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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
Girls, be ambitious
40/133

魔の手

 高笑い。


「ついでに色々作っちゃおー!」




 アニメやゲーム等のサブカルチャー、他にもスポーツやアイドルなどには、それ本体がもたらす利益以外にも、時には本体がもたらすよりも多くのお金を生み出してくれる錬金術、『グッズ販売』というものが存在する。


 全く売れずに赤字という恐怖が付きまとうものの、大手であれば「売れる物」「売れない物」は経験則から既に割り出されおり、作中に出てくる物を出せば大体は大当たり。作品、人物の人気がグッズの種類や価格にモロに影響される弱肉強食の世界である。たまにあるジョークグッズ、ファンサービスはコアなファンを離さないための撒き餌である(誰かの偏見)。

 人気が無いが為にグッズの種類が少ないと泣くファンもいれば、種類が多すぎてどうしても欲しいのだけに絞っても大金をつぎ込まねばならないと財布を軽くして泣くファンもいる。泣くのはいつもファンばかり。



 では何故、売れるのか。




 好きな物は好きなんだからしょうがない、のである。




 ソラはゲーム好きではあるが、あまりその手の物に手を出したことは無い。

 精々、コンビニのコラボ商品程度だ。


 節約である。世知づらい世の中なのである。




 だがもしも、元手無しで、等身大の作中グッズが手には入るなら?




「目指せ、武器コンプ!」




 余談ではあるが、『Persona not Guilty』はオンライン環境必須の一人用RPG、それもPCゲームというドが付くほどマイナーなゲームなため、グッズ販売なんかされるわけがない。


 コアなファンは多いが、MMORPGになって人気が出てから初めて語れる、夢のまた夢の話だ。







「それで、足りたの?」

「うん。なんか他のトカゲと植物の素材も混じってるけど、三割はボス素材の代用品だね。寧ろ植物のは用途が多いからラッキーだよ」


 いらないトカゲ素材で作ったという、どこかの民族の儀式道具のようなエリマキトカゲ風仮面を付けたソラ。


「帰ったら村長にでもあげなさい」


 可愛くないのでそれを外させ、此処にいない人物に押し付けるベル。


「そのつもりー」


 ソラはソラで、旅行のお土産によく分からない置物をプレゼントするが如く、ウケ狙いで最初からそのつもりだったようだ。



「じゃ、帰ろっか」


 村を出てから三十分ほどしか経っていない。



 いつも通り飛んで移動すると思っていたベルがソラに近付くと、ソラはベルを抱えることなく、ゲームではとてもお世話になる魔法を使用した。



『ゲート』



 何も無い空間から渦巻くように現れた黒いモヤモヤは、垂直に立ちふさがる闇へと変化した。僅かに風を吸い込むそれは、縁の辺りから白い霧を吐き出し、渦の中には何も見えない。


 青空の下、草原に現れた禍々しい渦。



 ゲームでは定番の『移動魔法』。


 決して、骸骨とか死神が中から出て来ることはない。




「……」


 その、闇の儀式的な見た目にベルが全力で引いている。



「やっぱり出るんだ……白い霧……」


 意味よりも派手さを求めるゲームの無駄エフェクト「よく分からない白い霧」は、現実のものとなった今、どうして出ているのかが気になるソラだが、ゲートの効果は鑑賞してても意味が無い。



 手を握られたベルはこれから何をするのか分かってしまい、本能的にソラの手を振り解こうとして後ずさる。


「だいじょぶだいじょぶ。ゲームでも初めてゲートを見た女の子が腰抜かすけど、一度くぐった後はその便利さに感心してたから」


 ソラだって、予想以上の魔界に繋がっていそうな再現率に無意識に片足が一歩下がったが、その便利さを知っているからこそ入ろうと思える。




 本当は大声を出して拒否したいのだが、ソラが大丈夫と言っていること、何よりソラが自分に持っている『クールなお姫様』というキャラを保つため、手を引かれながら引きつる頬を無理矢理抑え、その渦へと歩みを進めるのであった。

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