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その先に

作者: 丹羽凛

僕は階段を下りている。ただひたすらに降りている。

最初は数えていた段数も1000を超えたぐらいで飽きてしまった。

これは夢だ。そんなことは分かっている。だがなんにせよ僕はこの階段を降り切らなければならない。何となくそんな気がする。

 もし、この階段が無限であると知れたら、僕はすぐにあきらめただろう。もしも一直線に階段が伸びていたのなら。だがこの階段は20段ごとで折り返す。ビルの階段のように。ただ白い壁に囲まれた空間が広がっている。そしてその踊り場には毎回こう書かれた張り紙がある。

『ここであきらめたらすべてが無駄だ』

その張り紙を見るたびにため息がこぼれる。

もしかしたらメビウスの輪のように降りながらにして、上っているのではないだろうか?

そんな気持ちも芽生えてくる。だからと言ってまた上る気にはならない。かといって、止まったところで何かがあるわけでもない。夢の中まで暇なのでは、つまらない。結局はこの階段を下りるしかないのだ。

 この階段が無限であるにしろ有限であるにしろ、僕はただ降りる。時には、飛べるのではないかと思い歩きながら念じてみたが、一向に飛べそうになかった。

夢の中ぐらい自由であればいいのに、なんと現実的なんだ。

そう落胆しながらも僕は階段を下る。踊り場にはごく稀に、窓がついている。そこから覗く景色は、これまで見たこともない程美しい。と言いたいところだが、同じように階段があるだけだった。しばらく見つめていても、人の気配はなかった。

 しばらくすると、ボタンがあった。赤いボタンがぽつんと壁についていた。今回は珍しく張り紙がなかった。それだけで、なぜかホッとした気持ちになる。その赤いボタンに目をやる。

緊急時以外使用禁止。

そう書いてあったら、やむなく押さないであろうが、何も書いていないので押すことにした。もし書いてあっても緊急時とみなして押しただろうが。結果何が起こったかというと、何も起こらなかった。数分ぐらい待ってみたが何も起こらなかった。もちろん時計もないので感覚的にだ。

 しかたないので階段を下りる。コツコツと自分の靴音だけが反響し耳に届く。することもないので、リズムを取りながら降りる。

トントントン・トントントン・トントントン。

右左右、左右左と一拍休みながら階段を下りる。時折七拍子も入れる。20段では中途半端で7拍子が終わる。そこで興がさめる。リズムを取るのがつまらなかったわけではない。それも一応はあるのだが、問題は張り紙の文字が変わっていたからだ。

『ここで折り返し。進も戻るも折り返すもあなた次第』

そう書いてある。振り返って階段を見ると上りの方はすでにぼろぼろで上れそうにもない。結局は進むしかないのだ。この先に何があるのかはわからない。何度も見た夢だがこの先は分からない。いつもここで目覚めてしまうから。いつかたどり着けるのかもしれない。そこに何があるのかわかるのかもしれない。

そう思って、一歩踏み出す。そして僕の意識は消えて行った。

お題をください。かけるかわかりませんが

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