神殿を離れたけどまだ説明回
2013/12/1 脱字、『。』抜け、文字抜けを修正。
神殿で一晩を過ごし、朝。
「……身体中が痛い」
石畳の上に直接横になったため、身体は固まる、冷える、小さな身じろぎで肌を擦りむくと散々な寝心地。
「……ヤバい、帰りたくなってきた」
部屋のベットが恋しくなったソラだったが、何かに気が付き、思考停止。
「──危ない危ない、今の私は『ソラ』だった」
固まった身体を背伸びで鳴らし、念じることで半透明の窓を呼び出してから外に続く階段へと歩き出す。
が、階段を中腹まで上ったところで引き返し、昨日から存在を忘れたまま神殿に放置していた通学鞄を取りに来た。
思考停止は、冷静な判断を求められた時にソラが行う、一種の癖。
ソラは、寝ぼけていた。
「無いなら作ればいいじゃない」
そう言って虚空から取り出したのは、犬の毛皮。
昨日の犬(戦闘内容は犬が可哀想なので秘密)は倒したと同時に消え、不思議に思い探すと、メニューのアイテム欄に犬一頭分の素材が解体された状態で丸々と入っていた。
これでまた新たな謎と仮定が生まれてしまったと昨日の少女は嘆いていたのだが、今日の少女は朝の淡々としていた。
「……いや、街に行って寝袋買えばいいか」
犬の毛皮を虚空に戻す。
昨日の暴走気味な少女はどこに。
低血圧で不機嫌にはならないが、冷静で常識的、その分うっかりが増える朝の少女。
「そうするとお金……売り物を作るか。犬の素材をそのまま買い取ってくれるギルド的組織があるのか分からない現状、まだ加工品のほうが無難かな」
昨日のアレはどこへ消えた。
神殿周りで可能な用事を済ませ、太陽が真上に昇るまでにまだまだ時間が掛かりそうな時間帯。
車輪の跡が残る森の道を歩くソラ。
その服装からは既に、地球産の物はなくなっていた。
元々はMMOを目指し開発されていた『Persona not Guilty』には、かなり自由度の高い生産スキルも残されていた。
システムに容量を食い過ぎてMMOが不可能になった、と言うだけはあり、もしMMOになっていたら、数多くの職人で街は賑わっていたことだろう。
森に溢れる木の葉を材料にした、上下の布の服。石を集めて作った金属の胸、肩、腰、膝の防具。
学校の制服と通学鞄はインベントリ──メニューのアイテム欄のこと──に仕舞われた。
『Persona not Guilty』の生産を一文で説明すると、『ファンタジー科学な錬金術』だ。
植物の繊維から布作れるんじゃね?
金属って微量ならただの石にも含まれてね?
……そんなチャラい言い方かは知らないが、素人考えの科学に、都合の良い「ファンタジー」というマジックをかけた、適当な物だった。
勿論、素材の良し悪し、職人の腕、使う道具で出来が変わるのは当たり前で、むしろゲームな分、残酷なまでに数字で表れる。無論、現実よりは遥かに楽に上達できるが。
適当な葉っぱとそこらの石で作った、見掛け冒険者装備。
現実に帰ることがあった時、制服がボロボロだと困るための有り合わせ。
「ごわごわ、動きづらい、なんか大地の香りがする」
生産スキルも金属系、布系、薬品系などで作れるアイテムごとに複数のスキルが存在するのだが、ソラのスキルは、パレットにより<神の創り手>という一つに纏められている。
因みに、<神の創り手>という名前の由来は。
全ての生産スキルを所持した状態でクリア目前に発生する「消えた女神」という高難易度のイベントをこなし、その時に作ることになるのが女神像だから、女神像を創りし者、<神の創り手>だ。
森という素材の宝庫で木を石で削り<木工>、脆い石を割って石器時代のナイフを作成し<鍛冶>、ブレザーに解れを見つけたのでブレザーの胸ポケットから爪切り──ソラの必需品──を取り出して糸を切ったら<裁縫>。
……ゲームでは「木を削る」という動作自体がイベント中でなければキャラは絶対に不可能な動作なので、現実になると『Persona not Guilty』はヌルゲーだなとソラは考え、いやでも即死属性とかあるし、やっぱり最終的に頼りになるのは行動力や判断力かと、即座に思い直した。
イベントも無しに「混ぜたら出来た」は、ソラ本人も凄く驚いた。イベント無しで全部合わせたらできる<職人魂>になると思っての行動だった。
法則を未だ掴めぬままだが、害は無くて得だけで、生産スキルは他のスキルと合わせられないから別にいいやと放置。
──<神の創り手>スキルの効果を頭から零れ落としたまま、ソラはこの道が人の住む場所へ繋がっていると信じて歩いていた。
誰だ、こんなややこしいゲーム設定と異世界設定作った奴は。