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異世界の成金道  作者: (ちきん)
第二章ファイン商会と女モノノフと狼娘
15/59

2-2ネズミ使い

ソルダース村からガプレ村への道を牛がゆっくりと荷車を

引いて進んでいく。


村長の息子が跋扈していた頃には危なかったが、

今は畑や牧場を作ったため、村の一部といった様子で

かなり安全になっていた。


しかし、それ以上に六太は安心して牛の手綱を握りながら、

道を進んでいた。



情報は武器である。

情報を制すれば、情報弱者はただただ敗北するのみなのだ。

六太はこの数ヶ月でその意味を実感していた。



まず、近隣の村で必要としているモノを調べる。


交通網が十分に発達していないこの世界では、

何かが必要になってもそれを手に入れられるまで

かなりの時間的なギャップが生まれていた。


それを埋めるために情報を集めるのである。


例えば一つの村である病気に効く薬を買い、

そのままそれを必要としている違う村に転売しに行く。


そうすれば、差額分が手に入り、かつ売れ残ることもない。

おいしいのである。

つまりぼろ儲け。


しかも相手からも感謝されるので、好感度も上昇だ。


これが情報の力であり、情報万歳なのである。



そして、これを現実のものする最終兵器こそ、

六太の相棒

シビレネズミのミミーである。


スキル【ネズミ飼い】を手に入れて既に半年。


スキルは一つ上の【ネズミ使い】になっていた。

通常こんなに早くスキルが上位のスキルに

進化することはないとバース神官から聞いたが、

なってしまったものは事実。


何が原因かは全く不明だが、

ありがたく六太はこのスキルを使わせてもらっていた。


色々試してきた。

スキル【ネズミ飼い】の頃は簡単な意志のやり取りができるかな

といった程度だった。

なので、人を尾行させたり、人を攻撃させたりくらいは出来たけれど

そのレベル。


しかし、スキル【ネズミ使い】は全然違った。


ネズミを使役するという意味では同じスキルだったが、

質が全く違った。


現在六太のネズミ軍団は

一番始めに捕まえたミミーを頂点に

総数は現在100匹を超えるまでに増えた。

彼らはミミーにより統制を取ることができる。


六太はミミーとは普通に念話という形ではあるものの

会話が可能になっていた。

ミミー以外とは意志のやり取りはできなかったが、

それでもミミーからの命令により

偵察などの複雑な作業も可能になっていた。


--------------------------------------------------------------

【ネズミ軍団の構成】

指揮官→ミミー

実働部隊→それ以外

--------------------------------------------------------------


例えばミミーにこんなお願いをしたりする。


『ミミー、このレア食材のキノコ、

 近隣の村ガプレ、シャス、ヤノチェの

 どこが一番高く買ってくれるか調べてくれる』


『いいよ。

 じゃその草頂戴ね』


ミミーは六太の前に置いてあるレア食材の一つ

マナ草を指差しながら受諾してくれる。


代償として、レア食材とかネズミ達の食べる食事とか

色々要求もされるが、それも六太の懐具合を見つつなのが心憎い。


でも、彼らのおかげで

暴漢に襲われることもなく、

レア食材を高く買ってくれるところも簡単に見つかる。


近隣の村に送り込み作られているネズミ情報網は、

なかなか良い具合で儲けに繋がっていた。



ただ、ネズミの数が増えすぎると、

養いきれないので、六太はミミーにこれ以上の増加は

一時的に止めてもらっている。


実は、数は一定でも、

よりよい個体のネズミが入れば入れ替えなどしていたりする。

がそれは六太のあずかり知らぬ所での出来事だが……






「(随分牧場もまともになったな)」


ソルダース村→ガプレ村へ向かう街道の

道沿いに作られた牧場に六太は目をやる。


地喰いウシと岩ブタが放牧されている。


まだあまり数はいないが、

徐々に増える家畜を見るだけで

六太の心をハッピーにしてくれる。


「でもやっぱり騎獣とか欲しいよな~」


しかし欲望は際限がない。

現状で六太はかなり色々な建物や銭湯、家畜

など持っているが、所詮まだ少しお金を手に入れた

程度に過ぎない。


騎獣は馬に比べても、倍以上の速度が出るのだ。

牛に比べれば3倍以上の速度が出せる。


おまけに種類によっては、飛べたり水の上を進めたりもする。

ただ、騎獣は数が少なく、調教する手間もあるため高価。

なによりソルダース村の近辺では購入する場所すらない

状況なのだ。


しかし今回訪れるガリアナ王国東の州都であるルクティの街には、

その騎獣を販売している店があるとのこと。


これはついでに買わねばなるまい。

そう六太に決意させるのは当然の成り行きのようだった。


まだルクティの街まで遠いこの街道から

まだ購入していない騎獣に乗る己の姿を想像するだけで

顔がにやけてしまいそうになる。


『六太、持ち金全部使って

 わたしたちの食事代に響いたら

 色々手伝わないよ』


六太の緩んだ顔を見て、

肩に乗っていたミミーが念話で告げてくる。


『も、もちろん。

 ミミー達が最優先だから、

 安心してよ』


とりあえず、ミミーに相談して

OKが出たら買おう、そうしよう。

六太は既に相棒のシビレネズミのミミーの尻に

敷かれている。

使役しているはずなのに……



今は二頭の牛に荷車を引かせながら、

緩やかに上る街道をゴトゴト揺られながら進む。

朝日もようやく地平線から顔を全て出し終わり、

空に雲はほとんどなく快晴。

旅立ちの日としては、縁起がいいかもしれない。








ソルダース村の特産は、何と言っても森から収穫できる

食材や素材である。


というか今の所それしかない。


特に、六太が採集するレア食材(主に9・10級食材)が特産の一つと言えるだろう。

量自体あまり獲れるモノではないため特産というには数が少ないにしろ、

通常収穫できる量に比べれば圧倒的な量だ。

しかも他の村より安定的に供給できるので、その分優位に立てている。


始めの頃は高級食材を頻繁に売りに行くものだから、

栽培方法を確立したのではと疑われたほどだった。


しかし、六太のように他の人は採れないので、

いくら儲かっても限度がある。


そこで、六太がより稼ぐにはどうしたらいいかと考えた。


M&A、企業の買収である。


つまり既にある近隣の村にある商店やら宿屋やらを買いましょうということ。

売るモノは現状たかがしれているので、

売り買いする場所をたくさん手に入れて

ソルダース村に本社を置き、

巨大な商会でも作って稼いじゃおうかというのが、

今の六太の方針なのである。



ネズミ達を使い調べてみると

商売を無借金経営でやっているところもあるにはあるようだ。

しかし、大体が近隣の村では親類や知り合いからの借金で

企業活動を続けていた。


信頼できる相手からなのだから通常問題ないが、

それでも借りている相手の経済状態の悪化や

その相手との人間関係の悪化はちらほらあった。


買収候補の企業を選定し終えたら、

後は、実際に近隣の村へと赴き、買うかどうか決めるだけ。


細かい調査はミミー達がしてくれるので、大した苦労もなくできる。


しかし、最後にいざ買おうかという段階になり

六太は愕然とした。


買収をスムーズにする方法がない……と。


結局情報があっても……最後の交渉は結局人とのやり取り。


ぼっち生活が超長期に渡っていた六太としては、

自分がまともに交渉できるとは思えなかった。

大抵どの店も現在商売している人の

人生がかかっているのだから、そうそう上手くいかない仕事でもある。


う~んう~んと唸って数日考え、

六太はトイレで一つのアイデアを思いついた。


とりあえず、

ツケで商品を売っていき

こちらに抵抗できないところまで追い込むという。

交渉はそれから始め、優しい顔で出資の話しを持ちかける。


『ちょっと狡いような感じもするけど、

 六太のアイデアの割には上手くいくかもね』


なかなかキツイお言葉を下さるミミーさん。

日頃からミミーやミーアなど周囲の人の考えを受けて

行動することが多い六太としては仕方のない評価なのかもしれない。


そして、六太は計画通りに、

どんどんといろんなところに、ツケでモノを売っていった。

現金取引が通常だったので、金利を複利でつけて売っていった。


それがどういう事かといえば、

例えば、1万ジェジェのツケ、つまりオレが貸している金に

十一(十日で一割)で利息をかけたとする。


----------------------------------------------------------------

1日目→10000ジェジェ

10日目→11000ジェジェ

20日目→12100ジェジェ

……

80日目→21435ジェジェ

………

----------------------------------------------------------------


3ヶ月で当初の金額は倍になってしまう。


金額が少なければ大してダメージはないものの、

幸い六太が扱っている商品は

どれもが高価なもの。


あっという間に色んな店で六太に対する

ツケという名の借金は膨らんだ。


さらに十一程度の金利はこの異世界では

別に高くないようで、

むしろ、こんな低い金利でいいのかと喜ばれた。


しかし、あっという間に皆複利の恐ろしさに

震えることになる。


けれど、当面は金利やツケを回収せず、返せないポイントまで来た

と判断したら、店の所有権の譲渡を提案するのだ。

もちろん抵抗はあるが、

店の運営は引き続きやってもらうので、

生活は変わらないとわかると、皆承諾してくれる。


おかげで、短期間で近隣の村にも多くの店を取得するまでになった。





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