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百合な少女は異世界で笑う  作者: テト
勇者の旅立ち
19/133

どうしてそうなった

 日本最大のテーマパークよりも広い土地。中央部に位置する城が最も高く、中心から離れるほど低くなる山型の地形。人口が増える度に広がる領土に対応して、外側が一番新しい外壁。


 そう、ここは────






「そういえば、土地に関して何一つ聞くの忘れてた」



──多分、勇者を召喚した国の首都。



「この世界って領土とかどうなってるんだろ。強い魔物が生息する未開拓地とか一杯ありそうだけど、ゲームではよくある『外壁の内側だけが国の領土』の引き籠もり設定だったりするのかな?」


 主人公が世界を飛び回るゲームではよくあることだが、国という概念はあっても、村や集落が何故か辺境にしか存在しない不思議な世界。首都と小さな村が一つ二つ程度しか無い国同士が戦争しあうなど、どこから兵が集まり兵糧ひょうろうはどうやってかき集めたのか。要所と要所を繋ぐ道に村の一つも無いのはおかしくはないのか。

 データ容量や手間の問題と分かってはいても、とても不自然ではある。



 村が街道に──高確率で滅んでいたが──複数存在はしていたので、ソラが居る世界はゲーム世界ではなくて普通の(?)異世界である様子。





「まあ、いっか。中に入ってから誰かに聞こ」




 魔物への早期警戒のためか、隠れる場所の少ないだだっ広い草原に都が囲まれている。

 隠れる意味は不明ながらも、隠れながら観察するのに役立った森から出ると、敵から見つかりづらくなる系統のスキルを全開。



 現在居る森から都まではスキル<望遠>を、虚像の鳥を生み出してその目を借りる凝った演出のスキル<鷹の目>を使ったから分かる。実際の目では「人工物」としか分からないような距離。

 

 隠密系使うの早かったかな、と脳裏を過ぎるも、首を横に振る。



 警戒に警戒を重ねているのは、ちょっとやりたいことが出来たからだ。





 ソラは殿下の宝刀『超特化七変化』による移動速度特化のスキル構成、ソラのパレット保存名『カラフル忍者』──叉の名を『忍べよ忍者』に変更すると、一歩、踏み込んだ。


 <悪魔>の飛行能力アップの感覚から、予想通りなら十キロ程度の距離を僅か数秒で駆け抜けることが出来るはずだと好奇心の笑みを浮かべながら、全力の一歩を。












────そして、額を外壁にぶち当てた。



「ブベラッ!?」



 決して乙女が出してはいけないアタタな悲鳴。


 受けた衝撃の割には小さすぎる痛みに一瞬気が取られたソラは、自分が何をやらかした・・・・・のか、未だに気付いてはいない。



「おととっ、と……いてっ!?」



 まだセーフな悲鳴──額を壁にぶつけた反動から頭が後ろに行き何歩か後退り踏ん張るも、虚しく尻餅をついた。



「うへ~、これは流石にや予想……外、なん、だよ?」



──尻餅をついたままのソラは外壁を見上げ、真犯人が居ないかと後ろを振り返り、人っ子一人見当たらない草原から現実逃避を止め、冷や汗を垂らしながら正面を見上げた。







「──うん、これは勇者召喚の気配を感じ取って先手に出てきた悪魔・・の仕業に違いない」






 立ち上がると共に清々しい良い笑顔でそう言い切ったソラは、念入りに隠密系スキルの発動を確認してから、徐々に人が集まってきた大穴・・を堂々と潜り抜け、多彩なスキルを駆使して「悪魔襲撃」の噂を広げることに専念しだした。






・・・






 城のバルコニーから現場を望む美しき姫は、幼少の頃に矯正された爪を噛みたくなる衝動を必死に抑え込みながら、手にした羽ペンを二つに折った。



「あらやだ、落としたら割れて・・・・・・・しまったわ」



 誰も見てなどいないのに言い訳を声に出しつつ、冷静になった頭で変更を余儀なくされた「勇者のお披露目」を練り直す。


 国の重役と城に勤める一部の者以外には未だ勇者召喚の事実をひた隠しにしていたのに、既に城から貧民街まで、その噂で持ち切りだった。



「悪魔だか天使だか知らないけど、私の計画を壊した罪、絶対に償わせてやるわ」



 外壁を壊した犯人を舞台に上げて見せしめにしてやるのもいいかと考えていた姫は、噂の広がり方が異様なほど早すぎることに違和感を覚えたものの、それだけこの国にとって勇者が特別な存在であると証明しているのだろうと、結論付けてしまった・・・・




「あの大穴は囮。騒ぎを起こした隙に潜り込んで、そろそろどこかに隠れたはず。捜すのは無駄。ならば──」









──姫は非常に聡明なのだが、何というか、やられ役の匂いしかしないなとソラは思った・・・・・・








「(まさか、勇者より先に黒幕を見つけてしまうとは……)」





「……推理小説を後半から読んじゃった感じ」





「あら? 声……気のせい?」





 ソラは今、姫の部屋の天井に張り付いていた。

悪ノリな急展開が好きです。

残念なことに自重できませんでした。

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