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異世界の成金道  作者: (ちきん)
第二章ファイン商会と女モノノフと狼娘
16/59

2-3銀髪碧眼の女モノノフ

六太はソルダース村を早朝に旅立ち、その日のうちに

一番目の経由地であるガプレ村に辿り着いた。


その日はガプレ村に宿をとることにする。


ガプレ村から二番目の経由地シャス村までの道のりは牛で7 日程度。

野宿をせねばならぬので、ガプレ村までの行程よりかなり危険である。


さすがにその程度は理解している六太は、

宿に入った後ガプレ村の冒険者ギルドにやってきていた。


ここで、冒険者の護衛を頼もうというのである。


「7日で3500ジェジェです」


決して安くはないが、身包み剥がされたり、

命を奪われることを考えれば安いもの。


だが、価格は納得できても、

田舎のギルド故紹介できる人物がその日はいなかった。


それもこれも、ソルダース村を冒険者が過ごしやすい場所に

しすぎたせいだった。


「どうしてこうなった……」


想定外。

自業自得。


2~3日待てば紹介できる冒険者もいると

冒険者ギルドの受付のお姉さんは言っていた。

それを待つか、ソルダース村から

護衛をしてくれる冒険者を呼ぶか。


そして六太は選択する。

自分にはネズミ軍団がいるから大丈夫だろう、と

冒険者を待たずに二番目の経由地シャス村に向かってしまった。


この異世界での旅を舐めていたつもりはなかったのだが、甘すぎた。

確かにこれまでのネズミ達の活躍を考えると、六太がそう決定したくなる

気持ちも理解できなくもないだろう。


いきなりやって来た異世界で、特技がないにもかかわらず、

それなりに生活できている。

少し判断が甘くなりそうな状況であった。

そして、それを自ら戒められるほど六太は賢くなかった。


ネズミで察知できても、よくよく考えれば逃げ切るだけの

足がない。

六太の荷車を引いているのは牛なのだから。


そう六太は間抜けだったのだ。




六太が一番目の経由地ガプレ村を出発する姿を見ていた男がいた。


ガプレ村から1日ほど行った所にある丘の樹上。


その小男は目が良いらしく、かなり遠くではあったものの

六太の状況をはっきりと観察できていた。


ひとしきり観察し終えると、小男は

その樹の下にいる騎獣に跨った偉丈夫に声をかける。


「ガキが一人、牛2頭に荷車一台」


「護衛は?」


「いませんぜ」


「間抜けか、はたまた麒麟児か」


凶悪な面構えに笑みを一瞬作り、樹上の小男と周りにいた連中

に酒やけした大きな声で話かける。


「久しぶりに旨い酒が飲めそうだ」


彼らは急いで六太を狩ろうとはせず、

六太が村からある程度離れ、自分達の側に来るのを

待つようであった。





ガプレ村のギルドに昼過ぎに

銀髪碧眼の女モノノフがやって来ていた。


「これでクエストは完了だ」


「お疲れじゃったの、思っていたより随分早かったな。

 早くても明後日くらいにはなるかと思っとったが」


ギルドマスターは労いの言葉を女モノノフにかけつつ、

提出された首をあらためる。

間違いなく賞金クビになっている男共だ。

隣で待機していた女性に手で合図を出し、


「こちらが賞金です、お確かめください」


「ああ」


女モノノフが袋の中の金額を確かめ始めた。


女モノノフが報酬を数えていると、

ギルドマスターの元に

ギルドで受付をしている女性が走ってきた。


「マスター、マスター」


「なんじゃ、今は冒険者の対応中じゃぞ」


すみませんと女モノノフにお辞儀をして、息を整えることもせず、

矢継ぎ早に女性受付は続けた。


「昨日護衛依頼をした少年の商人が……

 先ほど護衛もつけずにシャス村に……出発してしまいました」


「何!?」


ギルドマスターの双眸は大きく開かれ、女モノノフは顔をしかめた。


それもそうだろう。

この世界の人間なら、旅に護衛もつけないのは

自殺行為に等しいことを知っている。

特に野宿が必要な場合は、日帰りに比べ段違いに危ない。

少年にもそのことは説明したし、

特にここ最近はガプレ村からシャス村への

街道に賊が出るという報告があることも伝えていたのだ。

賞金はかけたが、まだ捕まえるには至っていない賊がいると。


「その賊の賞金はいくらだ」


女モノノフはしかめていた顔を元に戻し受付の女性に尋ねる。

その体は獲物を見つけた野性の虎のような

強い闘争心と歓喜が充ちており、受付の女性を怯えさせるには十分だった。


「!えっと、その500000ジェジェです」


「そこそこな金額だな」


「最近出てきたばかりで、被害はまだ少ないのですが、

 かなり好戦的らしいのです。

 出会った人はほぼ殺されています」


相手は相当腕がたつ可能性が出てくる。

割に合わないかも知れないと女モノノフは考える。


結局冒険者ギルドは被害が大きくなってからでないと

高い金額はつけられない。

被害が出る前から動ける騎士ではないのだから、しょうがないのだが。


「ところでその商人は金持ちか?」


「近隣の村では一番じゃないでしょうか」


「(金持ちのくせにばかなガキだ。

 どっかの貴族の子供が商人にでもなったのか)」


女モノノフはあまりに世間知らずな行動をする少年にあきれつつも

金になるかもしれないという計算もしていた。


女モノノフはすぐにギルドカードを出し、

賞金稼ぎを狩るクエストの申請を済ませた。


村に帰ってきて全く休むことなく、女モノノフはシャス村の出口へと

走っていった。


「命の分、十分にふっかけさせて貰おう」


無謀な少年が命の代わりに払わなければ

高い授業料に期待しつつ馬にも匹敵する速度で

女モノノフは街道を走っていく。




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