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異世界の成金道  作者: (ちきん)
第三章教会とダークエルフと財政官
43/59

3-13避難

クサリの仕事の終了まで後 6日。

六太は第9区の病院から帰宅し、

自室でポムポの実をナイフで剥いて

ミミー達と一緒に夜のデザートとして食べていた。


赤い皮に包まれた丸い形状で、シャクシャクとした食感の甘い果実。

つまるところ、林檎のような味がする果実を

一日の労をねぎらいつつ六太はネズミ達に振る舞っていた。


『3つ見つけたよ、六太』


もぐもぐとポムポの実を食べている六太も

ミミーのその報告に動きを止めた。


『スゴいっ、半分いや8割は見つからないかなと

 思ってたけど探してみるもんだ』


『そんな可能性が低いって思ってたの?

 ま、見つかったからよかったけど。

 でも、「探してみた」のは私たちネズミで、

 六太は特になにもしてないから、

 そこんとこ分かってるわよね』


相棒のシビレネズミ、ミミーに一喝され、

六太は謝罪&報酬の食物を届けることを約束した。



ミミーが見つけたのは、【財宝】。


シノギの噂話に乗っかり、六太は【財宝】を探していた。


とりあえず、噂話に本当の部分が含まれているならば、

『貴族』『地下』という二つの点だろうと六太は考えた。

普通ならこの二つを調べることは難しくても、そこは

スキル【ネズミ使い】の保持者である六太にとっては

造作もないこと。


とはいえ、一ヶ月以上かかり、

ミミー達が見つけてくれた。

これは安い報酬じゃだめだな。

六太はご馳走を振る舞わないといけない覚悟をし、

手持ちの金額で足りるか不安になるのだった。


『となると、次はそれをこっそり頂いても

 大丈夫か調べないといけないか』


『それなら調べたよ。

 一つはかなりの厚さで埃をかぶってたから

 忘れられている財宝だと思う。

 一つは強欲で悪名高い侯爵のもの。

 最後の一つは、大神官のもの。

 後半の二つはちょっと罠とか多いかも』


『なんか全部横取りしてもいい気がするけど、

 とりあえず忘れられた財宝をもらっとこうかな』


仕事の早いミミーに感心しつつも、

さらっと横取りしたいと宣言をする六太。

泥棒はいけないとは分かっていても、義賊やルパ●三世はかっこいい。

悪いことして集めた金を横取りして、

街で使いまくり庶民の経済活動を活性化するなんて

これは社会のため。そしてやっぱり自分のため。


しかし、六太はテンションも上がってきたところで、

忘れられた財宝の場所をミミーから聞いて愕然とする。


楽勝かと思っていたが、最後に高い壁が来た。


『財宝を運び出すのは六太がやる必要があるわ。

 金貨とかなら小さいから運べるけど、

 アイテムと武器はネズミには大きすぎるし』


『……場所って地下だったよね……確か』


『ええ。地下にある下水施設を通って、

 第2区の貴族街の下まで行くの。

 その地区の端にさらに下りる階段が隠されていて、

 その先にある小さい部屋がそう』


ミミーはネズミのせいか気付いていないが、

ゴブリンハーフとはいえおおよそ人と同じ六太には

辿り着けない可能性が高い。


それは、【状態異常】のためだ。


地下の下水施設は、何も対策を取らずに入ると、

人の体に状態異常を引き起こす。

短い時間ならば、軽い毒や混乱状態などになり、

長い時間ならば、疫病が発症し死に至る。


そして、その対策には魔道具が必要となり、

結局お金が非常にかかるのだ。


お金がないから財宝を求め、いざそれを手に入れられる

状況になって必要となるのが大金。

これが元の木阿弥ということなのだろうか。


六太は頭を抱える。

財宝への道はまだ遠い━━















ルクティの街は中心の王族用の建物を配し、

街中とは思えない緑も豊かな環境が作られている。

その外側第1区~第3区までが貴族や財政官など

要職についている人達が集まる地区がある。


王族、貴族や豪商の邸宅など贅をこらした金持ちであることが

一目でわかるその外観で庶民を圧倒する地域である。

商人ならば維持費を考えただけで卒倒しかけるであろう。


実際のところ、

そもそも庶民がこの地域においそれと近付けないので

圧倒される庶民が少なく

見せびらかしたい所有者の方々には残念なところだろう。



「さ、着いたよっ」


クサリの視線の先には、公爵邸とは言わないまでも

伯爵クラスの大きさの邸宅がそこにあった。

貴族ばかりが住む第2区にあっては普通の家だが、

20部屋以上がある大邸宅。


「ちょっと、私一人で住むには大きすぎるんだけど、

 ユールがまた一緒に住んでくれるから……

 それでも大きすぎるかな……ははっ」


クサリの左手の先には

ダークエルフと人のハーフ美少女ユールがおり、

微笑んでクサリを見ていた。



六太がミミーから財宝を見つけたことを教えてもらった日に、

クサリはユールを自分の家に一時的に保護することを

決めていた。


以前は二人で一緒に住んでいたのだが、

貧民街に病院を作るという話になった際に、

ユールは出て行った。


母のように人を助けるなりたい。

幼いながらも母のような優秀な薬師を目指すユールは、

クサリの元を離れて第9区の病院の隣に引っ越した。


しかし、それもある程度の安全を担保できたからこそ

保護者であるクサリもユールの行動を許していた。


それが今は違う。


貧民街では獣人の子が消えるという事態が起きており、

獣人ではないが亜人という括りでは同じであるユールにも

危険がないとは言い切れない。


クサリは自分の身内だけに甘いという

財政官としてはまずい行為とは理解しつつも、

ユールを危険から遠ざけず助けないと選択肢はなかった。


「行こっか」


「……うん」


クサリに促され、ユールは歩き始める。





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