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どうやら悪役令嬢の本命は俺のようです  作者: たまにわに
第三章 つぎはお嬢さま自ら攻めてみるようです
44/50

第44話 どうやら俺はやっぱり場違いなようです

「リゼット貴様ァッ!」


 俺が静かに決意を固めていると、王子が不意に剣を引き抜いた。おいおい、婚約破棄どころの騒ぎではなくなってきたな。

 リゼットの対応をうかがっていると、まるで彼女以外その目には映っていないかのようにソフィアへと向けて歩き出し、それを見た王子が顔を真っ赤にして、


「ソフィアに近づかせるな!」


 引き抜いてこそいないが、剣に手をかけ、周囲をにらみつけるように警戒する護衛へと号令をかけた。


「何をしている! さっさと運び出せ! 必ず助けろ!」


 ソフィアを背中に護衛とともにリゼットの前に立ちふさがる王子。その背後で大所帯で来てよかったと言わんばかりに二つに割れる護衛。ソフィアを抱えて小走りで会場をあとにしようとする護衛に合わせて、リゼットが足の向きを変え、すかさず追いかけようとしたところで、


「捕らえろ! 反逆者(はんぎゃくしゃ)だ!」


 王子が背中を向けた丸腰のリゼットへと隙ありとばかりに一人で突っ込み、驚くことに勢いよく剣を振り上げた。

 本気か? 俺がたぶん大丈夫だろうと見守っていると、リゼットはまるで背中に目でもついているかのように王子の振り下ろしを半身になるだけで避け、同時にひじを顔面に叩き込んで蹴とばし、剣を奪い取った。


「邪魔しないでください……」


 ひざを折り、痛みに悶える王子とそれを上から無表情で見下ろすリゼット。事態の深刻さが増したことで、高みの見物を決め込んでいた貴族たちが傍観者(ぼうかんしゃ)にすらなりたくないといっせいに出口へと向かって走りだし――その陰で護衛がリゼットを取り囲み、剣を引き抜いたところで、なぜかアメリアが俺によりかかってきた。


「うぅ……カイル、止めて、このにおいは……」


 アメリアは要領を得ない。それどころか見る見るうちに顔を青くして、ついには気持ち悪そうに口元をおさえ、それでも抑えきれなかったのか、俺の足元にというか、俺の足を狙いすましたようにゲロを吐いた。


「吐きそう……」

「おい、それは吐く前に言え?」


 俺が言いながらアメリアの背中をさすると、吐いたことで少し気分が楽になったのか、相変わらず顔は青いままだが、


「四の五の言うな。血の海になってもいいのか」


 いつもの口調を崩してまですごんできたので、


「情報」


 と動き出せないでいる理由を簡潔に告げて、同時に動くに値する理由を求めた。するとあろうことか、俺の借り物の給仕服で口元をふきながらアメリアが、


「毒のにおいはしなかった」

「あとは任せろ」


 俺はアメリアの肩をポンと叩いてその重い体をコンにあずけ、逃げ出さずに残った貴族と給仕の合間を縫うように、会場のある一点を目指して足取りを比喩(ひゆ)ではなく、本当に弾ませながら、鼻歌まじりに歩きだした。


「カイル・シュヴァリエ……」

「カイル・シュヴァリエ?」

「カイルさん……」


 声が声を呼び、注目が俺に集まってくるのを感じる。無論、そうなるように場違いだと分かった上であえて鼻歌を口ずさんでいるのだが、肝心の手は止められただろうか?

 リゼットのほうをチラと見ると、護衛が躊躇(ちゅうちょ)したのか、もしくはリゼットが踏み込ませなかったのか、王子だけはその足元から回収されたようだが、いくらか冷静になって、俺の動向を見守ってくれているようだった。

 そして会場中の耳目(じもく)を集めに集め、目的地であるソフィアが倒れていた場所で足を止めた俺は、


「アルフレッド王子殿下! それからこの場に残られた胆力(たんりょく)のありそうな貴族の皆さん! ついでに逃げられないから仕方なく残ったであろう給仕の皆さん! あとは盛大に勘違いしていそうな護衛に、多勢(たぜい)無勢(ぶぜい)なお嬢さん! 俺を見ろ!」


 床にひざと両手をついて四つん這いになり、割れたティーカップの破片を見下ろして、そういえばと顔を上げた。


「コン! ありがとな! 学園に戻してくれて! それからアメリア! 俺がもし死んだら頭からバリバリ食ってくれていいぞ!」


 そのときは漏れなく毒入りだろうけどな、と最後にニヤリと笑って、コップ一杯分ほどの水たまりに、ええい、ままよ! と口をつけて吸い上げた。

 ずず、ずずず、ずず……。


「う、こいついったいなにを」

「カイルさん! やめてください! 破片まで飲んでしまいます!」

「破片?」

「ソフィア様が落とされたティーカップか!」


 ご名答、と俺はすべて飲み干して立ち上がり、もし即効性(そっこうせい)ではなく、遅効性(ちこうせい)だったらあとで後悔しそうなくらいのしたり顔を浮かべて、


「どうやら白湯(さゆ)が原因ではなさそうですね?」


 また挑発していると受け取られても面倒なので王子本人ではなく、代弁者になってくれるであろう、リゼットを囲む護衛へと目を向けた。


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