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第97話 隠し部屋の中の隠し部屋

「やった! 隠し部屋だ!」


 アキミが飛び上がって喜んだ。アオたちは、ついに第3階層の隠し部屋を見つけたのだ。魔法陣の真ん中から伸びる通路はこの塔のどれとも違っていて、異様な雰囲気があった。


「なにこれ、何かの基地? けっこうSFチックよね?」

『古代文明の、遺産・・・』


 つぶやいたエスタリスに全員の視線が集中した。


「古代文明? 何そのロマンあふれる言葉は?」

『ワタクシたちの世界にはあったのです。かつて栄え、そして滅んでしまった文明があって、その存在を表してくれる遺跡が、いくつも。おそらくこれはその場所の一つ。この塔を作ったときに巻き込んだのが、そういったダンジョンの一つかもしれませんわ』


 話を聞いたアオは、現れた階段を下りていく。ケイが慌てて手を伸ばしたが、あきらめたように後に続いてくれた。


「うし! じゃあ気合い入れて探索すっか!」

「シュウさん待って! 何かいる!」


 意気込むシュウをたしなめるアキミ。と、同時だった。通路の奥から現れた3体の魔物がこちらに腕を向けてきた。


「い!? いきなりかよ」

「下がって! 私の後ろに!」


 シュウと入れ替わるように前に出たパメラが、盾を前にかざした。そして響き渡る発砲音。魔物は指の先からマシンガンのように弾を発射したが、それらはすべて遮られた。パメラの盾から展開された障壁が防いでくれたのだ。


「やっぱり、いたね! ゴーレムみたいな魔物!! えっと、名前はオートマタ? 指が銃みたいになるなんて、なんか一昔前のマンガみたいだけど!」

「障壁をうまく使ってね! ものすごい威力があるわけじゃないけど、撃たれたらただじゃすまない!!」


 それにしても、さすがはパメラだった。魔物は一昔前のロボットみたいな外見だが、マシンガンのような銃撃は侮れるものではない。タンク役のパメラが居なければ、相当なダメージになっていたに違いなかった。


「っしゃあ! いくぜ!」

「がう!」


 飛び出したのは同時だった。パネラの影に隠れていたアオとシュウが、魔物との距離を一瞬で詰めていく。勢いよく振り下ろされたアオの爪が魔物を切り裂き、シュウの突きがもう一体を吹き飛ばす。シュウが攻撃した魔物は吹き飛ばされただけで倒れ込むことはなかったが――。


「うふふ! この体でもあなたくらいなら!!」


 エスタリスがとどめとばかりに追撃する。シュウの攻撃をかろうじてこらえた魔物だったが、雷撃に焼かれ、黒焦げになって倒れてしまう。


「よし。今度こそ」


 3体目の魔物の頭には矢が突き刺さっていた。魔法を込めた矢によって、最後の魔物も機能を停止してしまう。


「にしし。今回は連携がばっちりだったね。新種の魔物も無傷で倒せたし」

「だな。まあ、銃撃には注意しなきゃいけねえけどよ。ま、この面子でもなんとかなるレベルってことだ」

「獣を使う魔物がいるって予測できたからね。最初から備えていれば何とかなるよね」


 アキミとシュウに同意するように頷いた。パメラもなんだか自慢げだ。


 この階層のボスは、全身に銃火器を装備したゴーレムだ。だからこそ、道中には機械のような敵が出ることは予測できていた。銃で狙われた際にどういう動きをするかは事前に話していたのでそれが役立った形になる。


「でも、こういう敵が出るのなら気を引き締めないと。油断できる相手じゃない」

「そうね。今回はエス子も居たし無傷で倒せたけど、次はどうなるかわからない。油断せずに行きましょう」


 アシェリの言葉に頷き、もう一度気合を入れ直したアオだった。



◆◆◆◆



 通路を奥へ奥へと進んでいく。そして見かけたのは、焦げ付いた跡と、乱暴に開かれた扉だった。


「嫉妬の連中はもしかしたらここに入ったのかもしんねえな」

「おそらくね。気配があの連中と同じだった。それに、ほら」


 アキミは部屋の中を指示した。一見すると何もないように見えるが、指さすほうをよく観察するとほこりの乱れが幾重にも残っていた。


「えっと、ここは?」

『古代文字で、武器庫とありました。もしかしたらここに何かが置いてあったのかもしれませんわ』


 エスタリスに全員の視線が集中した。


『古代遺跡から見つかるのは魔道具が多いですわね。見つかるのは、あなたたちの世界で言う銃みたいなものが多いかしら? さっきの魔物が使っていたあれです。魔力を自動的に弾に変換し、トリガーを引くと矢のように弾が飛び出すという武器』

「これのこと?」


 アキミが懐から銃を取り出した。手入れされた銃を見たエスタリスは嬉しそうに翼を羽ばたかせた。


『そう! それですわ! それに魔力を込めれば弾が飛び出すのです! まあ、一時は広く普及した武器ですが、今はちょっと下火ですわね。対応する障壁を張ればなんとか防げますし、これには重大な弱点もある。ですが、確かにそれがないと脅威かもしれませんわね。少ない魔力で攻撃できたりしますし』


 ケイは何かを考えこんでいた。


「この部屋には銃があった。それは嫉妬の連中たちも見たはずよね。あの人たちはもしかして、ここにある銃器を持ち出していった?」

「!! スマホがあれば、手に持ってなくてもかなりの量を運べるよ! あいつらは10年以上もこっちを探索したと言っていた。もしかしたら、相当量の荷物を運べたりするんじゃない!?」


 アシェリの言葉に、思わず倉庫内を見回した。


 棚はあるが、荷物は何もない。閑散としていて、ごみ一つ落ちていない。誰かがここにあるものを手当たり次第に持ち出したと言われても納得してしまう。


「ど、どうしよう? そうだ! 一度戻ってイゾウ様たちに相談して!」

「そ、そうね。何が起こるかわからないけど、ちゃんと調べたほうが!」


 パメラとアシェリが慌ててスマホを取り出した。どうやら慌てて連絡しようというのだろう。


『アオ。その部屋の奥を調べろ』


 唐突に声が聞こえた。ミツだ。ミツが、体の中からアオを呼び止めたのだ。


「が、がう?」

『その床だけ、魔力の流れが違う。もしかしたら隠し部屋がまたあるのかもしれぬ』


 慌ててミツが示すほうを見つめた。


 何の変哲のない床に見えた。ミツの言っている魔力の流れというのもよく分からない。途方に暮れたように周りを見ていると、ケイが気づいてくれた。


「アオ? どうしたの?」

「が、がう? がうがう」


 慌てたように床を刺し示すと、アキミたちもゾロソロと近づいてきた。


「アオ! おてがらじゃん! この床、なんかあるみたい!」


 アキミがにししと笑うと、床の下をいじり始めた。そして何かを調べた時、穴のようなものが開き、そこに梯子が掛かっていた。


「隠し扉にはしごか? やるじゃねえか!」

「なんか興奮するね! 行ってみよう!」

「あ、あたしが扉を開けたんだからね! あたしが先に見る!」


 シュウとパメラ、そしてアキミが喜び勇んで地下へのはしごを下りていく。アオはケイと目お合わせると、困ったように微笑み合った。


「な、なにこれ!?」


 声が響いた。ケイと頷き合うと、アオたちも急いではしごを下りていく。アシェリも溜息を吐きながらついて来てくれた。


 はしごのさきに下りたアオの目には、立ちすくむシュウたちと、地下室に所狭しと置かれたプラスチックのような箱が目に入った。アキミに至っては箱を開けて、中身を見て絶句している。


「が、がう?」

「武器じゃなかったんだ。防具でもない。なんなんだろうね?」

「うん? 基盤? パソコン関連の部品か?」


 アキミは箱の中身にいぶかし気だった。シュウも困惑したような顔をしている。


 確かに、中にあったのは武器ではなかった。何かのチップのような、部品のような小さな塊が、所狭しと置かれているのだ。


「なんなのこれ。チップ? ゴミ? なんかの部品みたいだけど、こんなの誰も使えないよね?」

『それをすべて我が拠点に運び出せ! 一つも残らずな! 決して誰にも取られるな!』


 声が聞こえた。興奮したようで、少しはしゃいだその声は、ミツのものに他ならなかった。


『これはあの銀髪の差し金か? それともこれが置かれているダンジョンを引き当てたのか? 忌々しい。だが、素晴らしいな! これがあればいろいろできる。ふふふ。そうだ! これを使って!! アオ! この階層を調べるぞ! しらみつぶしだ!』

「が、がう? がうがう?」


 アオの言葉など気にも止めず、ミツは笑い続けたのだった。

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