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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
Girls, be ambitious
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不評、そして濁点

 真っ暗な中、手を繋いだ二人の少女が歩く。

 本人が知らぬままにギュッと、相手の手に痕が付くほど強く握る少女と、その反応に笑みが止まらない少女。


 前方には希望の光。後ろにも同じ光があるのだろう。


 だけど二人は前に進む。


 それはまるで───






「初回使用時、限定ムービー。これからは使う度に此処通らなきゃいけないのかな?」



 お化け屋敷のカップル気分。平気な彼氏と強がる彼女。

 ソラ的にはどちらも彼女でいいのだが、世間一般的にはこちらが正しいだろう。



 ゲーム時、この魔法を教えてくれるNPCと一緒に通る時だけ見れたゲートの通り道。

 次からはこの移動部分がカットされ、黒い渦に入って黒い渦から出てくるだけの通常バージョンになるので、ゲーム上、この道を見れるのは初回のみ。



「これなら行き先の選択ミスった時でも元の場所に戻れそうだね」


 そう言って後ろを見る。やっぱりあった光。


「この光を目指さないで、真っ暗な方に進んだらどうなるのかな?」

「止めて」


 怖がる彼女の恐怖を少しでも和らげてあげようと、とにかく話しかける恋人っぽい役をわざとらしく演じていたソラだが、何気ない会話で地雷を踏む所まで再現してしまった。演技点はいらないのに。



「あー……えー……い、いい天気だね!」

「真っ暗で天気分からない。ヘタレな恋人みたいな演技止める。普段通りに」


 恐怖心からか、ベルの言葉が少しおかしくなっている。片言というか、言葉が足りない。




 さて、「普段通りに」と言われたソラ。


 自分の普段とは、自分が一番よく分かってなかったりするものだ。お喋りだと思っているけど周りと比べたら全然喋ってなかったり、無口キャラだと思い込んでいても実は五月蠅い奴だと人から思われていたり。

 自称は信用ならない。自称サバサバ系ほど、プライドが異様に高くて嫉妬深く、陰口が多くてイジメとかのやり方がネチっこいのだ。女の常識である。





 自称『女の子のアイドル』ソラちゃん。





「あそこまで飛んでっちゃう?」


 ゲーマーの間で賛否両論の「効率厨」が如く、手っ取り早く可能な解決策を持ち出した。




 ※効率厨・ゲームにおいて、レベル上げやクリアまでの道筋をとにかく効率的に進める方法を探し出したり実践することに楽しみを見出した人々。同じゲームなはずなのに違うゲームをしている人々。元々は批判的な言葉であったが、暗黙的なルールを守ればそれもまた遊び方の一つ、という風に変化してきた気がする。というか上位プレイヤーは大抵、暇人の効率厨(作者の独り言)






・・・






 闇を抜け、光を潜り抜けた先には……



「お前ら……」



 武器を構えた猫の獣人に囲まれ、その先頭には棍棒のような鈍器を地面に突き立てた怪人・筋肉猫(どちらも同じ猫の獣人です)






「ギフトです」


「いや、確かに一瞬で違う場所に行けるギフトがあるとは聞いたことがあるが……」


「それと似たギフトです」


「……しかし、なんだあの紛らわしい見た目は。中から悪魔が出て来るんじゃないかと皆怯えて」


「知りません。そういうギフトですから」


「というかアンタ、空飛ぶギフトを持ってるんじゃ……」


「ギフトです」


「ギフトを二つも持つなんて聞いたこと無いわ!」


「他にも出来ます。あ、お土産です」


「あ、どうも。……トカゲの頭……いや、仮面か? というか今、どこから取り出した?」


「ギフトです」




「堂々巡りじゃねぇか!」




 ソラが村長を弄っている頃、ベルは付け慣れない違和感から仮面を普通に外してしまい、素顔で村の女衆と雑談をしていた。誘拐されたはずの第三王女だとバレないための処置なのだが、冷遇されていた王女の顔など知っているのは城勤めの者くらいなので、辺鄙な村で顔を知っている者など居るわけがないのだ。




 そもそもこの村は、既に王国の領内では無いのだから。



 帝国領、ペテト村。

 万年花の保護と、管理された収穫のためにハンターズギルドが作り上げた村。猫獣人の一族に移住して貰った経歴から、村人は皆、元を辿れば親戚のよくある小さな村。


 当然国から許可は取ってあるし、税も納めている。




 勇者召喚、という物語のスタート地点の割には小国であるラクール王国のお隣さん、大陸でも有数の大国である、ガングリファン帝国の領地なのだ。




 後に帝国の名前を知ったソラは、「やっぱり濁点だ」と、呟いた。

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