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第144話 サナたちの戦い

 魔線組のオフィスは戦々恐々としていた。


「ちっ! ついにきやがったか! ゲンイチロウのやつが、オミ達を引き連れて戻ってきやがった!」

「くそがっ! 今更あいつの出る幕なんてねえんだよ! ぶっ殺してやる!」

「別の出口ではあの植草が現れたらしいぞ! あいつを倒すチャンスだ。かなりの数が、あいつを狙っていったらしい。俺たちも行くか?」

「えっと、中立派の探索者もいるのか? 戦力の分散が目的かよ! すぐにぶっころしてやる!」


 動揺し、興奮もしている彼らの元に、ハイヒールが床を叩く音が聞えてきた。


「おい! こっちにもきやがったな! 馬鹿め! 真正面から来やがるなんて!」

「はっ! 誰だか知らねえがハチの巣にしてやる!」


 人影が明確居なる前に、魔線組の戦闘員たちがマシンガンを放つ。轟音と共に放たれる銃器は、東雲剛也が嫉妬の探索者から買い取ったものだ。対人戦に無類の効果を上げるこの兵器を標準装備したことで魔線組の戦力は格段に高まったといえる。


「よ、よし! これだけ撃てば!! ははっ! 見ろ! 迂闊に出てくるから!」

「はははっ! は、はあああ?」


 土煙が晴れた先に居る光景を見て。魔線組の構成員は絶句してしまう。そこに、ドレスを纏った女性が一人、無傷で微笑を浮かべていたのだから。


「う、うそだろう!? こ、この!!」


 構成員の一人が再びマシンガンで銃弾を放つが、その女には当たらない。腕を振るだけで明後日の場所に炸裂してしまう。


「ああ。あんなに恐れていた暴力がこんなものだったなんて。ふふっ。まさか私が、銃弾を恐れなくなるとはね」

「く、くそ!! ふさぜんな!! なんでこれが当たんねえんだ!! お前は、こんなことできなかったはずだろう!! 男を手玉に取って、金を巻き上げて!! こんなバケモンみたいじゃなかったはずだ!! なあ! 東海佐奈!!」


 叫び出す戦闘員に、サナは微笑をうかべたままだった。そして再び彼女は腕を振るう。そこから発せられたのは、凍てつくばかりの氷の衝撃波――。吹き飛ばされた戦闘員はまだいいほうで、凍り付いた者が多数――。中には、顔を残して氷漬けになった者までいた。


「くそがっ! なんてアビリティだ! だが、貴様は・・・、くそっ! なんで当たんねえんだ!」

「撃ち続けろ! このままいけばいずれ息が切れる! それを狙え!!」


 宣言通りマシンガンを放ち続ける戦闘員だが、銃弾は一向に当たらない。障害物に隠れるそぶりもないのに、まるで弾が自分から避けているように曲がりくねって方々を破壊しているのだ。


「な、なんなんだ!! おまえは、なんなんだ!!」

「くそが!! アビリティかなんかか? ざけんなよ! 氷のアビリティをもっているのはあんただけじゃねえっ!!」


 叫びとともに、サナの右上空に現れた大きな氷の塊。4メートル四方の大きなそれはサナを覆い隠し、まさに押しつぶさんと落下し始めていく。


「ははっ! どうだ! これなら外さねえ! このアビリティですぐに押しつぶしてやる!!」

「は、はははは!! ナナセ! よくやった! これならあの化け物でも!!」


 巨大な氷塊を前にして、しかしサナは動かない。近寄ってくる氷塊を、あっけに取られて見つめているだけのように思えた。


 氷塊が、サナがいる場所へと落ちていく。土煙が巻き起こり、全体を覆い隠していった。そこを中心にビル全体が大きく揺れ出した。


「気に入らなかったんだよ! あんたのことはさ! あたしとおんなじあばずれのくせに! 上品ぶって、すましたような顔をしやがって! はっ! オリジンなんてもんに傾倒するからこうなるんだ!! ははっ! 死体を見て笑ってやる!!」

「お、おいナナセ! 落ち着け!!」


 戦闘員がドン引きで止めるが、ナナセは哄笑を辞めることはなかった。


「うふふ。この程度で、私を倒したつもりなの?」

「!! なっ!!!」


 土煙が晴れた先には無傷のサナがいた。巨大な氷塊は落下途中でサナを避けるように2つに割れてしまっていた。


「うそ、だろう? な、なんで!!」

「ほら。お返しよ」


 反射的に身を守ったナナセだが、サナの氷の波に吹き飛ばされてしまう。連続して放たれる氷弾を、それでも何とか防ぐナナセ。自前のアビリティで何とか防御するが、一撃ごとにガードが破られ、殴られるように吹き飛ばされていく。


「分かる? あなたがどんなにあがこうとも、すべては無駄。頑張って作った氷も簡単にはがされてしまうでしょう? これが力の差というものよ。所詮はあなたはナンバー2。トップを走る私には、敵わない」

「ふざ、けんな!! なんだよこれは!! オリジンはアビリティより弱いはずだろ! なんでこんなに、一方的に!」


 それしか、言えなかった。ナナセが言葉をはさむ間もなく、サナは攻撃を仕掛け続ける。ナナセはアビリティで何とか防ごうとするが、新たに作った氷の盾も障壁も、サナの氷は破壊し続けてしまう。


「な、なんで・・・」

「種明かしとしましょうか。確かに、私のオリジンは弱い。あなたのアビリティごときにも及ばないでしょうね。でも、私の中のスネグーラチカの力を発現させる媒介としては、十分なのよ」


 氷に殴られ続けたナナセは、息も絶え絶えだ。


「分かる? 私の氷はそれ単体で構成されているんじゃない。私の氷を媒介に、スネグーラチカの力を発現させるための扉になっているの。あなたがいかにアビリティを鍛えようとも魔族の足元にも及ばない。何せ彼女たちは、私たちの人生よりもずっとずっと長い間自分のアビリティと向き合ってきたのだから」

「なるほど。君のその素晴らしい氷術は、君の中の魔族の力というわけか。だから、ナナセのアビリティを上回る威力を出せるのだな。とすると、攻撃を避けたのはスキルの力か]


横やりを入れてきたその男を睨みつけるサナだった。


「ふん。仲間の一人が気づいたことよ。大気中に自分の魔力をばらまけば、そこからスペシャルを使える魔物もいるってね」

「面白いな。君のオリジンは、ただのまねごとではなく、魔物の力を利用するためにあるのだね」


 そこで初めて、サナは動き出す。身を鎮め、する同動きでジグザクに移動していく。まるで何かを避けるような動きを、ナナセがあっけに取られたように眺めていた。


 それまでサナがいた場所には幾本もの矢が刺さっていた。


「ほう。避けるか」

「さすがにそれをもらうわけにはいかないと、私の中の天族が教えてくれたのよ。エヴァは空間を操ることに関してはエキスパートだから」


 サナの目はもうすでにナナセを映していない。鋭い目で声がしたその方向を睨んでいる。


「九条、富重」

「私の名前を覚えてもらえているとは。光栄だね」


 スーツを着た、真面目そうな瘦身の男だった。一見して一般人としか見えないこの青年が、魔線組の誇る随一の探索者だと、誰が信じるだろうか。


 だが、その実力は明らかだった。サナがそれまでいた場所に、いくつもの矢が刺さっている。音もなく、気配もなく、クジョウはサナに矢を放ったのだ。


「さて。サナ嬢。次は私の相手をしてもらおうか。あなたほどの強者。戦う価値は十分にあると、私には思えるのだけどね」

「・・・。いえ。やめておくわ」


 サナはふと力を抜く。そしてこともなげにうでをふるうと、あっさりとナナセの顎を打ち、その意識を奪っていく。


「ふむ。私では力不足だと?」

「あなたの力は厄介だもの。あなたのその力は、ヨースケさんと同じくらいたちが悪い。でも、それ以上に、あなたを倒したいって人も、手ぐすね巻いて待っているのだから」


 クジョウははっとして、素早く振り返る。そして突き付けられた剣の一撃を、ナイフを抜いて軽々と受け止めた。


「ほう。そういう、ことか」

「社長の邪魔はさせない。社長が東雲さんを押さえるまで、ここで踊ってもらうぞ!」


 決意を込めて力を入れるテツオに、クジョウは笑いかけた。


「九条さんよぉ! 確かに最近のあんたは強え! 魔線組の本当のエースは、くそ野郎のライオンやミナトではなくあんただろうな! 地味だけど。でも、俺だって鍛えてるんだよ!」

「テツオ! 無謀だぞ! 相手はクジョウさんだけじゃないんだからな!」


 たしなめたのはサトシだった。彼はクジョウと、その後ろに歩み寄る3人の大柄な探索者たちを睨みつけた。 


「くひひ。このメガネ。俺たちにビビってやがる」

「ふん。ちょっといい大学を卒業しただけのいい子ちゃんが。ここでは学歴なんてものが通用しないことを教えてやる」

「あ、まって。置いていかないで」


 それは獣人だった。獅子の顔と2メートル以上の大柄な体を持つレオと、180センチ以上の長身に犬の頭が乗ったヒョウ。そして小山のような体格のサイの獣人、 ナリだった。


「ちっ! 獣人トリオまでお出ましかよ!」

「あ? 誰が獣人だコラ! このコウモリ野郎が! なめているとぶち殺すぞ!」


 動揺するテツオに怒声を飛ばすレオ。歪んだ笑みを浮かべながらテツオを睨みつけている。後ろでヒョウが笑い、ナリが自信なさそうに体を縮こまらせている。


「テツオ。落ち着け。彼らはアオじゃない。ちゃんと力の使い方を学んでいる彼とは全然違う生き物なんだ。なら、やり様はいくらでもある」

「ちきしょう! 俺たちのほうが外れってか? クジョウさんに加えてこいつらまで、俺たちだけで押さえんのかよ!」


 テツオの嘆きが、あたり一面に響いた。

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