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第93話 魔線組と海外組と

 第2階層を連れ立って進む。


 パーティーメンバーは少し特殊で、アオとシュウに加え、アイカとカイトとフジノだ。アキミはサナとサトシとともにすでにこの階層をクリア済みで、一緒にボスを倒すことはできない。ケイたちも同様とのことだ。そのため、未クリアのメンバーだけでパーティーを組み、ボスに挑むことになったのだが。


「ちっ。お前らか」

「誰かと思ったらてめえらかよ。手配が解かれたからって疑いが消えたわけじゃねえんだぜ」


 ボスに行く途中で遭遇したのはミナトたち一行だ。彼らは今では魔線組で一大派閥になっており、彼を慕う人物も相当にいるらしい。


「なんだよ。お前らは、第4階層を攻略してんじゃねえのかよ」

「今日は付き添いだよ。お前らと違って俺に教えを受けたいってやつは多くてな。この階層で戦えるよう、指導してやってるってわけだ」


 ミナトは余裕ある顔で見下してくる。しばらく見ないうちに嫌な表情をするようになったと、アオは思った。


「あんた! そんなことしたって中の天族に力を与えるだけってのが分かんないの!? そんなスキル頼りの戦いばっかり広げたって、絶対に意味ないんだから!」

「お前、まだそんなこと言ってんのかよ。俺たちの中に魔物がいるってのはただのうわさだろ? 仮にそうだとしても俺がその力を使ってやってるんだ。それはそれでいいじゃねえか」


 あきれたように、宥めるように言うミナト。一方のアイカはますます腹を立てている。


「まあ、そうまでして俺に食い下がりたいのは分かるけどよ。こう見えても人気だし、俺に相手してほしいって女も多い」

「なっ!! そんなわけないでしょう! 私にはカイトくんがいるし! あんたに男として魅力を感じているわけないじゃない!」


 叫び介したアイカに、ミナトは絶句していた。


「ミナト。行こう。こんな奴ら、相手をすることなんてないし」

「あ、ああ・・・。そうだな。お前らなんかに構っている暇はないし」


 どことなく消沈したように去っていく。彼のパーティーメンバーも彼に続いたようだが、直前で一人の女がこちらを振り返り、キッとアイカを睨んだ。


「あんまり調子に乗らないことね。ミナトに気に入られようなんて、そうはいかないんだから。あとで後悔するよ」


 そう言い捨てるミナトたちを、アイカは心配そうに見送っていた。


「そうじゃないよ。私ももっとうまくやれなかったか後悔すると思うけど、一番後悔するのはたぶん私じゃないんだ」


 アイカが悔やむようにつぶやいたのが印象的だった。



◆◆◆◆



 ミナトたちと別れ、アオたちは迷宮を進んだ。


 さすがのアイカも相当に落ち込んでいるようだ。カイトやフジノが必死に話しかけるが、生返事を返すだけだった。


「あ!! シュウさん! こっちです!」

「おお! ユートじゃねえか! やっぱり先を越されていたか」


 シュウは悔しそうだ。


 アパートで話し合ったのだ。今日は同時に第2階層のボスに挑むけど、ボス部屋に行くまでは競争しようと。結果は御覧の通り。ミナトに会うというハプニングがあったとはいえ、競争はユートたちの勝利に終わった。


 それよりも、気になることがあった。ユートたちパーティーのタクミが、なんだかテンションが上がっているように見えたのだ。


「がう?」

「ああ。アオ。聞いてくれよ。タクミの奴、ここに来る途中で、嫉妬のパーティーに会ってさ。それからこうなんだよ」


 アキラがそう教えてくれた。嫉妬のパーティーと聞いてどきりとした。アオはまだ会ったことはないけど、確かリヴィアと言う女がリーダーで、この街に移住してきたメンバーだったはず。大半は街のそばにある港で漁をして暮らしているそうだが、この塔にも人をよこすようになったということか。


 なぜか胸がうずいてアオは胸を押さえた。もしかしたら、ミツは嫉妬のパーティーに思うところがあるのかもしれない。


「そう言えばシュウさんは街で外人をみたことあります? 買い出しの時とかに見かけたりとかは?」

「うん? まあ、たまに見かけるかな。やっぱ外人ってでけえって思ったよ。筋骨隆々な軍人みたいなのもいてちょっと怖かったぜ。話したりとかはなかったけどよ」


 ユートはうなずくと、ぼりぼりと頭を掻いた。


「リヴィアさんが話していたんですけど、もしかしたらこの街に知らない外人が来ているかもしれないそうです。なんかこそこそしているやつがこの街にいるらしく。リヴィアさんに心当たりがない人らしく、困惑しているようなんですよ」

「そう言われてもなぁ。俺たちはあいつらの全員を把握しているわけじゃねえし、不審者かどうかなんてわかんねえよ。てか、この島に外部の奴が入ってきたのか? それはそれで心配だな。しかし結界があるとかで入れないんじゃなかったのか?」


 困惑顔のシュウだった。アオも怪訝な顔で首を傾けた。


「まあいいや。今回の賭けはこっちの負けだな。じゃあ俺たちが先に行くぞ。おまえらにほえづらかかせてやるからな」

「ひひひ。あざーっす。シュウさんたちから話を聞いて、俺たちは悠々とクリアさせてもらいますから」


 こうして、第2階層のボス部屋の攻略は、アオたちから行うことが決まったのだった。

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