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異世界の成金道  作者: (ちきん)
第一章カンガール食堂と未亡人
12/59

1-11救出

森の入口から一時間くらい歩くと六太は小屋に辿り着いた。


「帰れるんだろうか……」


もう森から出られないのではと六太に思わせるような場所に

小屋はあり、その窓からは光が漏れていた。

その窓から内部の状況を知るべく、六太は余計な音を立てないように

足元に気をつけつつ窓の下までやってくる。


小屋を覗くと

眠っているシャルと連中がいた。


「こいつ殺すんですか」


「いいや、後10年したらやっちゃうんだろ、あの人が」


「鬼畜ですね、まったく」


「ど畜生だろ。ただ一緒に賊やって好き勝手してる

 俺らも似たり寄ったりだがな」


笑い声が小屋の中に響いて、宴会が始まったようだ。


下衆な連中のあまり聞いていたくないような話しに

六太はうんざりしていると、

尾行していた別働隊のネズミがやってきた。


その総数、5匹。


これだけで果たして血気盛んな男連中に勝てるのか。

ちょっと不安ではあるが、


「どこかにないか……」


六太は小屋の入口以外に

ネズミだけでも中に入れる隙間を探す。


すると、小屋の屋根と壁の間にネズミくらいは入れそうな

隙間を見つけた。


「(では、不意打ちで。

 お願いしますミミーと仲間達……)」


十数秒後に男共の気持ち悪い声が短く漏れると、

どすっという倒れる音が続く。


「お見事、ミミーと仲間達……」


さっそく油断しているとこをシビレネズミで攻め、

三人とも痺れさせた。


シビレネズミは片手に乗るくらいの

小さいネズミなので、どうやら全く気付かれず

不意打ちは成功。


六太は窓から小屋の中を確認しつつ、

扉から入った。

シビレネズミによる麻痺なので、

音は関係ないにもかかわらず、音に気を付ける

ちきんぶり。

だが、完全に麻痺している3人を確認すると、

小屋の中にあったロープで手足の自由を奪い、

猿轡して念のため目隠しもして

ついでに耳にも詰め物してやって転がした。


「これで逃げられまい。明日には全員突き出してやる警察へ

 ……警察はいない……代わりって騎士だったっけか?」


小屋は元々狩人の避難場所として作られたものらしく、

特別大きい小屋ではなかったが、二十畳くらいはあった。

結構な量の荷物が奥から積まれていたため、

実際はもっと狭い感じ。


結構高そうなものもあったが、

入口付近にはゴミ扱いのものも。

よく見ればガスティの名の入った弓矢も

ゴミ扱いの所にあった。


「くそっ」


六太はまだこの世界に来て大した時間が経ってはいなかったが、

目の前にあるモノを見れば、村長の息子とその仲間達が

最近ソルダース村の周辺で話題になっている山賊

であることくらい推察できた。


できれば伸びているこの連中を殺してやりたい。

しかし、今は一刻も早く森から脱出しないと

夜の森で一晩過ごさなくてはいけなくなる。

そうなれば、なんの知識も経験もない六太など

生き残れるかすら怪しい。


今から急げば何とか日が沈む頃には

ソルダース村に辿り付けるかもしれない。


それに六太が世話になっているミーアさんもシャルがいなくなり

心配しているだろうし、待っていても誰も助けには来ない。


六太は覚悟を決めた。

植物採集用に背負っていた籠の中に

眠っているシャルを入れてミミー達の先導の元に

村へと走った。






日が沈み、森が人を寄せ付けなくなる頃、

ソルダース村にあるミーアとシャルの家に

村長の息子はいた。


「裸でエプロンがいいな」


窓から射し込む月明かりが部屋の中を照らす。

村長の息子は窓を背にイスの背もたれに顎を乗せ、

命令してくる。


ただ抱かれるだけと割り切れば

大丈夫と己に言い聞かせる。

シャルを助けるために、ミーアは覚悟を決めた。


「(にやにやと気持ち悪い)」


月の光を背後から浴びているため、

村長の息子の表情が影で見えにくくはあるが、

シルエットだけでも十分にミーアにはわかった。


村長の息子の命令に従い、ミーアは服を脱ぐため

別の部屋に行こうとする。

しかし、そんなミーアに対し、ニタニタと笑みを浮かべ

「着替えはここでしな」と命令する。


現時点で村長の息子の言うことに逆らう選択肢は

ミーアには存在しない。

屈辱的でも、娘の命を守るために必死に抑える。


「(生きていればきっとチャンスはある……)」


きっと来るであろうチャンスまで、

どれだけ我慢が必要な状況になろうとも

ミーアはシャルを幸せにするためにも

今は耐える覚悟をする。


目の前の女が裸エプロンになっていく過程は、

男を欲情させるに十分な刺激があった。

ただでさえ、品性がない男の顔は、

今や舌なめずりしながら、ぱっとみゴブリンのような

卑しい魔物と大差ない表情になっていた。


「どれ俺が手伝ってやろうか」


どうやらもう待ちきれない様子で

ミーアに近づく村長の息子。

屈辱と嫌悪の震えを抑えようとするミーアの肩に手がまさに届き、

ミーアのきめの細かい肌に村長の息子が触れる瞬間。


「ひっ!!」


引きつけを起こし、村長の息子は倒れた。


ミーアの肩に手が触れ、そのまま止まることなく、

前のめりに倒れる村長の息子。

その突然の展開を呆然と見守るミーア。


時が止まったその空間は、


「大丈夫ですか」


少年の声で再び動き出した。


その少年はいつも見慣れた六太。

彼は月明かりが射し込む窓の外に立っており、

背負っている籠の中には寝息をたてるシャルがいた。


足元の男が誘拐したという愛娘がそこにはいた。




「ぜっはぁぁ、おぇぐぇっ」


あまりに長いこと走り、

途中何度か魔物とニアミスしかけ

嘔吐くのを我慢しながら走り続けた。


しかし、その甲斐もあって日が暮れてまもなく

森を抜けた。


「ぅぐぇぇぇっ(生きて帰れた」」


今は我慢していた嘔吐きを思う存分しつつ、

少し休憩。

ただあまり休んでいると、

動けなくなりそうなので、

六太は数回嘔吐き終わると、

すぐにミーアの家へと歩き出した。


しかし、六太がミーアの家に辿り着くと、

ミーアをすぐに見つけた。


ただ、村長の息子とミーアが二人きりで

部屋の中にいる。

しかもミーアは服を脱いでおり、エプロンだけを着用するという

変態プレーをしていた。


「カスが……」


村長の息子がミーアに言い寄っていたことは村人の皆が

知っており、

新参者の六太でもかなり強引に言い寄られていることは知っていた。


シャルが掠われていたことと目の前の状況を見れば、

特に頭が良くない六太ですら、すぐに村長の息子が

本当の外道であることくらいはすぐに理解できた。


「ミミーと仲間達、もう一回頼めるかな」


そう小さい声で手の平や足元にいるシビレネズミに

六太はお願いする。


その言葉を理解したかのように、

小さい集団は床下から家の内部へと通っていく。


そして、六太の目の前で村長の息子が

ミーアの肩に手を伸ばした時に、

小さな集団は村長の息子に不意打ちを喰らわすことに成功した。




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