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どうやら悪役令嬢の本命は俺のようです  作者: たまにわに
第二章 つぎは妹を攻めてみるようです
13/16

第13話 どうやらお嬢様はご不満のようです

「え?」


 リゼットは不意を突かれたような顔で俺を見下ろす。その顔は晴れているわけでもなかったが、曇っているよりかはまだマシなものだった。

 やれやれ、中途半端に驚くくらいなら、いっそのこと尻もちをつくくらい驚いて見せて、ついでに暗い気持などきれいさっぱり忘れてしまえばいいのに。そう思ったが、まあ、思っただけだ。

 俺は頭をかいて、盛大にため息を吐いた。


「目的、忘れたわけじゃないんでしょう?」

「それは……」


 またリゼットの顔が曇りかけたところで、それはもういいと、俺は陰鬱(いんうつ)な空気を吹き飛ばすように再度、盛大なため息を吐いた。


下馬評(げばひょう)に開きがあればあるほど負けたときの衝撃も大きい、悲惨さが際立つ。それも俺の評価が底上げされて、効果が薄れたのは確実。となると現時点で目的はまだ達成されていない。俺の予想、外れてます?」

「……当たっています。二人の関係に変化はありません」

「でしょうね」


 俺は平静を装いながらも、当たっててよかったーと、内心で安堵する。まず間違いないと状況から確信していたものの、外れて恥ずかしい思いをする可能性も、リゼットの秀才ぶりを考えれば、ゼロではなかったからだ。それにこれまでのリゼットのことを思えば、まだ俺をからかっているという線も残っている。

 というか、落ち込んでいるように見えて、俺にそうなのではないか? と余計にかんぐらせるあたり、実にリゼットらしいというか、これまでのリゼットの俺に対する仕打ちが思い出されるというか。


「まっ、あんまりにも悲惨に映ると、同情や憐れみから逆に関係が強固になってしまうことも考えられましたからね。何なら負けたけど惚れ直したわ! なんてことも現状を鑑みれば、あり得たわけで。今は変化なしを喜びましょうよ。で? どうします? 諦めます? 俺は大歓迎ですけど、もし次があるのなら、できれば俺の首がかからない方法でお願いしたいところですけどね」

「次、ですか……」


 そう呟いたリゼットは不意にその口元をかすかだが、確かにほころばせた。


「差し出す必要のない首を差し出したのは、貴方自身ですけどね。でも安心しました。私は貴方が、今回の件で私に見切りをつけるのではないかと、目的を達成できなかった私の力不足に幻滅したのではないかと、そう思っていましたので」


 なんだそりゃ、と俺はもともと入っていなかった力が、全身から抜けていったような気がした。

 もしかしなくても、こいつはそんなことを考えて、顔を曇らせてたのか?


「そもそも幻滅するほど俺はリゼット嬢のことを知りませんよ。あと一応これでも学園に留めてくれたことに関しては、それなりに感謝してるんですよ? それに一度わたってみて分かりましたが、ここまで丁寧に作られているとなると――」


 俺は言いながらアルフレッド戦のことを少しだけ振り返る。そう、なぜ俺が選ばれたのかについてだ。それも演出の一つと考えれば簡単に説明がつく。

 リゼットは貴族(きょうしゃ)平民(じゃくしゃ)という分かりやすい構図を作りたかったのだろう。ただ平民で騎士になるか、なろうとしているようなやつは総じて強いか、強すぎる。そこでアルフレッドと同じ騎士候補生で、実力で進級したわけではない俺に目を付けた。しかしそれではつじつまが合わない。

 『実力で進級したわけではない俺』などという、本来ならばあり得ない存在を作り出したのは、他でもないリゼットなのだから。

 要するにリゼットはこの件について、俺が進級する前から考えていたことになる。そう、一度ダメだったからと言って見切るなんてとんでもない。その熱量、行動力もそうだが、理想を現実にする力、実現力とでもいうべき力は本物だ。


「たとえ橋の名前が危ない橋だったとしても、俺でなくても気にしないと思いますけどね。まあ、絶対に崩れない橋なんてないでしょうから、亜人に会いたくなった遠慮なくそっちに行かせてもらいますけど。それまでは付き合いますよ」

「ダメです」


 リゼットは拒否権の次は俺の選択権を取り上げ、


「王子がダメなら次は妹です。貴方の魅力で惚れさせてしまいましょう」


 なんてぶっ飛んだことを言い出したところで、俺はそっと腰を上げた。亜人は確か……南だったっけ?


「まさかとは思いますが、逃げる気ですか?」

「まさか」


 俺は肩を(すく)めて、顔をのぞき込んでくるなとリゼットに背中を向けた。


「目の前で橋が崩れ落ちたので、迂回先を探しているだけですよ」

「自信がないんですか?」


 自信? 俺はまた分かり切ったことをと振り返り、


「相手は一国の王子ですよ? 何もかも――」


 負けている自信がありますけど? そう口にしようとして、リゼットのあまりにも真剣な眼差しに、思わず口を閉じた。


「私から見れば――」

「分かった、分かった。いや、分かりましたよ。やればいいんでしょう?」


 逃げられないと悟った俺は降参だと、ため息まじりに両手を上げた。そういえば俺には拒否権がないんだった。これからはそこに選択権も加わることになるのかもしれないが。

 だから取ってつけたような(こび)なんて売るな。声にはしなかったが、顔にははっきり出ていたのか、リゼットの顔はなぜか不満そうだった。


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