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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
[閑話]主人公達のそれぞれ
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勇者の仲間

 おかしなことになってしまったと、水森綾は箱馬車の天井を眺めながら考える。




 いつものように通学している時だ。

 いつも同じ時間の電車に乗る他校の男子生徒の後ろを歩いていたら、異世界召喚という、胡散臭くて信じがたい出来事に巻き込まれてしまった。


 直後に、二桁は居たはずの巻き込まれた人々が帰された時、どうして自分はこちらに残されたのかと、帰りたかったと思った。

 第三王女を名乗る勇者召喚の実行犯にその辺りを聞いてみたところ、憶測と前置きした上で「この世界と強い繋がり、つまり強力なギフトを得たからでは」と説明を受けた。


 地球で使えば研究対象か新宗教の教祖になれるのではという私達のギフトは、この世界でも貴重なものなんだとか。




 いつでも帰すことが出来る、という第三王女の言葉を信じた私達は全員がこの世界に残ることを決め、映画の中でしか見れないような騎士の下、魔法や武器を使った戦い方の修行を始めた。


 魔物という凶暴な生物がいるこの世界では、村人さえも何らかの戦う術を身に付けているのが普通なのだとか。


 途中、勇者の様子がおかしくなった辺りで、同じ女性である宮本さんがやけにハシャいだり、メンバー最年長の安田さんが「王道冒険ファンタジーだと思っていたら乙女ゲーだった、だと……!」と、お尻を抑えながら何故か戦慄していた。意味が分からない。




 その第三王女が悪魔だと思われるらしい敵に誘拐されたことで、私達の状況はまた一変した。



 なんと、地球に帰すための方法を知るのが、第三王女だけだったのだ。


 王女自身はあまり魔法が使えないそうだが、王城に隠されていた勇者召喚の書物を見つけ、解読したのが第三王女。実際の召喚も日取りから魔法使いへの指示まで王女が担当し、他の人間が手元の書物を覗き見ても読めない。


 勇者を召喚するまで身の回りの人間にだけその事実を伝え、王が知ったのは召喚の翌日。


 そして、王女は書物を持ったままか隠したまま、誘拐されてしまったのだ。


 召喚した直後に帰還も使ったのだから担当した魔法使いは知っていると思っていたら、あれは召喚の反動を利用した簡易型であり、一から帰還させるには違う魔法陣と手順が必要と第三王女が語っていたそうだ。



 王女が死んでいたら、手遅れ。


 安田さん曰わく、そもそも帰る方法が無いということも視野に入れておけ、と。


 何故、という疑問は、旅立ってから割とすぐに判明した。






「魔王は、敵ではないのですか?」


「初代勇者に破れてからは心を入れ替えたらしく、今では魔王領の発展に努める良き王様ですね」





 馬車に揺られて二日ほど。

 最初の目的地に選ばれたのは街へと移動中、蝙蝠のような羽を生やした黒っぽい人が馬車を呼び止めた。


 魔族、らしい。


「魔王領から派遣された調査団の報告です」


 そう言って手紙を勇者、ではなく騎士に手渡した悪魔っぽい魔族の人は、一礼して飛び立っていった。

 手紙を受け取った騎士が勇者を呼んでいる中、私が他の騎士に聞いたのは魔王のこと。


「魔王は発明王としても有名で、この箱馬車も、揺れを抑える装置などは魔王の発明品ですよ」

「内政系魔王か……あなどれん」


 隣で聞いていた安田さんが唸る。


「え、それじゃあ、どうして勇者を召喚したんですか?」


 宮本さんだ。


 城に居たときから旅路のテントまで同性ということで同じ部屋で、眠る前の会話でよく彼女は「勇者召喚といったら魔王討伐だよね!」と話していた。


 当てが外れた、と驚く顔。

 この旅も、魔王を倒してお姫様を助け出す旅だと彼女は思っていたようだ。



 そして目の前の騎士は、勇者と話すこの旅の責任者である騎士を見た後、驚くべき事を口にした。



「……第三王女は勇者を使い王国に対して反乱を起こすつもりであったのでは、と私は聞いております」



 どうやら、本当に地球に帰れるのか、分からなくなってきたようだ。

勇者ともう一人、書いてませんけどね!

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