リトルナイトの冒険
2014 3/9 温泉の時に仮面外してましたので、最後のカタリナの部分を微修正。
旅に出る準備を整えたオードは、一人、待ち合わせ場所である王都の北門で腕を組んで何かを見つめていた。
その視線の先には、甲冑を着込んだ騎士。
騎士は全身、金属鎧。
主な敵が人間なので、鉄で隙間を減らすだけで大半の攻撃から身を守れる。そして攻手になることをあまり考慮せず、要人を守る壁となることを主題としている。
それに対して、ハンターはなるべく金属パーツを減らす。
敵は人外な力を発揮する魔物。並の金属では重りにしかならないのだから使う意味も薄い。使われても精々が急所部分か、とんでもなく高価な特別な金属くらいだ。
戦場が、街中か街外か。その違いも大きいだろう。
入り組んだ道や建物の影からの不意打ち。とっさに身を呈すだけで要人の盾となれる金属鎧は非常に有用だが、旅をするには重すぎる。「川も渡れず泥に沈む。上りは疲れる下りは落ちる。逃げ足遅れて高所に登れず、段差を飛び降り致命傷」という、金属鎧の重量に対する文句だけを並べたハンターの言葉があるほど。
国から助成金が出る騎士ならまだしも、個人で買うには高すぎる価格も関係はあるだろう。
暇そうに門を警備する騎士を見つめていたオードは身体の向きはそのまま、顔だけを左へと向けた。
見た目のスマートさをウリにした王国騎士団とは明らかに違う、鎧姿。
バケツをひっくり返し、真ん中辺りに視界用の切れ込みを入れたような兜。
繊細な動きは期待できなさそうな指まで守る手甲。
爪先や踵にまで武器になりそうな出っ張りの付いた足甲。
腰まである青いマントを背負った寸胴な鎧。
腰の左右に剣を二本ずつ、計四本も下げ。
背中のマントには交差した剣を背にした猛禽類という、王国周辺では見掛けない紋章。
「お待たせ」
見慣れた四人を後ろに引き連れた小さな騎士が、オードに右手を挙げながら気安く声を掛けた。
暇そうにしていた騎士も、閉じたバイザーの中で目を丸めていた。オードとは違い、見慣れぬ鎧と特注であろうその鎧のサイズにだが。
「いや、無いわ」
気付けばそんなことを口走っていたのも、ハンターとしての常識故。
そんなことを気にしない小さな鎧は、ルンルンと門をくぐって行った。
・・・
重量級の体当たりは、立派な攻撃である。
どんなに速くても重さがなければ攻撃にはなりえず、どんなに重くても速さがなければ当たらない。高機動のデブとは身体自体が一つの武器であり、基本さえ身に付ければ喧嘩でそこそこ強くなれるのだ。所詮、そこそこだが。
さて、外見通り、体重がとてつもなく軽いソラ。
既に発育が止まってしまった高校二年生でありながら、小柄な日本人女性の中でもさらに小柄な小学生ボディ。顔も小学生フェイス。
そんな合法ロリ街道まっしぐらなソラは今、腰に下げた四本の剣で重さを微調整し、自分と同じ重量の装備を身に纏っていた。
地球に居た頃ならば満足に動くは不可能。そもそも動けるのかも不明。
「ソラちゃんダァァァァイブ!」
腕をバツ字にクロスさせ、まるでボーリングのように魔物を弾き飛ばしたソラ。
「ソラちゃんロケェェェェェェト!」
真っ直ぐな大木の側面に立つかのように両脚を着け、ジャンプする要領で頭から魔物の群れに、まるでボーリング(略)
「ソォォォ……ラァァァ……ちゃぁぁぁ……んー……」
前からは魔物の群れ。
握られた右腕を左手で押さえたソラは、中腰で溜める。
そしてまだ魔物まで距離があるというのに、正拳突き。
「ロケット! パアァァァァァァァァァァァァンチ!」
右腕に装着したガントレットが腕を入れる空洞から火を吹きながらぶっ飛び、魔物の群れをまるでボ(略)
「ふう、また詰まらぬ物を斬ってしまった」
兜を脇に抱え、兜の下でもやはり被っていた仮面──古代エジプトの王族、死後用──の額部分を腕で拭うソラ。
仮面さえ無ければ、爽やかな汗と笑顔で清涼飲料水のCMになりそうな清純系美少女ポーズも、黄金マスクのせいで非常にシュールなお笑い系CMである。
ニーナはソラがぶっ飛ばした魔物に止めを刺しながら、目を輝かせた。
「すっごーい! 最後のアレ、どうなってんの!?」
カリカリカリと歯車の音を出しながらゆっくりとチェーンで戻ってくる右腕を見詰めるネルフィーは、掴んでみたり、引っ張ってみたり、火が出ていた空洞を覗いたり、地面をずるずると引きずられるガントレットをただただ見つめたり。
ソラが動き回るせいで一矢も撃てなかったアルセは「矢からあの火を出したら……」と呟き、そういえば前にソラが魔法を施した矢は……と、忘れていた存在とその危険性に今更ながら気が付いた。
カタリナは本を開き、「普段から仮面を外させる方法は?」と、保護者……否、とある誘拐中のお姫様に質問していた。
因みに回答は、「男を消せばいい」。
この中で唯一の男でツッコミ担当は、遠い目をしながら雲を眺めた。
「もう、知らん」
時間を空けてしまい、申し訳ないです。