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第48話 アキミと友人たち

 いきなり現れた3人から目が離せなかった。


 中心の男は背が高くスタイルの良い男だった。第5世代だろうか。白銀に輝く鎧を身にまとい、赤い髪をたなびかせて白い歯を見せている。隣で聖女を睨む女たちは、たしか第2階層で広場に逃げ込んできた探索者だ。あの時とは武器も変わっていて、何と大きなライフルや大きな銃を持っている。この間よりも自信にあふれているのが印象的だった。


「と、冬愛! 澪!」

「あんたに名前を呼ばれるいわれなんてない。あたしたちは絶交しているんだから」


 あわてて声を掛けるアキミに対し、2人の女性の声は冷淡だった。どうやらこの3人は知り合いらしく、今は険悪な関係なのだろうか。


 でも、アオにはそれよりも気になることがあった。真ん中の男を含めた3人から、あの嫌な気配が漂っているのだ。3人の気配は、今までに感じたことのないくらい強いものだった。


「え、えっとね。あたしも反省したんだ。聖川先生に会って分かったんだ。正同命会ってだけで拒絶するのは違うって。だから」

「相変わらずお花畑ね。すぐ人に影響されて騙されて。昔からアンタのそんなところ嫌いだったのよ。変に心を読んだような言動も鼻についた。いなくなって、自分がいかにあんたを嫌いだったのか気づいたわ」


 けんもほろろなミオの態度に、アキミはショックを受けたように立ち尽くした。トアも厳しい目でアキミを睨んでいる。


「だいたい、聖川を見て考え方を変えたって? この気持ち悪い優等生の聖女もどきがなんだって言うのよ! そんなだからアンタは!」

「!! 失礼します!」


 聖女が2人を追い抜いて、後ろに続く3人に駆け寄っていく。そしてアオも気づいた。男の後ろに3人組がいて、彼女たちがぐったりしているようなのだ。


 聖女はその女性を素早く観察すると、すぐに跪いた。そして祈るように手を組むと、女性の体が光り出す。


「無駄だよ。彼女はよくやってくれたが、あのゴーレムに一薙ぎされてね。それで」


 男がそういうが、途中で目を剥いた。女性の傷がみるみる治り、荒い息があっという間に穏やかになっていったのだ。


「うそ・・・。スキルの回復も何にも受け入れられなかったのに」


 ミオが絶句している。肩を貸されていた女性が目を覚まし、あっけにとられたように自分の体を探っている。


「マルス様! すごいです! 傷が、もうふさがりました!」

「おお! これが神のご加護というものか! すばらしい! 私の祈りが通いたのですね!」


 男が感動したように言うと、女性は涙目になって何度もうなずいている。


「マルス様。教主様をお待たせするわけにはいきません。本部に向かいましょう」

「そうですね! 何しろ我が会が初めて階層の初攻略に成功したのですから! これも神の思し召しというものです。私の快挙を、いち早くご報告せねばなりますまい!」


 そしてマルスは街の入り口に向かって歩いていく。その後ろを、彼のパーティーメンバー5人と、聖女の護衛をしていたはずの3人がついていった。


 後には、疲れた様子の聖女とその護衛をしている2人だけが残された。


「ふざ・・けるな! リイネの傷を癒したのはどう考えてもケイだろう! それが何で神のおかげになる? 挙句の果てにマルスの手柄になるなど!」

「他の3人も! なにあれ? なんでマルスについていくの? あんたたちの役目はケイの護衛でしょうに!」


 聖女を護衛する2人――。アシェリとパメラが口々に叫び出した。アオにとっても既知であるこの2人がそう言うのは意外だった。この2人はあの隠しアパートから広場に戻るまで護衛してくれたのだけど、その時はやさしい年上のお姉さんと言う印象があったのだが。


「アシェリ。パメラ。ありがとう。でもいいのよ。私のことは。第3階層の主を倒したのは、確かにすごいことなのだから」

「でも! スキルでも癒せない傷を治したのはケイなのに! そのお礼もしないで報告に向かうなんて信じられない! ちゃんとできるのはケイなのに! すごい回復を持っているのも!」


 憤懣やるかたないと言った風に吐き出すアシェリだったが――。


「あれはスキルではないな。聖女のオリジンか。素晴らしいの。あのゴーレムにつけられた傷を、一瞬にして癒すとは」

「なによ! オリジンって・・・。!!」


 大きな鼻を赤くして言い出したパメラが目を向いた。イゾウが、興味深そうに聖女を見つめていたのだから。


「おい。爺さ・・・」

「う、植草先生! やばい! どうしよう! えっと、ずっとファンでした! 私、動画であの戦いを見た時から! キャー! ケイ! どうしよう! アシェリ! 植草先生よ! 本物よ!!」


 急にうるさくなったパメラに、アオは圧倒されてしまう。地元では有名らしかったイゾウのことを、パメラは知っているようだ。一方のアシェリは気まずそうに眼を反らしていた。


 イゾウはそっとアオの目を見た。アオが頷きだすと説明を続けてくれた。


「オリジンとは第3の能力だな。アビリティでもスキルでもない。ワシらの種だけに許された力だ。他の2つよりも使い勝手はすこぶる悪い。だが、自分で育てている実感があるの。アオの魔力を浴びれば目覚めることができるが。まあ、なぜ聖女がオリジンを使えるか知らぬが」

「それ! 私でも習得できますか? できるなら私に教えてください!」


 即答だった。あまりにも即断したパメラにアシェリは唖然とした様子だった。聖女のケイから「やはりあのとき」と言う声が漏れてきた。


「ちょ、ちょっとパメラ! 話もちゃんと聞かずにそんなあやしいものを受け入れるなんて! すごい技術でも私たちなんかに習得できるとは限らないし!」

「なによ! 植草先生とケイがやってるんだからやるしかないじゃない!」


 アシェリは思わず引き留めるが、聞いているのかいないのか・・・。パメラの目が血走っていて、ちょっと怖い。アオはおろおろとすることしかできない。


「ねえ! 私はどうすればいいの? ねえ! ねえ!」

「ちょ、ちょっと待て! おい姉ちゃん! 落ち着け!」

「そ、そうよ! 気持ちはわからないでもないけど」

「パメラ。もうちょっとちゃんと考えよう?」


 シュウが慌てて言うが、パメラは止まらない。言い募るパメラを、アシェリとケイが必死に宥めている。


「なんか、あっちはあっちで盛り上がってるね。一応、私たちのためにきてくれたはずだけど」

「で、でも僕らのことも忘れてないみたいだし」

「オリジンかぁ。アオさんに認められればあたしにも習得できるんだよね? どんな能力にしようかな」


 ちょっと離れたところでそうこぼす新人3人だった。

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