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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
勇者の旅立ち
20/133

厄を運ぶ侵入者 [改稿]

2013 4/29

予約投稿のつもりが、間違って掲載してしまいました。

言い訳は活動報告の方で長々とさせていただきますので、この場では報告だけとさせていただきます。

 時間は少し遡り、外壁を壊したソラが堂々と人混みに紛れた頃。






・・・






 魔法建築が主流なのだろうか。ビル五階分にも及ぶ高さの外壁には、繋ぎ目が一切無い。

 つまり、魔法で一度に作ってしまうという異世界らしい力業で、人件費と時間が掛からないので楽そうだ。



 ……そんな魔法使いが複数いれば、の話だが。



 この世界の人間・・は魔力の量に難があるので、作れて畳五十枚分。それも国に仕えるような優秀な魔法使いが、体中の魔力を絞り出して。

 王都を囲む外壁を一度になど、それこそ魔力量に優れたエルフですら不可能なのだからそもそも、人間・・では話にならないのだが。


 ファンタジーな世界とはいえ、魔法を使えば一瞬で、とはいかない様子。

 ギフトという、種類から強さまで千差万別な不思議パワーがあるので、もしかしたらの可能性もゼロではないのだが……。






 そんな外壁にぽっかりと空いた穴の周りには、黒山の人集りならぬカラフルな人集りと、ソラの予想より遥かに早い公務員(?)の姿が。



 如何にも「騎士です」といった重装備集団と、現代の警察的な、雰囲気的には憲兵らしき青い服の集団が集まると、人を寄せ付けないためかその場にバリケードを築いた。半円上に隙間無く男たちが並んで。


 つまり、人壁。


 「魔法でやれよ」とソラは呆れてツッコむが、人間の魔法使いは魔力の量が少ないので以下略。




 <インビジブル(透明化)><忍び足(足音を消す)><無臭そのまんま>といった隠密系スキルで、誰かの目の前で使えば「突然消えた」と思わせるほど気配を消したソラは、人壁に混ざらなかった偉そうな騎士の下へ、情報収集とスキルの効果確認のために近づいてみる。




「魔物、にしてはおかしいな」


 他と同じ鎧に、胸と肩に何かと印を着けている騎士。


「姿が見えないのが何よりも怪しいが、この壁を壊せるような魔物の存在が報告されていないのも変だ。急に現れて壁だけ壊して逃げた? 何のために?」


「地竜の突進を受けて何ともない壁ですよ?」


「だが、何者かが穴を空けた……お前には目の前の穴が見えていないのか?」


「この壁を壊せて、尚且つそれに理由があるような存在……!? 隊長、まさか先程の報告は──」


「それ以上は言うな! まだ確定したわけではない。目撃証言、それも遠目に、だ」


 隊長と補佐官のようだが、苛々しているのが近寄るだけでも伝わってくる。



 人壁以外の騎士が集まってきたのを確認したソラは、ぶつかると隠密系スキルが解除されるために<飛行>して、近くの薄暗い人気のない路地へと逃げた。


 ただ、部下の慌てようだけが気になった。








 隠密スキルの効果は問題なしで、戦闘用スキルを犠牲にする合成スキルばかりなのが残念と、ソラは表の喧騒から取り残されたような路地で独りごちる。



 この後どうしようかと悩んだソラが何気なく目線を動かすと、この異臭が漂う路地に他人が居ると、ようやく気がついた。

 慌てるが、それが見るからにみすぼらしいホームレスらしき男性で、いびきを聞いてひとまず安心。




──脳裏に、閃いた。






・・・






 は騎士を遠巻きに外野でそれぞれの憶測を語り合う地元住民らしき集団へと歩み寄ると、さっき騎士たちの会話を盗み聞きしたんだが、と囁く。



「何でも、この近くの村で『悪魔』が目撃されていたらしいぞ」

「こっちに向かって飛んでいったそうだ」

「あの壁の穴は『悪魔』の仕業に違いない」

「秘密裏に勇者の召喚が行われたっていう噂があるんだが、それを察知した『悪魔』が侵入した」

「穴を空けた後、羽を隠してこの人混みに紛れたんじゃないか?」

「そういえばさっき、黒い羽根が……」

「勇者は複数で、今は城に……」







 あちこちから『悪魔』『勇者』という単語が聞こえるのを確認したソラは最初の路地に戻ると、<変装>を解いて仮面を身に付け、足早にその場を立ち去る。


 スキル<変装>は一番近くに居るNPCの姿になるスキルで、ゲームではこれで盗賊団の仲間のふりをしてアジトに侵入するというクエストがあった。




 別にソラは、『悪魔』の噂を広めて何かをするつもりは無い。


 ただ、「壁を壊した」という罪を、居もしない『悪魔』に擦り付けただけの悪知恵で。





──この『悪魔』が後に、王国を揺るがすとんでもない事件を巻き起こすことになるとはこの時、『悪魔』の中の人であるソラは知る由もなかった……。

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