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第58話 幕間2

「どういうことですか!」


 いきなり詰め寄られてLは眉を顰めた。Lが座るオフィスのテーブルに、サングラスの男が詰め寄ってきた。


「いきなりご挨拶だね。何が気に入らないんだい?」

「すべてです! なぜあのまがい物にアパートを与える真似までしたんですか! あれではせっかく街に行けないようにした意味はない!」


 激高し、何度も机を叩きつけるサングラスに、Lは呆れてしまう。


「うるさいなぁ。若いうちからそんなに怒ると禿げるよ? もっと余裕を持ったほうがいい」

「どういうつもりです! あなたは彼らに肩入れしすぎている! せっかくあのオーガどもを派遣したのに、それも無になってしまった!」


 Lはめんどくさそうに耳の穴をほじっていた。


 あのオーガ、シュテンとラセツはスーツの男たちが保有する中でも指折りの強力な個体だった。あれなら、確実にあのまがい物を葬ってくれるはずなのに! 第2階層に到達した彼らでも、いや、第3階層をクリアした探索者でも勝てるはずのない相手のはずなのに!


 でも、2体のオーガは破れた。あの植草がいるとはいえ、彼らが撃退されたことはサングラスにとっても意外で、到底信じられることではなかった。


 あの犬は、どこまで行っても我々の邪魔をする。サングラスは苦々しい思いを隠せなかった。


 異常事態が起こったのに、Lは気にも止めていない。そのふてくされたような態度に、不満をぶつけるのをやめられなかった。


「あのオーガを倒したのは僕のせいじゃないし、あれが思ったよりも弱かったってことじゃない? ほら! やっぱり異世界の壁に阻まれちゃったか。彼らも実力を発揮できなかったんじゃない? 僕も意外だったんだよ? あの状態で、まさか返り討ちにするとは思わなかったし」

「それもあなたがあの侍を引き合わせたからでしょう! ああ見えても植草は今回の対象者で随一の力を持つ実力者だ。アビリティやスキルを使わないのに塔を踏破するなんて、非常識にもほどがある! こちらの計画が」


 詰め寄るサングラスのことを聞いてか聞いていないのか。Lの態度はどこまでも他人事だった。


「僕は何もしていないよ。彼らがあったのは彼らの縁さー。むしろ僕も意外だったんだよ? まさかあの植草が自ら同行を申し出るなんてね。僕が何もしなくても、彼らは出会う運命にあったということだね。たぶんだけど」

「もっと真剣に考えてください! 彼らは我らの計画を破綻させる因子にもなりえないんですよ! 今殺さなければ、どんな弊害が起こるか! そうだ! オーガよりもさらに厄介な魔物を送り込めば!」


 へらへらとしていたLの顔が急に鋭くなる。その視線を受けてサングラスの男はあからさまに動揺していた。


「許さないよ。彼らが決して勝てないような、暴食の塔を台無しにしてしまうような魔物を送り込むのは。それに、勝手に嫉妬から人員を送り込むなんて、何を考えているんだい? かなり無理をさせたんじゃないか? ただでさえ向こうでの転移は難しいのに。〈暴食〉と〈嫉妬〉が近いからって無理させすぎだ。たいした被害がなかったからよかったものの」

「あれは上の指示です! 上は相当にお冠ですよ! あなたが甘いせいで、探索者の3分の2は街やスラムに引きこもったままですから」


 調子を取り戻したようなサングラスに、今度はLが黙り込んだ。攻勢と見たのか、サングラスがさらに勢い込んで叫び出す。


「ええ! そうです! あいつらを殺す手ならいくらでもある! 街の人形どもを全員引き上げさせれば、あいつらは干上がる! 戦わずにあいつらを餓えさせることだって!」

「そんなことは許さない。管理者として、君の行動は絶対に認められない」


 Lの剣幕に、さすがのサングラスも動揺しているようだった。じりじりと汗を流している。この一件を見ても、2人の実力差が察せられるものなのだが。


 不意にLが破顔した。その顔はサングラスからしても不吉に思えた。


「そうか! そうだな! ふふふ! 干上がらせるのはあれだが、更なる波乱を呼ぶのも面白い。でも魔物だけを呼び込むのもあれだな・・・。そうだ! いっそのこと、暴食と嫉妬をつなげてしまえば!」

「ちょ、ちょっと待ってください! 何を考えているんですか!」


 焦ったように言うサングラスの言葉を聞いてか聞いていないのか・・・。なぜか乗り気のLに、サングラスはむしろ焦ってしまう。


「何を焦っているんだい? 嫉妬からエージェントを送ったのは上の指示だろう」


 笑い出すLの顔は喜悦に歪んでいた。


「し、しかし! 壊れた嫉妬と暴食をつなげるんですよ!? あそこを破壊した、あの魔物が入るかもしれない! もしあの2体が暴食に流入したら、暴食だってどうなるかわからない! あいつらに蹂躙されてしまうかもしれない!」

「それもまた一興さ。あの2体が来るまで探索者が育つか、それともあの2体に蹂躙されてしまうか・・・。ちょっと興味深いと思わないか」


 Lの目が爛爛と輝いている。


「あなたは、何を考えて!」

「まあまあ。よく考えてみたまえ。暴食と嫉妬をつなげても。あの2体が暴食に行くまでには少し時間がかかる。要はそれまでに暴食の探索者が育てばいいのさ!」


 楽し気に思いを膨らますL。サングラスが何かを言っているが、何も聞いていないのか。Lは彼を無視しながら、思いを膨らませ続けている。


「ああ。楽しみだなぁ。逃げ出した嫉妬の魔物たちに、暴食がいかに抵抗するか。暴食の探索者がどんなふうに育つのか。どんなふうに強くなるのか。きっと高慢や憤怒とは違う、面白い探索者が育つだろうなぁ」

「聞いているんですか! あなたが何を考えているのか、全然わからない! そんなにうまくいくはずがない! そんな、行き当たりばったりな計画が!」


 そして、Lとサングラスは口喧嘩を続けたのだった。

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