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こちらギルドの調査員 ~冒険者じゃない俺の方がよっぽど大変なんだが?~  作者: 月城 葵
冒険者じゃない俺の方がよっぽど大変なんだが?

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第17話  命懸けの報酬


 俺は自宅の庭で頭のおかしい聖職者から、これまた有難くもないイカレた説教を聞かされ――うんざりしながら庭を後にした。


 森を抜ければ、外はすっかり夜明け前の景色だった。

 冷たい空気が肺にしみて、やけに生きてる実感がある。


 ……徹夜で死闘のあとに実感なんざ、いらねぇんだけどな。


 儀式の余波も気になるところだが――「守りは任せろ」とか言ってたんだから、任せてもバチは当たらないだろう。


 それでも、やっぱり気になってしまうのが俺の悪いところだ。

 そうぼやきつつ、馬を繋いである場所へと足を向けた。


「おっ! ちゃんと待ってるじゃねぇか」


 この馬は賢い。それはもう、ナックよりは賢いんじゃないかと思うくらいには賢い。

 たてがみを軽く撫でてから、その背に跨る。


「んじゃ、帰るか」



 朝日を横目に、ペテルを目指して馬を飛ばす。

 街の輪郭がぼんやりと見え始めた頃――異変に気付いた。



 城門前に、やけにでかい影がいる。



 ……おかしいな。


 残業で徹夜して、出張に行って帰ってきたら、後処理が待ってました――そんな気分だ。



 ◇ ◆ ◇




 城門前のデカい影。近くまで来るとよくわかる。


 鈍重そうに動くその巨体は、朝焼けの光に照らされてもなお異様だった。


 皮膚はまだらに裂け、肉塊のように膨れあがり、まるで人間の手足や胴体を無理やり繋ぎ合わせたかのような……。


 吐き気が込み上げる。

 見間違いようがない。おそらく儀式の余波で生まれた化け物――フレッシュゴーレム。


 吐き気をこらえながら、俺は身体強化した目で遠巻きに観察する。


 城門は固く閉ざされたまま。

 門の前での戦闘は避けているらしい。


 代わりに城壁の上から警備隊が応戦していた。

 火炎瓶が次々と投げ込まれ、黒煙と焦げた臭いが辺りに広がる。


 さらに、城壁の上から小型のバリスタが唸りを上げる。

 打ち出されたのは大型の矢じゃなく――分厚い縄で編まれた捕獲用のネットだった。


 頭から被ったネットが邪魔なのか、フレッシュゴーレムの足が止まった。

 絡まる縄を取ろうと、腕をばたつかせる。


 ……やっぱり、知能は低いんだな。


 その時、城壁の上から影が躍り出た。

 ガーの親分が両手斧を片手で担ぎ、そのまま豪快に振り下ろす。


 ゴーレムの腕が音を立てて吹っ飛んだ。


「おいおい……豪快すぎるだろ」


 そのまま地面に着地した親分が迷いなく斧を振るい、ゴーレムの足を切り飛ばした。

 巨体が体勢を崩し、ドスンと地面にすっころぶ。


 そこへ、マルセル課長の詠唱が重なった。

 何か呟いた次の瞬間、地面から馬鹿でかい土の大槍が突き出す。


 ドゴン、と鈍い音を立てて、ゴーレムの体を貫いた。

 ずしりと重たい巨体が痙攣し、地面に縫いとめられる。


 虫の息になったところへ、さらに城壁の上から火炎瓶の雨が降り注ぐ。

 爆ぜる炎と黒煙。


 ……あ~あ、焼肉ってレベルじゃねぇぞ。


 課長と親分がここにいるってことは……まぁ、他の連中も片付いたってことだろう。


 戦闘終了を確信した俺は、深呼吸ひとつしてから――ゆ~っくりと城門へ近づいた。


 城壁の上に、目ざとく俺の接近に気付いた馬鹿がいた。

 えらくでかい声で叫んでるのがわかる。


「アル~~!」


 ……ナック。恥ずかしいからやめなさい。



 フレッシュゴーレムが燃えカスになるのを横目に、城門から招き入れられる。


 門を抜けた瞬間、鼻を突く焦げ臭さがさらに濃くなった。


 通りの向こうに、もうひとつのデカい影が黒煙に巻かれて燃え上がっている。


 ……もう一匹いたのか。


「上手くいったようだな」


 城壁の上から課長の声が降ってきた。


「こっちも地獄絵図だったみたいですね」

「ああ。フレッシュゴーレムが二体と、焼き残しの死体からアンデッドの群れだ」


 ……俺より大変だったんじゃね?


「ギルドに行ってろ。あとで行く」


 へいへい。報告ですもんね。


 馬を預けて通りを進む。

 あちこちで片付けや消火が続いていて、街全体が疲れ切ってるのがわかる。


 けれど、不思議とみんなの顔は晴れやかだった。


 ギルドの前で、笑顔満点のカエデとテッタが大きく手を振っている。


 元気そうでなによりだ。


 酒場の前では、渋い二人。

 ジョナスとゼットが俺の顔を見て頷いた。


 ……二人ともサンキュー。助かったよ。


 食堂の前で立ち話していたタマ婆さんとハクユウがこちらに気付くと、よくやったとばかりに静かに頷いた。それに俺も手を上げて応じる。


 ……こっちも、随分助けられたしな。



「アルさん、おかえりなさい」

「アル兄、おかえり。今、朝飯作ってくるからな。中で待ってろ!」

「おう、ただいまだな」


 ありがてぇ、ありがてぇ……。


「課長が、アルさんが戻ったら……報告書、書かせておけって」

「……はいはい。やりますよ」



 ◇ ◆ ◇



 テッタの用意してくれた朝食を片手に、報告書を書き殴る。


「アルさん、結局コレル神父ってどこに行ったんですかね?」


 カエデが首を傾げながら、聞いてきた。

 ああ、そうか。森でコンニチハしたの、こいつらは知らないんだったな。


「コレル神父か。あいつな、俺を追ってきて『鍵返せ~』って騒いでたんだが……魔物に連れてかれちまったよ」


 柔らか~く、カエデにはそう伝えた。


 カエデは「うわぁ……」と引いた顔をしていたが、まぁ事実をそのまま伝えたら卒倒しかねない。これくらいで正解だろう。


「カエデ、受付はいいのか?」

「う~ん、たぶん二、三日は皆さん来ないかと……」

「なんで?」

「依頼が街の掃除しか……ないので」


 うん。そりゃ来ないな。

 いや、待て。冒険者が受けないなら……俺たちの仕事になるんじゃないか?


「後始末は俺たちか? さすがにきついぞ」


 そうぼやいたところで、課長が戻ってきた。


「ああ、大丈夫だ。傭兵団の連中にやらせる」


 いえ~い。課長サイコ~!


「いいんですか?」

「あいつらは契約違反だ。追放する。その前に、やることやってからだがな。契約金も倍返しだ」

「追放って……ペテルの戦力は? どうするんです?」


 肩をすくめて課長が言う。


「どうせ団を解散して、新しい団を立ち上げて登録する気だろ、あいつら」


 あ~、やるね絶対。


「だがな、今回は個人での返済に切り替える。団で解散しようが、借金は残るぞ。……ざまぁみろだ!」


 実にいい笑顔だな、課長。


「で、課長。議会の連中は?」

「あいつらは市民の敵になったんだ。議員でいられるわけないだろ」


 そりゃそうだわな。


「それより報告だ。アル」

「へいへ~い」


 俺は霧の森であったことを課長に報告した。

 まぁ、もちろん、虚無を召喚したことは内緒だ。


「結局、いつもの狂信者ってことか」

「そうですね。だいぶ手の込んだ事をしてくれましたけど」

「そうだな……あとは正教会の出方だな」

「正教会ですか?」


 ……正教会が何するんだ?


「あのクソ神父が正教会に入り込んでたんだ。正教会が、躍起になって狂信者排除にのりだすぞ」


 ……ここでも一波乱か。


「だが、五年に一度の式典も、もう終わる。ギルマスが戻れば、大丈夫だろう」


 そのギルマスって、俺一年以上在籍してるけど、一度も見てないんだが……。

 本当に大丈夫なのか?


 ……まぁ、課長が信頼してるなら平気か。



 ◇ ◆ ◇



 報告を終えると、俺は自由の身になった。


 自由最高!

 これでやっと、ゆっくり寝れるぜ。


 ……でもおかしいよな。ゆっくり寝るために仕事してるんじゃねぇっての。


 そんなことを心の奥でぼやきつつ、テッタの食堂へ足を向ける。

 もう昼飯食って、寝るに限る。



 そんでもって翌日。俺は晴れて休日を手に入れた。


 なんと十日も。

 課長からすれば、それに値する働きだったのだろう。


 だが、よくよく考えてみると、霧の森から命懸けで任務をこなして帰った報酬が、休み十日分ってどうなんだ?


 冒険者なら金貨の山を抱えて帰ってる案件だぞ、これ。

 傭兵なら一週間は酒と女で豪遊だ。


 俺? 布団と枕が豪遊先ってわけだ。


 なので俺は決めた。

 休日初日。俺は旅に出ることにした。


 別に本気で各地を回る気じゃない。

 ただの帰省だ。



 課長に許可をもらい、十日で帰る予定。

 仲間に挨拶を済ませて、いざ実家へ。


 南門をくぐり、街道を進む。

 夏の匂いが濃くなってきて、草木は青々と茂り、道端には小さな花が揺れていた。


 ……前に帰ったのは三年前か。


 母ちゃん、ちゃんと飯食ってんのかな。

 それだけが心配だ。


 俺がいなくなった途端、味付けなしの素材をワイルドにむさぼってる生活に戻ってなきゃいいが……。


 ……ネギとしめじは庭で採れるだろ。あとは……。


 ああ、母ちゃんがまともに食う食事ってな、なぜか蒸し鶏なんだよ。

 初めて作った時にな、妙に気に入ったらしくて、そればっか食うんだ。


 ……味覚が変わってなきゃいいけどな。


 服も……洗濯してるよな?

 またカビだらけになってたら、俺、発狂する自信があるぞ。


 そんなことを考えてるうちに、南の村が見えてきた。


 最近よく、この村を通るな。とういか、ワイルドボアはもう来てないよな?


 通るついでに、家畜小屋の様子を見る。

 柵は新しく作り直されており、壊れた形跡はない。


 ……大丈夫そうだな。


 ここでも魔道具騒動があったんだもんな。

 なんだか随分前のように感じる。


 丁度いいから、姉ちゃんに、この肩の忌々しい印のことも聞いてみるか。

 姉ちゃんなら、なんとかできそうな気がする。


 別に姉ちゃんって言っても、血は繋がってない。

 自称姉だ。「お姉ちゃん」って呼ばないと拗ねるんでな。


 実は兄もいる。もちろん自称兄だ。

 すげ~寡黙な人でな。俺の剣の師匠みたいなもんだ。


 まぁ、おいおい話すさ。


 俺は皮袋を背負い直すと、森を進み、霧の森の入り口に近付く。


 ……こっからは気合入れないとな。


 この時期の森は緑が濃い。

 枝葉が茂りすぎて、昼間だってのに薄暗いくらいだ。

 草と湿気が肌にまとわりつき、虫の声が遠くから響いてくる。


 けれど、一歩踏み込めば空気は一変する。

 霧が地を這うように広がり、じっとりと冷たい気配がまとわりついてきた。


「一気に行くか」


 ちんたら二日もかけてたら、せっかくの休みが無駄になりそうだ。

 身体強化を最大まで引き上げ、一気に駆け抜ける。


 やっぱり、霧の森の中は調子がいい。

 普段の倍以上の魔力が身体を巡るのがわかるし、体もずっと軽い。


 ……何が違うんだろうな?


 まぁ、考えても答えは出ないんだけど。


 速度を落とさずグイグイ進むと、森の奥から懐かしい鳥の鳴き声が聞こえた。


 そういうと雰囲気が良さそうだが、ここは霧の森。

 鳥だって、普通じゃない。


 見上げれば、銀の羽根を持つ魔鳥――シルヴァ・クロウ。

 群れで行動し、その鳴き声は人や動物に幻覚や頭痛を引き起こす厄介な魔物だ。


 ……こいつのせいで、昔はよく迷子になったもんだ。


 対処は難しくはない。

 聴覚を遮断してしまえばいいだけだ。


 ただし、間違っても慣れてない奴はやっちゃいけない。バランス感覚がおかしくなって、余計に危険だからな。


 すっと、自分の聴覚を遮断する。

 音が一切聞こえない、無音の世界が広がった。


 そのまま速度をさらに上げ、森の奥を目指す。


 目に見えて、陽の傾きがわかる頃。

 足の裏に強烈な振動を感じて、立ち止まる。


 慌てて聴覚を戻すと、耳に飛び込んできたのは地中を突き進む、ゴリゴリと嫌な音だった。


 ……モルク・ワームか?


 こいつは……デカいミミズって言えばわかりやすいか。

 まぁ、三メートルはあるんだけどな。

 いや、マジで初めて見た時は、キモすぎてトラウマもんだったぜ。


 即座に手ごろな木に飛び移る。


 あいつは、地上の振動に反応して襲ってくる。

 木の上なら、ほとんど気付かれない。

 どこかに行くまでは、ここで待機だ。


 ……丁度いいから、休憩すっか。走りっぱなしだったしな。


 背負い袋をあさって、飯を取り出す。

 テッタの唐揚げは土産だから……これしかないか。


 黒パンを片手に、辺りを見渡す。


 この辺も変わってねぇなあ。

 見渡す限り、森、森、森。……まぁ、全部森だ。


 とはいえ、木は木でも、実はみんな結構違うもんだ。

 それを目印に進んでるんだけどな。


 方向感でいえば、実家の場所はすぐわかる。


 なんでかって?


 魔力感知をして、こんなに離れててもわかるほど、馬鹿デカイ魔力がある方向に向かえば――だいたい家に辿り着く。


 な、簡単だろ。


 さてと、ミミズちゃんは居なくなったようだ。


 遠くで地竜の鳴き声が聞こえたが、こっちには来ないだろう。


 あいつらは知性がある。

 わかっているから、魔女の縄張りには入って来ない。


 ……身の程をわきまえてるんだよな。


 魔鳥の鳴き声も、もう聞こえない。


 ……このまま行くか。


 辺りはすっかり日も落ち、夜の森が近づいてくる。


 夜は魔物も活発になり、危険だ。

 この辺りまで来ると、もう魔物界の強者がゴロゴロしてる危険地帯。


 上級冒険者のパーティーを、即座に壊滅に追い込むような魔物だらけだ。


 伝承に登場するような魔狼の遠吠えが響く。

 異様にデカイ影が横切り、見上げれば大きな飛竜が夜空を舞っていた。


 視線を戻し辺りを見渡せば、一見、幻想的にも見える美しい光――だがその正体は幻魔の類だ。


 ……伝説のオンパレードだな。


 例外はあるが、知性のある魔物ほど俺に襲いかかって来ない。


 なんでだろうな。

 魔女の知り合いだからなのか……それは不明だ。

 だが、何か報復を恐れているような、そんな感じがする。


 知性があると言えばドラゴンだが……あいつらは魔物なのか、別の生物なのかは、いまだにはっきりしてない。


 機会があれば、姉ちゃんにでも聞いてみるか。


 ……そろそろかな?



 見慣れた景色。魔女の庭だ。

 おかえりとでも言うように、木々が道を譲るように左右に分かれた。


 霧が晴れ、ぽっかりと空に穴が開いたように月明かりが差し込む。


 辺りは明るく、その先に――懐かしい我が家の灯が見えた。


 古びた一軒家――いわゆる魔女の小屋ってやつだ。


 石と木を雑に組み合わせた壁は、ところどころ苔むしていて、屋根の藁はすっかり色あせている。煙突からは、かすかに白い煙が上がっていて、人が住んでる気配だけは確かにあった。


 窓辺には乾かされた薬草がぶら下げられ、扉の横には大小さまざまな骨だの牙だのが飾りのように吊るされている。


 知らない奴が見たら、まず間違いなく「呪いの家」認定だな。


 ……まぁ、俺にとっちゃ懐かしい実家なんだけど。



 扉の前で深呼吸をひとつ。

 胸の奥に溜まっていた緊張と期待を吐き出すように、ゆっくりと扉を開ける。


 そこに広がっていたのは、あの日のまま、何一つ変わらない光景だった。


 棚に雑然と並ぶ古びた本、窓から差し込む柔らかな月明かり、そしてその中心で椅子に腰かけ、本を開く母の姿。


 懐かしい匂いが鼻をくすぐり、胸の奥がじんわりと温かくなる。


 三年の歳月など、まるで幻だったかのように。



「ただいま。母ちゃん」



 呼びかける声は、自分でも驚くほど震えていた。

 母ちゃんはパタリと本を閉じ、顔を上げると、変わらぬ優しい微笑みを浮かべた。


「おかえり。アル」



 その一言に、胸の奥に張り詰めていたものがふっと解ける。



「夕食は……蒸し鶏がいいのぉ」


 戻ってきたのに、俺がもてなす側なのはどういうこった。


 まぁ、いつも通りなんだけどな。



 ……ほんっと、何ひとつ変わってねぇな。



 荷物を置いて、庭へ食材を取りに行く。

 いつもと変わらない料理当番。



 さて、ネギはどこだ。

 












よし! 休暇だっ! 

  (完)



ここまで拙い文を読んでいただきありがとうございます!


「面白かったなぁ」

「続きはどうなるんだろう?」

「次も読みたい」

「つまらない」


と思いましたら

下部の☆☆☆☆☆から、作品への応援、評価をお願いいたします。


面白かったら星5つ。つまらなかったら星1つ。正直な気持ちでかまいません。

参考にし、作品に生かそうと思っております。


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内容は盛り上がっても 文章にもりあがりがなく、その不自然さに 吐きそうになった。 一応 最後まで読んだけど。 ほかの投稿作一覧を見て、もしかして AIを補助的に使ったのかなと思った。  ならば そ…
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