汚物は消毒だ
(注意)
・・・より下、手加減無しの残酷な描写が有ります。
苦手な方、あとがきまで読み飛ばしてください。
馬で移動している勇者一行の剣士。
それを、上空からバレないようにさっさと追い越して先回りしたソラ。
……目標を見つけたソラは現在、腰が引けるほどビビっていた。
ゲーム能力を使い慣れてから、噸と恐怖や臆病と無縁になっているのは、把握していないスキルの効果で一部の感情が抑えられているのかもしれない。
その、恐らくスキルの影響を破ってまでソラがビビるのは、メイド長ソフィアの折檻“人間釘の刑”を目にした時以来。
そして今回は“男祭り”。
ソラがビビるのは色物限定、という規制でもあるのだろうか。
「うわぁ……」
王国と帝国を繋ぐ道を占領している武装集団、というより山賊集団。
殆どが共通して、不衛生な油とフケまみれな髪、伸ばしっぱなし無精髭、ニキビだらけの顔。
何日、いや何ヶ月手入れをしていないのか。
その数、百人以上。
「降りたくない……」
女の子をこよなく愛するソラとしては、あの集団を視界に入れることすらキツいものがある。
あれが筋肉質な女性の集団、そうでなくても一人くらい甲冑で性別を誤魔化している女の子が居ないものかとスキルを駆使して隈無く捜すも、全滅。
見事なまでに男祭り。筋肉のひしめき合い。見ているだけでも汗臭い。
女性どころかひょろりとした男性すら見当たらない辺り、男臭さを徹底している。
RPGで例えるなら、男戦士だけのパーティー。
「……帰りたい」
もう勇者とか、どうでもいい気がする。
知り合いの村が標的らしいからやるが、皇帝に協力を求めてまで、変にイベント化しなければ良かったと後悔。
さっさと終わらせて帰りたい。
「鬱だ……」
ソラの腕の中に居るベルは、ソラの気の沈みように驚いていた。
皇帝の例もあるから潔癖なほどの男嫌いではないとは思ってはいたが。
どうやらソラは男の筋肉や男臭さが───いや、それは違うと、ベルは首を振る。
ソラと仲良し(?)な男臭い集団といえば。
帝国騎士団という存在がいる。
訓練と称して殴る蹴るの暴行を加えていたりするが、移住希望の人を紹介して貰ったり、行きつけの店を紹介して貰ったり。
“ソラのお小遣い稼ぎ in 帝国地獄の隠れん坊編”で、気に入った人にしかあげていないグリモワールを何人かに景品として授けたとベッドの上で聞いているベルは、さらに悩む。
悩んで悩んで。
「ソラ、あの集団の何が駄目なの?」
素直に聞いちゃう辺り、流石はベル。
聞かれたくないことを根掘り葉掘り質問するような図太さと、それを察した上で敢えて聞く腹黒さを合わせ持ったお姫様。
さっぱりとして深く悩まないソラとは、実に相性が良いのかもしれない。
離れていても感じる男臭さをベルのシャンプーの香りで誤魔化していたソラは、うーんと悩んで、指折り数えてみる。
「まず、衛生面」
男臭いだけでは済まされない集団には、確かに同じ男でも近寄りたくはないだろう。
城勤めの騎士は仕事の一環として、清潔感を身に付けている。
「それでいてあの密集率」
何をしたいのか、ギリギリ肌がくっ付かない程度の距離で蒸れ……群れている。
騎士の訓練された整列と同系列に語るのが失礼なレベル。
「欲望丸出しの面」
その笑みを浮かべさせるのは、先に襲った行商からの戦利品か、それともこれから襲う村からの戦利品か。
騎士の笑顔は総じて、爽やかと、子供に泣かれる怖さかで二分する。
「うまい話に乗せられたアホ加減」
さらっと「魔物を使った襲撃事件の続きだね」と言いながらその理由は話さず、四本目の指を折り。
「何より、これからアレを皆殺しにしなきゃいけないから、近寄んないといけないんだよね……」
最後に小指を、折った。
・・・
街道を直走った剣士──舞原拓哉が目にしたのは、確かに武装した集団であった。
如何にも汚れ仕事を専門にしていそうなその集団は、しかし、拓哉の意識には残らない。
「(あれは誰、いや、何だ?)」
集団の前、拓哉に背を向けた奇妙な妙齢の女。
メロンソーダに乗っかったバニラアイスが溶けて混ざったかのような色の、特徴ある緑髪はよく見えるが、背後なので顔は見えない。
髪から突き出た耳が尖っていることからエルフだということと、異世界なのに和弓らしき弓を背負っていることは確認できる。
だが拓哉の第六感が、あれは人間のそれではないと強く強く訴えかけてくるのだ。
暑くはないのに流れる汗と、ガンガンと頭痛を催すほどの緊張感。
女の異様さに、拓哉以外は気付くことなく。
野盗の先頭を歩いていた男がやけに反り返った剣を片手に、女相手だからか、下卑た笑みを浮かべて十歩ほどの距離を無造作に近寄る。
「どこの馬鹿かは知らねえが、この人数相手に、正気か?」
脅しのつもりか、首に当てようとした剣はしかし、女に拒まれた。
といっても、二本の指に挟まれただけだが。
「あ? なんのつもり、だ……あれ? ふぬっ、ぐっ……なんでだ!? 剣が抜けねぇ!?」
必死に剣を引っ張る男。
女は無言で、指に剣を挟んだまま軽く腕を引いた。
男はそれだけで簡単に体勢を崩し、女の胸元へと顔を引き寄せられ──。
──その汚い顔面を、剣を引いたのと反対の腕が、殴り飛ばした。
──頭が、弾けた。
異様な空気が場を支配して、茫然とする集団と、拓哉。
首から上が無くなった男の身体は力が抜けて崩れ落ちる、瞬間。
……地面から湧き出た無数の黒い手に縋るように捕まれ、そのまま引きずり込まれて消えた。
「……え」
誰かの声。
「うわああああああ!?」
「嘘、だろ……殴っ……え?」
「おい、誰か弓持ってきてる奴はいないか!」
「槍は前に行けよ! 間合いを持てば大丈夫だ!」
集団の中でざわめきが大きくなる中、女は背中から弓を外して。
「ひえ……」
瞬く間に言葉は消え、複数の後退る音が聞こえる中。
前に押し出され、厳つい顔に似合わない涙を浮かべていた槍持ちが、涙を消した。
頭ごと。
それからはただの虐殺……
いや、掃除だ。
頭が弾けた順に、黒い手によってこの世ではない何処かへと引きずり込まれていく男たち。
生者からは悲鳴があがり、逃げようとする者も、立ち向かおうとする者も、気が狂う者も、時間が経てば等しく引きずり込まれて、消えた。
夢から強制的に醒めさせられるような衝撃に襲われ、拓哉は我に返った。
死体も、血も、武器も、服も、匂いも、何もかもが消えた。
男たちがこの場に居た痕跡は、何人居たのか判らないほど滅茶苦茶な足跡くらいしか遺されていない。
「……」
観覧者たる拓哉は、その場に根付いてしまったかのような足を動かそうとして、直ぐに諦めた。
騎士の戦場用にと訓練された馬がいつの間に居なくなっていたことにも、今更になって気が付く。
拓哉はこの時になって漸く、女が自分を見ていることを認識できた。
後悔した。
目の所を黒く雑に塗り潰しただけの、白い不気味な仮面。
何をするわけでもなくダラリと下げた手に弓を持ったまま、拓哉を見ている。じっと見ている。仮面に隠れているはずの目で、穴なんて開いていない仮面の下から拓哉を、拓哉だけをその目で見ている。
そんな女に、拓哉は、
吐いた。
【自重】盗賊退治【仕事しろ】
1:通りすがりの仮面さん
触りたくないから弓で倒してみた。
あと訓練の成果で、倒した時のエフェクトの指定に成功。
動画UPの判断は、撮影者の判断に任せますよ?
2:通りすがりの緑茶愛好家
あれ、勇者は?
3:通りすがりの仮面さん
盗賊現る
勇者の仲間が偵察
ソラちゃん無双←いまここ
死体消えるからグロくはなくない?
4:通りすがりの飼い主さん
R-18G
消える前に何だかんだ飛び出すのが見えるし、消え方が。
あれは無いわ。
剣士、吐いたわね。
5:通りすがりの忍者さん
記録映像撮りましたが、ここには載せられませんね。
緑茶愛好家さんは仕事なので観てもらいますが。
6:通りすがりの緑茶愛好家
え、グロは苦手なんだけど
7:通りすがりの女帝様
頑張れ、緑茶愛好家www
8:通りすがりの緑茶愛好家
おい、名前がグレードアップしているぞ
9:通りすがりの忍者さん
女帝ならば観ないといけませんよね?
10:通りすがりの皇女ちゃん
汚いなさすが忍者きたない
11:通りすがりの黒子ネコ(貧)
これはなんてすか!
12:通りすがりの緑茶愛好家
ん? >>11は新入り?
13:通りすがりの忍者さん
恐らく、これはなんですか? でしょう。
……さっきの黒子ですね。
14:通りすがりの皇女ちゃん
いや、これって手書きだよな?
もしかして、字が書けない人か?
15:通りすがりの仮面さん
あ、盗賊退治しながら思考操作と思考入力を解禁したことを報告し忘れてましたとさ(まる)
思考で検索とかスレ立て、そして書けます。
千葉さんもできるようにと開発してたのでし。
慣れないと、ご覧の有り様てすが。
16:通りすがりの緑茶愛好家
降下?
千葉産?
17:通りすがりの忍者さん
>>16、こうか? 千葉さん? ですかね。
ふむ、改行の仕方が分からない。
18:通りすがりの仮面さん
>>17
勝手に思考を読み取りまする
因みに仮面さんは、わざと誤字っぽく書いて仲間アピールしる空気読める子
19:通りすがりの飼い主さん
手書きの方が好みね
>>18
それ、自白しちゃ駄目よ
20:通りすがりの黒子ネコ(貧)
タレですか!
黒子ネコ(貧)!
21:通りすがりの皇女ちゃん
思考の方が楽チンだな
黒子ネコ略して黒猫、興奮してるからか「?」が「!」になってるぞ
タレwww
22:通りすがりの忍者さん
誰ですか? ですね。
それを尋ねるのはマナー違反ですよ。
タレ(笑)
23:通りすがりの騎士さん
タレ(笑)
24:通りすがりの冥土長
タレですか(笑)
25:通りすがりの米農家
タレですって(笑)
26:通りすがりの公爵令嬢
タレ(笑)
27:通りすがりの魔王陛下
タwwwwww
レwwwwwww
でwwwwwwww
すwwwwwwwww
かwwwwwwwwww
28:通りすがりの緑茶愛好家
タレって笑
29:通りすがりの悪魔ちゃん
まさかのタレブーム(笑)
30:通りすがりの黒子ネコ(タレ)
タレ!!