神殿の底から聞こえる声
執筆途中で投稿してしまった。
まだ慣れない。
4/5、ちょっと付け足し。
《スキル<暗視>獲得》
その文字が目の前に表れた瞬間、少女は全身の鳥肌を立たせて歓喜した。
「アハハハハハハハハハハハハハハ!」
いつの間にかほんのりと光っていた魔法陣の明かりも消え、真っ暗になった召喚部屋。
「キタキタキタキタキタキタキタァァァァァァ!」
一度、現地人や選ばれた日本人が消えていった部屋で唯一の出入口である階段を上り周囲に人が居ないか確認しにいき、警備の兵士どころか周りに木々しか見当たらないことを確認してからのハイテンション。変なところが冷静である。
「オレの時代、キタァァァァ!」
真っ暗な、石畳の部屋ではしゃぎ回る少女。ぬいぐるみやピンク色が目立つ部屋で、誕生日かクリスマスプレゼントを貰って、ならば微笑ましい光景だろう。
一人称がオレになり、部屋が暗ければただの変人。
それに、見た目は華奢でランドセルが似合いそうな彼女だが、歴とした高校生である。それも二年。
後輩に後輩扱いされようが、遊園地で風船を貰おうとも、商店街で買い物をすると御使いだと思われてオマケして貰おうとも、それらに対して本人が嫌がるどころか便乗して得をしても、本来は高校二年生なのである。
「オレ様無双の開幕じゃーい!」
……決して、中学二年生男子ではないことを明記しておく。
・・・
ところ変わって、他の日本人。
召喚の神殿というらしい森の奥にポツリと建つ場所から馬車で移動し、森の終わりに建てられたら仮設の天幕の中で説明を受け終えた。
「……分かりました、僕で良ければ」
染めたことがないであろう黒髪に、ハッキリとした意志の伝わる凛とした瞳。人によっては気弱そうだとか優柔不断そうにも見える風貌だが、その瞳の輝きは強く、意志が弱そうな印象が勘違いだと解る。
「勇者様、ありがとうございます」
深く頭を下げる姫様に「勇者様」と呼ばれた青年は、瞳を勇者らしい意志の強い光から好青年のそれに変え、偉い人の謝罪や押しに弱い日本人らしく、あたふたした。
さっきまでとのギャップに微笑みつつ、姫は視線を勇者から逸らした。
「他の皆様に関しては……正直に申し上げますと、勇者様が断られた場合の保険でした」
長机の真ん中に向かい合って座る勇者の、左右に座る面々の顔を順々に見つめながら本音を語る姫。
「勿論、すぐに元の世界に帰りたいと仰られるならまた神殿に戻ることになりますが、時間も遡って元通りに帰ることはできます」
伏せ目からの、溜め。
「……ですが、強制送還の魔法に引っかからなかった皆様ならば、勇者様には及ばなくとも、さぞ強力な“ギフト”を授かっているはずです」
天幕に着いてすぐ、如何にして勇者召喚を行うに至ったのかを聞かされていた他の日本人は、強力なギフトを自分が持っているということに驚きつつ、だが何となくそんな気はしていたのか、納得や期待する顔をするのが大半。召喚時から表情が変わらない者や、何やら思案する者も中には居るが。
「この世界を救う旅に、世界最高クラスのそのお力。是非に貸して頂けませんか?」