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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
[閑話]主人公達のそれぞれ
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夜のお話、ベルのギフト

 ラクール王国の第三王女は有る意味、最もこの国の王族らしい王族であると、歴史の真実が告げている。




 正妻の子である継承第一位の王太子、二妃の子である第一王女、四妃の第二王女、同じく四妃の第二王子、そして最後に、正妻から産まれたのが第三王女であるベル。


 王太子以降、子宝に恵まれなかった正妻。

 何処からか「王との不仲説」が流れ出した頃に発表された懐妊の知らせは、あまりのタイミングの良さに「不倫相手との子」と噂されるようになっていた。


 そんな噂も、産まれたばかりの王女のギフトを調べた結果、疑いもなく消し飛ばされた。



 『魔の目』



 王家の血に含まれる呪われたギフト。

 世界に二つと無い強力なギフトには、その血が流れる子孫に再度顕れやすくなるといった特徴があるのだが、他では祝福されるそれも、ラクール王国では疎まれる存在であった。



 魔物を操る力。



 このギフトを持って産まれた第三王女が殺されないのは、殺せば災厄が巻き起こると、本気で信じられていたからだ。






 気味の悪い物を見るような目で見られることにすっかり慣れていた第三王女には、親も兄弟も使用人も、誰も必要以上に寄り付かない話し掛けない。

 これでも王族なので、城から抜け出したり人目がある場所を彷徨いたりは出来なかったのだが、だからこそか。


 王族として知らされていた隠し通路とは別に、忘れ去られた隠し部屋を発見したことは。




 そこで知ったのは、勇者のことと、自身のギフトの真実。




 貴族の嗜みとして教わるラクール王国の建国史を簡単に話すと、一人の若者が好きな女の為、一振りの剣で魔物の軍勢を蹴散らしてそこに国を造った、というもの。


 近くに悪魔の森があったが為に建国以来一度も戦争を経験していないラクール王国にしては血生臭い

、最初の勇者召喚を行った時より十世代は昔の話。



 だが、隠し部屋で見つけた劣化しない本によると、現実は更に血生臭く、人間の欲望にまみれた建国であった。




 当時、この辺りには小国が幾つか存在していた。


 国同士の仲はそれほど悪いものでもなかったのだが、とある国の美しいと評判の姫が、それまでの全てを変えてしまった。


 自分を餌に、他国のそれなりに地位の高い男を誘惑しては他の男と争いを起こさせ、さらに自身のギフトである『魔の目』によりその争いに魔物を投入。小競り合いは命の奪い合いに変貌し、そんな中でも姫は他の男を誘惑する。


 全ての小国の関係が悪化の一途を辿る中、遂に最初の戦争が起こる。



 同盟の裏切りが当たり前のように起こる醜い戦争の勝者は、姫の居る国……ではなかった。



 隣国の王子に恋をしていた姫は、小国の統一を目論む王子に利用されていたのだった。

 ラクール王国の初代王妃となった姫は世継ぎを産んだ後、謎の死を遂げる。


 しかしその血は王家へと繋がり、三代目ではそのギフトが王位継承の証となり、第二王子が王太子となったり。


 結局、何代目かで王になりたいがために親兄弟を皆殺しにした王が、歴史の改変やら『魔の目』を不吉な物として広めたり、そしてその王の何人目かの子が『魔の目』持ちで不遇な扱いを怨んで親を殺し、兄弟により獄中に入れられたことで今のような扱いとなったそうだ。






 そんなことはどうでもいい第三王女は、勇者召喚の方法が暗号で書かれた劣化しない不思議な本を解読するため、ヒントを捜してそんな歴史の真実も調べたり。


 ついでに言うと、その親殺しをして死ぬまで獄中で過ごした王子の名がヒントのヒントになったので、隠し部屋の存在を、本当の歴史を知らない人達に暗号は解けないだろう。






「勇者召喚の本、置いてきちゃったの?」

「連れ去った貴方がそれを聞く?」


 禄な勉強もさせず、魔力が低すぎたので魔法も基礎しか教わっていない。


 そんな籠の中のお姫様に解けた暗号が解けない魔法使いや王様王子様は、本はお姫様が持ったまま誘拐されましたと勇者一行に伝え、陰では今も数人の魔法使いや頭脳に自信があるものが必死に解読中なのでした。


「あの隠し部屋、初代勇者の召喚を行った人が造った部屋らしくてね」


「別な場所に保管されていた国の真実が書かれた本と勇者召喚の秘伝を一カ所に隠して、発見された時代に大きな混乱が起きることを想像しては頭の中で楽しんでいたそうよ。日記にそう書いてあった」


「で、今まであの部屋を見つけ出した人は全員、初代を見習って誰もがあの部屋の存在を秘密にして、同じく日記を書いて勇者召喚を行っているの」


「私も自分で、勇者を召喚した理由があんまりだと自覚しているけど、過去にはもっと酷い理由で召喚してる人も居たから、そんなに罪悪感が無いの」


「ソラにも会えたし、ね」




「ベルぅ~」




 こうして悪魔の森を抜けるまでの間、野宿の度に女二人、どうせ人はいないからと、ぶっちゃけた会話が交わされるのであった。




 二人の夜は、長い。

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