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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
幻の景色
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ひみつ

昨日と今日の分は特に文章がおかしい気がする。

短め?

 普段から最後まで起きているソフィアも眠りに就いた深夜。


 一つのベッドで一緒に寝起きしているベルを起こさないように気をつけながら部屋を出る小さな影は、そのまま屋敷を抜け出し、音もなく飛び跳ねるように駆け抜けて夜の砂浜に。


 まん丸で大きなお月様が地球とは違う顔を見せる。


 到着するとまず辺りを見渡した影は、幾ばくか躊躇ってから『ゲート』を開いた。

 闇に混ざるその渦は月明かりを消すかのように、影の頭上に。


 夜空を背景に見づらいその渦を、じっと見つめる。



「……お母さん」


 波音に浚われる、小さな声。



「……お姉ちゃん」


 その呟きは、誰の耳にも届かなかった───






・・・






 オーガの皆さんから開村祝いとして、山の方に生息する牛によく似た魔物が丸々五頭も贈られてきた。食用肉だけに解体、オーガ秘伝の熟成済みの高級品だ。


 だが、一頭で日本の食用牛五頭分にも及ぶそれを均等に分けられた村人たちは、保存法が魔法頼りで使えない者が多かったために無理矢理消費する家庭が続出。

 当分の間、肉の姿すら見たくもないと思うのであった。



「勇者たちってさ。何のために冒険してるんだろうね」


 そんなこんなで「肉を見たくない!」と村民から押し付けられた領主的な村長的な立場にある少女は、朝から肉汁滴る五百グラムステーキという化け物を一口大に切り分けて口いっぱいに頬張り、飲み込むと、そんなことを口走った。


 薄切りローストビーフをサラダと一緒にバゲットに挟んだサンドイッチを小分けにして食べていたベルは、見ているだけで満腹感を覚えたので半分ほど残した。残した分はソラにあげた。


「色々と“デタラメ”を教えたけど……今思うと不憫ね」


 出来れば王国を滅茶苦茶にしてくれればいいなぁという、ろくでもない目的のために呼ばれた勇者たち。

 帰る方法はあると教えた気がしたが、実際、ベルは『リバウンド』と呼ばれる方法しか知らなかった。


「帰る方法が此処に居て、その本人は面白がって帰す気は無いなんて、ね」

「ん、頼まれたら帰してあげないこともないよ?」


 頼むも何も、勇者たちからすれば召喚した姫を浚った宿敵だ。

 それが同じ召喚者であることも、お姫様と仲良くやっていることも、ガングリファン帝国のトップと手を結んでいることも、ましてや地球に帰れることすら本人が気付いていかなったのに、勇者たちが知る余地がない。

 


 そして……



「それに名前は忘れたけど、貴方の知り合いもいるでしょ?」

「ああ、水森委員長?」


 去年の海水浴にも一緒に行った眼鏡の委員長。

 『命掌』水森 綾。

 高校一年、二年とソラと同クラスの、仲の良い友達だ。


 過去の地球に跳ばされたベルは勇者一行の一人がソラの知り合いだと判った時、友人をすぐに帰してあげないソラを不思議に思っていた。


 因みに、通っていた学校に委員長と付く役職は無い。



「あのちっぱいで委員長だとは気付いてたけどさ。委員長、海外留学したいとか言ってたし。異世界も似たようなものかなって」


 確かに海外ではあるが、地球外で世界外だ。


「それに知り合いがいたほうがさ、正体を表したときの衝撃とかが強いと思うんだ」


 そんな自分勝手なソラの発言。

 喚んだ当初の目的が必要無くなったベルには、何も知らない勇者たちが可哀想になってきていた。

 帰してあげなさい、と、言うほどではなかったが。



「それに今日は遂に、ベルのギフトを試す日だよ! 食べて体力付けとかないと!」


 メイドが持ってきた二枚目のステーキに取り掛かったソラに、ベルは逃げるように朝風呂へ向かうのであった。

 ……早食いしたソラがお風呂に乱入してイチャイチャ。それをナニかに染まりかけているメイド長が陰でハァハァする、という日課が繰り広げられるまで、あと数分。

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