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パーティーを追放された付与術師の俺。なぜか元仲間に嫌がらせしても喜んでいるんだが?  作者: k-ing☆書籍発売中


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10/10

10.付与術師、ペットを飼う

 俺はコボルトにある人達に嫌がらせをして欲しいことを伝えると大きく頭を振っていた。


「ボスの命令は絶対……ボスの命令は絶対……」

「コボルト?」

「ハイ! イエッサアアアァァァ!」


 若干聞いているのかわからないが、本人が返事をしているのなら大丈夫だろう。

 なぜか俺と目を合わせるとビクビクしているのは気になるが……。


「じゃあ、ちょっといつ来るかわから――」

「ねぇ、ほんとにこの辺にコボルトがいるの?」

「ああ、確かこの辺だぞ?」


 ちょうど良いタイミングで、新人冒険者のパーティーが森の中を歩いていた。


「試しにあのパーティーに嫌がらせをしてもらってもいいか――」

「ハイ! イエッサアアアァァァ!」


 コボルトは背筋をピシッと伸ばした。


「ボス! 行ってきます!」


 コボルトは駆け足で冒険者に向かって走って行く。

 どこか目の前にいるコボルトに頼むのを間違えだったような気がしている。

 ちゃんと話を聞いているのかもわからないし、俺の中の何かが気をつけろと言っている。


「あの体格だと四足より二足の方が走りやすいのか?」


 元々コボルトは二足歩行で移動するが、大きな体格であれば四足歩行の早い気がする。

 それなのに俊敏に手足を動かす姿は、人間味に溢れていた。



 俺はひっそりと木に隠れながらコボルトの様子を伺っていた。

 本当に嫌がらせができるかどうか、わからないため確認が必要だった。

 いわゆる試験(・・)のようなものだ。


「どこにコボルトなんて――」

「グオォォー! 拙者コボルトだ!」


 コボルトは勢いよく回転しながら冒険者達の前に登場した。

 しっかりとポーズも決まっており、そこは合格点だ。

 いかにも強そうな雰囲気が醸し出されている。


「おい、こいつなんなんだ……」

「拙者コボルトだ!」

「何こいつ……コボルトってそもそもそんな知能が低いわよね……」


 冒険者達はいきなり現れたコボルトに困惑しているようだ。

 よし、その調子だ!

 もっといけ!


「拙者コボルトだ!」

「……」


 コボルトはポーズを決めたまま、冒険者達と見つめ合う。

 次第に冒険者達は見慣れたのか、仲間同士でアイコンタクトしていた。


「ねぇ、依頼の達成にはコボルトの耳が必要なのよね?」

「拙者……」


 コボルトは大量の汗を流してこちらをチラチラと見ている。

 もっと驚かし方のバリエーションはないのだろうか。

 そんなにこっちを見たら俺の存在がバレるだろ!

 手を必死に振って冒険者の方へ視線を向けるように指示をする。


「ああ、だから早くこいつを倒そうぜ」


 気づいた頃にはコボルトは冒険者に囲まれていた。


「へへへ、良い子にしてたら少し痛い思いをするぐらいだぜ。なぁ?」

「そうよ! しかも、こんな大きなコボルトだと取れる魔石も売ったら高そうね」

「この毛も素材にしたら良い防具が作れるんじゃないか?」

「ははは、それはいい考えだな」


 冒険者三人に囲まれたコボルトは身動きが取れなさそうだ。

 その場で座り込み脚を抱え込んで小さく丸まっている。

 時折、人間に見えるのはなんでだろうか。

 

「人間怖い……人間怖い……」


 ただ、少し可哀想に見えてきた。

 女は武器を取り出して、コボルトに刃を向けた。


「可愛い子ね。人間に怯えてこれなら簡単に――」


――パキッ!


「おい、お前の剣を真っ二つになってるぞ?」

「そんな……なにこれ!?」

「襲撃だ! 辺りを警戒しろ!」


 流石に可哀相に思った俺は近くにあった石を女が持つ剣に当てると勢いよく折れた。

 ちゃんと武器の管理をしないから簡単に折れるんだぞ。

 まず依頼を受ける前に冒険者として武器の管理ができるようになってから、討伐依頼を受けるようにしなさいとアドバイスを送りたい。


「おい、早くコボルトを――」


 違う男がコボルトに剣で切りつけようとしていたため、ためらわず石を投げた。


「うげっ!?」


 今度は腹部に命中し、その衝撃で男はそのまま崩れるように倒れた。


「モンブー!?」

「チクショー! このままじゃ全滅するぞ!」

「嫌っ……私はこんなところで死にたくないわよ! 依頼なんてどうでもいい。そもそもこんな大きな厄病コボルトなんて知らないわよ」

「今はモンブの命が優先だ!」


 泣き叫ぶ女を立たせると、もう一人の男は倒れた男を抱える。

 そのまま向きを変えて女とともに町に帰って行った。

 無事にコボルトは助かったようだ。


「おい、コボルト大丈夫か?」


 声をかけてみるが、まだ震えている。


「人間怖い……人間怖い……」

「おーい!」

「ふぇ!? ボス?」


 怯えていたコボルトの耳元で何度も話しかけると、やっと俺の顔を見た。


「人間は?」

「ああ、なんか帰って行ったぞ」

「えっ? ボスが追い払ったのか?」

「んー、そうなるのかな」


 コボルトの顔は自然と明るくなり、キラキラした瞳で俺を見ていた。

 まさかこれはひょっとして……。


「ボス! 拙者一生付いてきます!」

「いや――」

「何を言われようとも拙者が付いていきます!」


 あまりのしつこさに俺は諦めることにした。

 どうやら俺はコボルトを仲間にしたようだ。


「もうわかったわ……」


 コボルトは嫌がらせ試験には不合格だな。

お読み頂き、ありがとうございます。

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