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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
「テンプレ改変乙」
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異世界に、ひとり

「うわぁ…………このテンプレは正直、いらなかったかなぁ……」


 訳が分からぬまま森に召喚された主人公が何とか人里を発見すると、その人里はゴブリン的な存在に襲われている真っ只中でした。もしくは事後。


 前なら助けに入って住人の信頼を得る。後ならヒロインになる唯一の生存者が居たり居なかったり、家捜しで食料と服と通貨を貰い、街道を辿っている最中に冒険者か護衛付きの商人の荷馬車と出会い……どちらにしても、テンプレご都合主義の場合は、だ。




──ソラの場合、後者だった。






「勇者と合流しようかな……」


 気弱な言葉を吐きながら、草原の中を走る街道を歩くソラ。



──生存者を捜した後。



──死体を燃やすことも、家捜しも、何もできなかった。



「昨日、スキルを集めずに──ただの女子高生に何が出来る。馬鹿か私、死にたいのか」


 ブツブツと一通りの自虐を済ませると、頭をリセット。




「『ペルギルの別大陸説』は、とりあえず消えたかな」




 ゲームの舞台は、自由にフィールドを歩き回る分には広いが国土としては小さな島国。MMOからソロ向けになった時、MMOならまだしも一人でプレイするのには広すぎてクリアまで何百時間掛けさせる気だと既に構想が出来ていた大陸を次回続編|(次こそはMMO)に後回しにし、一つのステージとして登場予定であった島国フィールドを流用したそうだ。元々はどんなボリュームだったのかは不明。



 関係のない話はさておき、『Persona not Guilty』ならばどんなに小さな村にでもあったものがあの村には無かった。


「『魔破の石碑』は魔法の素養があれば簡単に作れたはずだし、大陸のほうが文明が優れてる設定。小さな村でも無いのはおかしい」


 魔物を遠退けるだけでなく、石碑に直接ぶつかった魔法を打ち消してしまう効果がある『魔破の石碑』は、『Persona not Guilty』ではスキルと並ぶ最重要要素、『魔法』を覚えるとすぐに挑めるようになるイベントで作成することができた。持ち運べるような大きさではなく、完全にイベント用アイテムだったが。




「『魔破の石碑』を建てて回る謎の聖人──ペルギルの『魔法』が覚えられるのか分からない現状、まだ謎の鍛冶師か謎の行商の方がリアルかな。第一候補は冒険者だけど、それもあるのか分からないし、そもそも街に行きたいし、街って歩いていける距離なのか……邪魔」


 異世界での生き方を模索しながら、何故か頻繁に、単独で襲いかかってくる犬を蹴りながら街道を進む。


「喧嘩の基本は手より足。足元が疎かだとパンチに威力が乗らないし、一対多数で囲まれた時は足運びと足の構えが重要だ。何より、手よりリーチが長くて力が強い。隙や何かは使いどころと練習かなぁ」


 犬よりも狼という呼び名が相応しい見た目の相手に一切怖れることなく、足の重要性を解説しつつ飛びかかってきたところを冷静に顎を狙って蹴りあげる。



 ゲームのキャラを強くするスキルが現実となった今、その強化は決められたらことしか出来ないゲームとは違い、多様性と思わぬ効果を産んでいた。


「移動速度を速める<韋駄天>が足全般の強化。<心眼>はクリティカル率上昇よりも本来の心眼……遅い」


 土が剥き出しの道を歩くソラに、左右の茂みから奇襲を仕掛けてくる犬。

 そこに隠れていると視えて・・・いたソラは、ゆっくりと動く世界で犬の動きに合わせて足を振り上げるだけの作業。



 空中で回転した犬が地面に落ちて消える光景に、ソラは顔をしかめる。



「ゴブリンっぽい何かの死体……人間の死体も、残ってた」



 小さな集落で、家の数も少なかった。

 殆どの家で扉が開いたままになっていたので、生存者が居ないか覗いたことによりソラは、小さな後悔と大きな収穫を手に入れた。


 家に馬鹿みたいに飛び込んできた一匹を、扉の陰に隠れて不意打ちしたのだろう、頭部に包丁が突き刺さったモンスターの死体……仲間を殺されたことに怒ったのか、その家の内部は他よりも酷い有り様であったが。


「冒険者をやるとしたら、剥ぎ取りが楽になる利点はあるとはいえ、気味悪がられてパーティー組めないかもなぁー」


 魔法使いのツンデレ娘、無口な巨乳戦士、盗賊は賑やかしうっかり娘で、エルフは弓か魔法かツルペタか突然変異か。


「召喚されて残った勇者パーティーに、女の子居たよね……勇者と合流しようかな……」



 落ち込んでも、邪なソラだった。






「犬ウザい! 来るならドカンと一気に来いやゴラァ!」


 永遠と続く草原。単独で襲ってくる犬。

 独り言では補えないほど人恋しくなっていた少女は、狼と呼んでほしければ集団戦で来いよ、と、意味不明な理由でキレた。



 インベントリを開き、溜まっていく犬の骨を全て外に出した。因みに、仕舞われている時にウィンドウに表示される名称は「ワイルドウルフの骨」……ウルフ、つまり、狼だ。



「──<生産>」


 街道を封鎖する骨の山が、光る粒子となって少女の小さな胸の前で抱えられる程度の大きさの球体になると、仕上げ。


「──『大食らいの骨』」


 生産可能なアイテムを選択。



 球体が膨らみ破裂すると、ソラの手には、巨大な骨で造られた大剣が握られていた。



「──犬狩りじゃあああああ!」



 ソラは叫び、草原に、生体反応・・・・が感じられる方向へと無意識の内に駆け出していた。

説明削って展開加速。

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