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第142話 アゲハ奪還作戦

 アパートの本部に、全員が集まっていた。


「いやあ! 偽装に偽装を重ねられて分かりづらかったですな! ですが! ワタクシの目は節穴ではありませぬ! この程度、ワタクシにかかればもう簡単に見破れるのです!」


 自信満々なフィルムスに、誰も何も言わない。おしゃべりな彼女にみんなうんざりしていたが、今日ばかりは押し黙るしかなかった。


 フィルムスが、アゲハの監禁場所を見事に見つけ出したのだ。ホワイトボードに地図を掲示し、バツ印でその場所を示すフィルムスは胸を張っている。


「ふぇっふぇっふぇ! あの広い敷地の中から場所を特定するのは苦労しましたぞ! ふぇっふぇっふぇ! さすがワタクシ! すごいぞワタクシ! やっぱり第7師団で一番有能なのはワタクシでは?」

『フィルムス! あなた、いい加減に!』

『このおしゃべり害鳥が! ちょっと成功したからと調子に乗りおって!』

 

 あのエスタリスとエンコウに詰められるが、天敵2人が結託しているにも関わらず、フィルムスは笑い声をあげるばかりだった。


「とにもかくにも、さすがはフィルムスだな。まさか、この短期間でアゲハの場所まで特定するとは思うまい。よし! それなら!」

「待て待て待て! 爺さん! ちょっと待てよ! おいおいおい! あそこは警備が厳重だぞ! ただ忍び込んだだけじゃあ捕まって終わりだ。助けることなんてできねえ」


 ゲンイチロウが、イゾウの言葉を遮った。


「いつでも忍び込めるのはそこのアヒルくらいじゃねえか? 爺さんでも無理だ。てか、爺さんは目立つんだから隠密任務には向かねえだろう」

『む! あなたは! ワタクシがせっかく得た情報を無駄にするでありますか! そんな軍属時代のようなこと、ワタクシは認めませぬぞ!』


 うるさく抗議するフィルムスに、ゲンイチロウは笑いかけた。


「何もしねえとは言っちゃいねえだろ。助けるのは早いほうがいい。それは間違いない。ただ、夜中に忍び込んでもただじゃすまないって言ってんだ」


 そう言って、オミ達魔線組の面々をニンマリ笑って見まわした。 


「おい親父、まさか・・・」

「ああ! 時が来たって言ってんだ。街を取り戻すために俺たちが現れる。きっと町は大混乱だぜぇ。その混乱に乗じて大将たちがアゲハの嬢ちゃんを救う。これなら、うまく仲間を助けられるだろう?」

「かは!! 最高だぜ親父!! やるんだな! ついにやるんだな! ああ、この時を待っていたぜ!!」

「ヨースケ!!」


 ヤヨイが止めるが、ヨースケは興奮したように叫び続けている。


「ちょっとばかしタイミングは早えが、いいじゃねえか。新しいオリジンも出来上がったんだ。実戦で試すにはいいころ合いだろう!!」

「・・・。そうですね。最初は第一階層辺りで試したいという気もしますが、そうもいっていられない状況だし」


 答えたサトシはちらりとテツオを振り返った。テツオは不機嫌そうに睨み返すが、サトシの言うことに異論はないようだ。


「えっと・・。じゃ、じゃあ私たちも」

「アイカ嬢ちゃんたちはこのままだ。ここの守りを空けるのはまずい気がする。アゲハ嬢ちゃんが帰る場所を、きちんと守ってくれ」


 ゲンイチロウ自ら諭され、さすがのアイカもその場に座るしかなかった。


 しかし、それでは納得しない者もいた。


「私は、行く」


 決意を込めて宣言するフジノに、誰もが目を奪われた。


「フジノ、さん・・」

「コロさん。お願いします。私も連れて行ってください。アゲハのヤツ、きっと不安だと思うんです。私の力なら潜伏にだって活かせるはず。相手を傷つけずに無力化するには、私の力が最適だと思うんです」


 ゆるぎない意志を見せるフジノに、コロは黙ってうなずくだけだった。フジノはいつもアゲハに接していた。そのだらしなさを叱ってはいたものの、誰よりも会話していたのは彼女だった。


「くひひひ。そういえば、あんたもそうだったな。あんたも、俺やうちのサナと同じでオリジンの新しい可能性を見つけたんだった」

「ええ。あの子は言ってくれた。私が信念を持って行動する限り、ちゃんと力を貸してくれると。あの子の信頼を得るためにも、私は行かなきゃいけない」


 こぶしを握り締めるフジノにゲンイチロウは笑いかけた。ヨースケも嬉しそうに笑い声を上げている。


「では、決まりだな。魔線組の面々が、拠点を取り戻すために街へと向かう。その混乱に乗じて、正同命会に忍び込むのだ。忍び込むのは少数精鋭とする。目立つ面々は今回はお預けだ。ワシの指揮のもと、魔線組を援護する」

「ええ。忍び込み隊は僕が指揮を執ります。申し訳ないですが、うまく隠れられる人だけを選定させてください。フジノさん。あなたの意志は組みますが、決して独断専行はしないように」

「は、はい! がんばります!」


 フジノは大声を上げて感謝を示している。


「が、がう・・・」

「アオ。今回は、お前は待機だ。アイカ嬢ちゃんたちとともに、ここでアゲハたちが帰る場所を守ってくれ」


 アオは拳を握り締めるが、黙ってうなずくことしかできない。塔から出られないアオでは、街の正同命会本部に忍び込むことなんてできないのだから。


「アオ。心配だろうけど、ここは私たちに任せて。あなたの気持ちは、必ず私があの子に届ける。だから、ここで待っていて。ここで、私たちが帰る場所を守ってほしい」


 ケイが優しく声を掛けてきた。しばらくは何も言えなかったアオだが、やがて彼女の意を察したように、そっとうなずきを返した。


「では、さっそく準備を始めよ! 皆が役割を果たすことで必ずアゲハ嬢をここに導くのだ! よいな!」

「「「はい!!」」」


 イゾウの号令で、全員が直ちに行動し始めた。

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