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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
帝国編 ~土地を分けてはくれませんか?~
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土地とヤンデレ

2014/02/01 誤字修正

2017/05/12 商標を使ってしまっていたのを修正

 目を覚ますと、視界に広がる黒。

 その黒を撫でてから体を起こすと、布団の隙間から温もりが逃げたからか、その黒の持ち主が身動ぎした。


 綺麗なピンク色をした可愛い唇が、動いた。



「……ベル、の……ちっぱい……」



───何時の間にか手に握られていた本。その角を、黒に目掛けて振り下ろした。








 オーガの集落は山沿いにあり、二人が今居るのは海沿い。

 山脈と海に閉じ込められたこの土地は、広さでいうなら岩手県くらいある。日本地図では大きく感じ、世界地図では小さすぎる。


 狩猟民族で魚はあまり好まないらしいオーガは海に魅力を感じないそうで。


 人間のルールではこの土地の持ち主である皇帝から貰ってきたソラだが、そんなルールなんて知らない先住民であるオーガ。

 そこの辺りにいざこざを残したくなかったソラは「ドラゴン黙らせるから海ちょーだい」という、本人に取ってはお願い、オーガにとってはドラゴン以上の脅威からの拒否権なんてものが存在しない脅しにより、無事(?)に土地を手に入れたのであった。




 夏ならば絶好の海水浴場になるであろう砂浜。山に近付けば岩場と崖になり、いい感じの港になりそうな入江も。



 森から数百メートルは続く砂浜から、海を眺め二人。


「開発のしがいがあるね」

「丈夫ね」

「うんうん、丈夫そうな岩だね。邪魔だから退けよっか」


 本を素振りしながらソラの頭を見ながら言ったのだが、何故か、砂浜に埋まっていた岩の除去に。


「えいやっ」


 そんなに力を込めてなさそうな掛け声と共に地面から引き抜かれた岩と、そんな岩を両手で持ち上げ、どこに置くとか考えずにやっちゃって困ってる仮面の子供。 


「……今すぐに開発するわけでもないし、その時になってから退かしたら?」

「うん、そうする」


 ポイッと放り投げられ、地面にまたも刺さる岩。埋まっていた部分を含めれば二人よりも高く、二人で両面から抱えても手も触れられないほどの大きさ。




 ソラの怪力を改めて実感したベルは、仮説は間違っていないことを確信した。




 初代勇者の全盛期よりも、今のソラの方が全てにおいて強い、と。




 レベル。


 初代勇者の二千越えという記録。

 それのせいでソラは際限なく強くなれると思っているが。


 この世界のそもそもの常識だが、レベルの恩恵というものはあまり大きくはなく、上げられる限界だってある。初代勇者は『勇者』だから例外なのだ。


 実際、城から出たことのないベルは一だったのが、僅か一ヶ月ほどで五十越え。

 急激にレベルが上がったのにも関わらず、力を込めすぎて何かを壊すことも、前より速く走ることも、頭が良くなったりも、強くなったという実感が無い。


 強くはなっているはず、なのだ。


 レベルを最大限に生かすには、鍛えなければ意味が無い、という常識もソラは知らない。



 例えばの話。


 ベンチプレス──初代勇者が齎した──で六十キロまでしか持ち上げられなかった者が、レベルを一上げるとそのうち・・・・六十五キロくらいまで持ち上げられるようになる。


 レベルを上げてすぐ、では無いのだ。

 今が限界まで鍛えあげた状態だとして、さらに鍛えられるようになるのが「レベル」だ。余白が生まれる。限界値が増える。更なる高みに昇る。表現の仕方は様々だ。


 それも、例え話のように五キロも持ち上げられる量は増えない。十も上げれば五キロいくかいかないか、だ。



 レベルは上がった瞬間、意味は無い。


 過去の勇者達も今のソラと同じ勘違いをしていた、という記録をベルは知っていた。

 そしてソラ以外の召喚者……今世の勇者とその仲間には、経験則から調べ上げた勇者が知らない、勘違いしやすいであろう知識をしっかりと教えてある。



 ソラだけが、知らない。



「こんなもんかな?」


 スキルという、一人一つしか持てないはずのギフトのような能力でありながら、聞けば三百種類以上はあるという反則のような力を存分に発揮したソラ。

 そこらに今の今まで生えていた生木であったはずの木から、立派なログハウスを作り上げたところだった。


 海風に強い一種類の木しか使っていないはずなのに、よく見れば色合いや木目の違う部分も。ベルの知識には無いのだが、材料が木だとは分かるのだが木目の無い固くて軽い素材がドアノブや家具などに使われている。



 ベルは、笑顔だ。






・・・






 ベルは、自覚する。


 自分は歪んでいるのだ。



 城に居た頃は、世界が終わればいいと思っていた。


 それが今では、終わらなければいいのに、と。


 この世界の常識を知らないソラは、知ったとしても変わらないのかもしれないが、もしかしたら逸脱した行動を取らなくなるかもしれない。


 それが嫌で、常識知らずのお姫様のふりをして教えないのだ。



 ソラを見ていると、全てが変わっていくのだ。


 自分の中にある古臭い黴の生えた常識が壊れて、ソラを基準とした新しい常識が生まれていく感覚。


 世界は終わらせるものではなく、変えていくもの。


 まさにソラは、新しい世界。



 勇者なんて、ちっぽけな物。


 期待して召喚して、勇者とその他を見て、期待は小さくなった。


 確かに異世界の知識は貴重だが、勇者以外はこの世界で珍しいとはいえ普通にあるギフトで。


 知識も、過去の勇者と似たり寄ったり。



 攫われて、どうせなら召喚する前に、もっと早くに攫ってくれればという理不尽な怒りも確かにあった。


 今では思う。


 召喚して良かった。


 召喚しなければソラはいないのだ。


 勇者召喚で勇者以上が召喚できるなど、誰が思うのか。



 新しい世界を、ベルは見る。



 女の子を集めてハーレムを作るのだと、鼻息荒く『街』を造っていくソラ。



 初代勇者が苦戦したと記録されたのと同じ種類のホワイトドラゴンを素手で倒し、亜人の中でも特殊な分類であるオーガと普通に接し、数分で一軒のペースで家を建てる少女。


 この世界でも通用する美少女で、子供みたいな体型で、なのにこの世界では子供が居てもおかしくはない十七歳で、頑なに仮面に拘り、食べ物に拘り、入浴の習慣にも拘り、なのに服装や髪型はある物で適当。


 女性なのに女性が好きで、男性は毛嫌いしていて、基準は解らないが一部女性にも興味が無くて。


 好奇心が強くて、自信家で、悪い意味で身分に拘らず、なのに自己評価は異様に低い気がベルにはする。


 ペラペラとお喋りな癖してゲームや知識の話だけで、前の世界での家族、友人の話を何気なく避けている。




 ベルは、ソラが好きだ。


 既に、ソラの居ない生活は無いのだ。


 相手がソラならば男女の壁も越えられる。


 ソラが望むのなら抱かれてもいいと思っている。


 パートナーというよりは、有る意味でベルは、ソラを崇拝しているともいえる。


 ソラは、ベルの世界そのものなのだ。





「ベルベル。二人の愛の巣はどうする? お城でも建てちゃう?」



 ベルは、笑顔だ。



「シャワー付きトイレが作れないなら、あの家がいいわ」



予告


NAISEIは大部分をカットします。


内政は無知なので書けません。頭が沸騰します。

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