、厨房から離れてまで、六太に手を貸してはくれないようだ。


「気に入った奴を買えばいいのさ。

 気に入らない奴は買うと苦労するから気を付けろよ、ガハハッ」


六太は親方から分かりやすいアドバイスを最後にもらうと、

ちょうど食べ終わり空になった平皿を洗い場に持って行った。


使われている素材はありふれたものばかりだったが、

今日も絶品の料理だった。


「ごちそうさまでした」


その言葉を親方に伝えて、六太は最上階にある自室に戻る。

今日は色々あったから、すぐに眠れそうだ。











━━もう動けないであります……


奴隷商会の中にある汚い部屋の一室で、

150cmに満たない小さい体を抱え込むようにして

横たわっている10代と思われる少女がいた。


もう4日食事をしていない。

元々背も小さいとはいえ、今はさらに小さくなっているようだった。


訓練で奴隷商会の教官の歯を折ってしまい、

不興を買ってしまい、その懲罰として食事を抜かれていた。


━━パンが食べたいであります……


少女の虚ろな目は、何もない汚い牢屋のような部屋の床を

ずっと見ていた。



奴隷商会では、商品である奴隷に対して、

値が下げるような行為であるヒドイ仕打ちをすることは

まずない。

暴力を加えて傷を付けては商売にならない。


しかし、傷を付けない方法で

ヒドイ仕打ちをすることはあり、

食事が与えられないことは割とよく行われていた。


もちろん、長くても1日や2日程度。

それ以上は奴隷の価値に影響するので、

商会のルールで禁じられていた。


それでも、そろそろ処分される

【売れ残り】にはそういったルールの例外となることがある。



外の月明かりが天井近くの小さな横長の窓から入ってくる

狭い牢屋のような部屋。

鉄格子の扉からは部屋の中がよく見えプライバシーの配慮など欠片もない。

いつか来る買い手がよく品定めできるようになっており、

横たわる少女もよく見えた。

彼女のおでこに生えている

角もくっきりと見えるようになっていた━━






更新遅れました。すみません。

完結できず放置は避けたいので頑張ります。

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