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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
帝国編 ~土地を分けてはくれませんか?~
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馬鹿か狸か

2014 3/17 誤字修正&文字追加&日本語修正

 コタツに入ってミカンと緑茶を嗜みながら、経緯とか身分とかを見て見ぬ振りをして語り合う四人。それを眺めながら壁際で待機している、大事な時以外、皇帝の命令を普通には聞いてくれない使用人たち。




「なるほど、召喚されたのか。なるほどなるほど」


 好みの女性には口が軽い事で定評があるソラは、それだけが理由ではないのだが、勇者召喚に巻き込まれた存在であることを姫に話した。


 返事をしたのは皇帝だが。


「召喚され、トラブルかミスで頭数から抜かされたのか。それで、怒って姫を浚ったと」

「ん? なんでそうなるの?」


「違うのかい?」


 皇帝は言う。


 王国から帝国宛てに、勇者が召喚され、召喚した第三王女が悪魔憑きらしき何かに浚われたこと。勇者についての詳細と、第三王女救出のために旅立たせたこと。最近の魔物の異常行動について何か知らないかといったことが、長ったらしく遠回しで分かり難い言葉で書かれた暗号文──ではなく、書状で届いたのだという。



 そこには目の前にいる少女の情報など無く。

 そして皇帝は、ベルと名乗る少女が、浚われたはずの第三王女だということを知っていた。


 仮面という共通点。第三王女。王国よりも何段も厳しい帝国の城に、難なく侵入できる存在。



「どうして私が、その第三王女だと?」


「ふむ、否定はしないのかい?」



 ソラと共に居る時点で、相手が誰であろうと大丈夫という確信を持っているため、相手が皇帝だろうと普段通りのベル。


 皇帝オーラが効かないベルの何かに反応し、家業により鍛え上げられた対・偉い人用の思考に切り替わった皇帝。

 その実、口調が偉そうに変わるだけなので、大体はビビった相手が勝手に自爆したり譲渡してくれているだけなので、効果の無い相手には意味が無かったりする。



 勝負が始まる予感にソラの目がキュピーンと光った、気がした。




「ねぇねぇ姫様、おっぱい揉んで良い?」

「どうして今!? 嫌よ!」




「帝国自慢の情報部、その存在は秘密。随分と有名な話だけどね」

「皮肉だね。肯定はしないが、まあ、周辺国の王族や主だった人物の似顔絵は手に入れているよ」


 ベルの牽制と、帝国の力を示す皇帝。



 隣の会話を聞きながらタイミングを見計らったソラが、ベルと口を開くのを合わせた。無駄にスキルを使い。


「帝国ってファンタジーな赤髪を遺伝してるんだね。やっぱり継承者の証だったりするの? 下のおけ毛も真っ赤だったし」

「いつだったかしら? 天井から無駄に色気を振り撒いた女性が降りてきて、帝国の情報部の者だけど、似顔絵を描かせてくれないかって話し掛けられたわ」



「下っ!? な、なに言ってるのよバカ!?」

「なにしちゃってんの情報部!? というか知ってるそいつ! 能力有るから自由にさせてたけど、自由すぎんだろ姐さんよお!?」



 勝負は、帝国の二人がコタツをバンバン叩くことで終わりを告げた。


 親子らしく同じタイミングで叩く光景を、使用人たちが微笑ましく見守る。


 侵入者二人組はというと、一人は叩かれるコタツの衝撃と音に顔をしかめ、一人は勝ったような優越感から、無い胸を張っていた。



 そもそも勝負ではなかったりもしたが、ソラがご機嫌ならそれでもいいかとベルは思った。






・・・






「でさ、ここ頂戴」

「いいよー」


 ソラのお願いに、皇帝は気軽に応えた。

 帝国領だけが描かれた地図の、結構な広さを指差しながらそんな緩いやり取りを交わし、無事に土地を手に入れたソラ。


 ベルは、胡散臭そうに皇帝を見つめた。




 友好の証として、異世界テンプレートから王族や貴族に喜ばれる贈り物を思い浮かべ、インベントリの中から次々と取り出すソラ。


 自分にしか見えないメニューに表示されるワールドマップをスキル<作図>により書き写した世界地図と、植物系モンスターがほぼ確実に落とすドロップアイテムの果物、皇帝──というよりは魔王──っぽい装備と、お姫様装備。



 そして、ソラ的には大本命の、実物は異世界初登場の『魔破の石碑』。




「うわっ、帝国ちっさ」


 素に戻った皇帝は世界地図を広げ、大陸最大のガングリファン帝国を貶す皇帝陛下。



「これうまっ!」


 使用人が切り分けてくれた果物をぱくぱくと食べる、口調が父親の素と同じになっているお姫様。




「これ一つで、帝都まるまる魔物が入れなくなる優れものなのに……」


 無視された石碑を撫でるソラ。


 高さ二メートル。中心に複雑な魔法陣と特殊な文字が浮かぶ、青く透明に光る六角柱。

 石碑というより、クリスタルでできた豪華な置物。



「ソラ。それは部屋の中に置くもの? 場所を作って貰って、そこに置き直したら?」

「あ、そっか」



 部屋から消えたクリスタル柱に安堵の息が漏れる中、ベルは、皇帝が簡単に土地を手渡した意味を考えていた。

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