閑話的な短さの猫耳
短いです
ベルにも獣人の子供が見える距離になってから、その後の展開は早かった。
「にゃー!」
怪しい人間を見つけ、飛びかかる子猫。
「女の子! オス、女の子、女の子、オス、オス、オス……」
飛びかかってきたのが女の子なら優しく受け止め花畑の上を転がし、オスなら掴んで適当に投げる。
二次性徴期前の獣人は人間よりも雌雄の区別が付きづらいのだが、ソラはスキルを使わずとも百点満点である。無駄な才能だ。
「にゃう~!?」
「にゃ? にゃー」
転がされ、投げられ。
キョトンとした後、何か面白かったらしく、起き上がった順にソラの前に列を組み出す子猫達。
そしてまた投げられての繰り返し。
「にゃ!」
「はいはい、高く投げるよー」
女の子からも投げてと猫語で頼まれ、万能翻訳により不便なく対応するソラ。
投げるほうはスキルを使い、回復魔法の威力を高める代わりに自分の攻撃による敵へのダメージを減らす<平和主義>に、ゲームでは防御力を高める<古武術>。
それに獣人の運動能力が加われば、五メートル程度なら余裕、もっと楽しみたいならどこまでも対応可能。
遅れて現れた子猫達の保護者は、行こうか行くまいか悩むように踏みとどまっていた。
焦る、というよりは楽しそうな尻尾の揺れ具合から、止めるのではなく混ざりたいんだなと、ベルは生暖かい目で保護者を見つめていた。
「うぅぅぅ……」
ゴクッ、と生唾を飲み込みながら子猫達が見つめる中。
「──にゃ!」
ポンッ、と軽快な音とともに出現した猫耳と尻尾。
「にゃにゃ!」
「にゃーにゃー!」
「ふにゃー、にゃにゃにゃにゃにゃー」
地球的に訳せば「ワンダホー!」「ブラボー!」「よっ、千両役者!」的な猫語。
そしてやっぱり飛びかかる子猫に、今度は受け止めて一緒に転がるソラ。
「獣人になった!?」
驚く保護者猫を横目に、もったい付けて装備変更しただけと、ソラのギフトについて粗方の説明を受けていたベルは知っていた。
どこからか取り出した本に「ソラが猫耳なう」と書き込んだ。可愛いもの好きな魔法使いさん宛てに。
ベルはベルで、ソラの色に変な具合で染まり始めている。
すぐさま「うpして」と書き込まれる辺り、ソラが本を通じて色々とやらかしていることがよく分かる。
因みに返信は「そんな機能、ソラにしかできません」。
ソラには出来るのか、写真か動画のアップロード。