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異世界の成金道  作者: (ちきん)
第三章教会とダークエルフと財政官
51/59

3-21突入

大神官は己の手の平にナイフの刃を当て、

かなりの量の鮮血を魔方陣の上に垂らしている。


地面に流れ出た血は魔方陣を形作る砂に染み込んでいき、

光の色を赤く変えていった。


ユールはただ魔方陣の中央で眠っているように見える。




六太、鹿男ニバと蜥蜴男ギュリゲは、妖艶なメイドに遭うことなく

第2区の屋敷の中を捜索した。


幸い、そこには人が誰一人いなかったこともあり、

時間はかかったが、


「!?見つけた」


六太が見つけたものは、一階にある書庫にあった。


部屋の隅に置かれた小さな丸いテーブルとイス、

そしてその下に引かれた絨毯。

本を読むためのイスとセットで置かれているのは分かったが、

なぜか絨毯の右端にテーブルとイスが寄っている。


そのため、絨毯のかなりの部分が余っている。

なんとなく気持ち悪い。

特別勘が良い訳ではない六太でも気づけた。


実際に六太が余っている絨毯の部分を持ち上げてみると扉があり、

地下へと続く階段が出てきた。


六太は役に立った…………珍しく。


『六太もやればできるじゃない』


ミミーにも誉められ、普段厳しい相手からの誉め言葉に

六太は素直に喜んだ。





「ギュリゲとオレが探してくるから、

 六太は先に逃走ルートを確保しておいてくれ」


書庫の隠し扉の前でニバが六太に向け言った。

逃げろと言われなかったな。

六太は鹿男ニバの心づかいに感謝しつつ、

頷いた。


客観的に分析してみても、本調子ではないとはいえ

Dランクの冒険者で獣人の二人がユールを救えないのなら、

六太が行ってもみすみす命を捨てるようなもの。

しかし、感情的には、辛い。

一人だけ逃げ出すような行為は戦略的どうこうではなく、

仲間を見捨てたという意味であり、

なかなか実行するのは難しい。

それでも、六太は一人だけで逃げるつもりでいた。


なので、獣人の二人が地下に入ったところを見て、

自分は書庫から出て廊下の窓から

出ようとすると、書庫の中から苦痛の叫び声が響いた。







鹿男ニバと蜥蜴男ギュリゲは階段を下りると、

その先には部屋は一つしかなかった。


「(よし、いくぞ)」


そのギュリゲの目の合図にニバは頷く。


二人とも、大神官の屋敷から失敬してきた斧と剣を持って、

扉の前で突入の準備をする。



「「「「「ドゴォッ」」」」」


木で作られた扉を勢いよく開ける。


獣人の二人は初めて見る光景に驚いてしまった。


その地下の大広間の中心には魔方陣。


既に同心円の一番小さい円から順に

光を得ていて部屋の中の濃密な魔力が渦巻いていた。


冒険者の知り合いの中には魔法もいる。

彼らが魔法を使うところを、ニバもギュリゲも何度も見ていた。

しかし、それとは全く異質であり、

かつ魔方陣を中心に部屋に充ちている魔素は異常な濃さだった。


ニバもギュリゲも二人は確かに驚いたが、

状況判断と動きは止めることはなかった。



・魔方陣の中に救出対象のユール

・入口から入ってすぐの左側に牽制対象の大神官と妖艶なメイド



ユールの救出にはニバが向かい、

ギュリゲは大神官と妖艶なメイドの牽制をする。


大神官も驚いたようだったが、特に動く訳でもなく、

それは妖艶なメイドも同様。


すると、ニバが魔方陣に触れる直前に、

激痛に耐えられず声を上げ倒れた。


ギュリゲは何が起きたのか確認しようと

目の端で見ようとすると、視線の先を何かが飛んでいった。


「「!!?」」


ギュリゲの視線の先を通過し、

倒れているニバの側に落ちたのは腕だった。


それに気付いた次の瞬間には、

右腕の付け根から大量の血が出始める。


「地獄に落ちやが━━」


ギュリゲは倒れた。




大神官は手に持っていたグラスを置くと、

親指を立てて握り込んでいた逆の手を開いた。


「まさかここまで入ってこれる

 獣人がいようとは」


「すみません、どうやら罠などが

 不十分だったようです」


「構いませんよ。

 罠なんて間抜けを潰せればいい程度にしか見ていません。

 こいつらが間抜けでなかっただけの話です」


妖艶なメイドはテーブルに置いてあったボトルを持ち上げ、

再び空になっているグラスに酒を注いでいく。


「しかし、実戦から遠ざかったいるのに、

 大神官様の腕は衰えてらっしゃらないのですね。

 お見事です」


妖艶なメイドの視線の先には、

倒れたギュリゲとニバの側に転がる石。


どこの道にでも落ちているような直径3~4cmくらいの

小石だが、その表面には光る魔字が浮かんでいた。


「魔字で硬直させただけですよ。

 魔方陣を壊されたらたまりませんから。

 でも貴方の蜥蜴の腕を斬り飛ばす

 早技があれば必要なかったかな」


畏まる妖艶なメイドに笑みを返しながら、

大神官は酒を飲む。


「この獣どももそこのダークエルフも

 マイナスからの人生でしたが

 それなりに頑張ったようですね。

 これからは私がそのバトンを引き継いで

 もっといい人生を過ごしてみせますよ」





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