表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/147

第140話 アゲハを捕らえた天族 

「おいおい。やべえんじゃねえか?」


 トゥルスの凶行を見てのゲンイチロウの反応だった。さっそく魔道具作りに取り掛かったドウェルグを見ることもなく、焦りを隠さず発言している。


「ネプトゥにウェネスだろ? そんで、今回のトゥルスと来た。四正天のうち3人が変わっちまったんだ。連れてかれたアゲハって子がどんな目に合うか分かんねえぞ」

『残念ながらアゲハちゃんに憑いていた子のことはよく知らないの。うちの師団なら私と面識があるけど、第3師団の連中だからね。用心深いのか、気配を辿ろうにも分からなかったし』


 ハトのエスタリスが考え込んでいた。エスタリスが知らないとなると、アゲハと合成された天族は未知数ということだ。


『お前たちの無知さにはあきれるばかりだね。特にそこのハト! 同じ天族なのに知らないとは本当に情けない。お前と同じ軍属の仲間だろうに』

『な!! 他の軍団の末端のメンバーまでは知らないわよ! ただでさえ第3師団は秘密主義なのに!』


 言い合う猫とハト。騒ぎ出す2匹にみんなあきれ顔だが、一人だけ違う反応をした人間がいた。


「バステト。あんた、知ってんのね? アゲハちゃんの中にいる天族のことを」

『くくくく。愉快だねぇ。ケルベロスやレヴィアタンすら知らない情報を、私が握っているなんてさ』


 アイカの指摘に、黒猫のバステトは笑い出した。


『さて。何をもらおうかね。この情報は高いよ。なんたって』

「バステト」


 いやらしく笑うバステトが、言葉を止めた。震えながら驚愕の目でアイカを見ると、口をパクパクと動かし、そのまま一気にしゃべりだした。


『あの小娘の中にいるのはアルビスという害鳥さ。あたしほどじゃないけどそこそこ顔の整った子でね。それを利用してのし上がってやると息巻いていた。直接的な攻撃力は大したことない子だけど、からめ手が得意とか言っていてね』

「そう。情報提供ありがとね」


 バステトはあっさりというアイカを信じられない目で睨みつけた。


『お前! 何をした!!』

「あなたが言ったんだよ、バステト。情報は私にくれるって。言葉に出して誓ったことは絶対順守。それが創造の力なのよ」


 自信満々に見下すアイカをバステトが歯を食いしばりながら睨んでいる。後ろのレビアタンも深刻な顔をしていた。


「社長! というわけでヤバイです! 速く助けないとアゲハちゃんが!」

「お、おお! そうだな! やべえな! うし! 俺たちもそろそろ!」

「ゲンの字よ。待て! コロもだ!」


 いきり立つゲンイチロウをイゾウが諫めた。


「なんだよ、爺さん! アゲハって子を助けたいんだろ! 俺たちだって協力するぜ! 今からでも!」

「落ち着けというのが分からんのか!」


 イゾウの怒鳴り声に、食堂に一瞬だけ静寂が訪れた。


「せ、先生! 僕たちは」

「お前の気持ちは分かる。ワシだってアゲハが心配だ。だが、やみくもに突っ込んでどうする!! 魔縁組の情報があるかもしれぬが、それが正しいとは限らんだろう! ましてやアゲハを監禁している場所など、わかろうはずはない!」


 イゾウにたしなめられてコロは消沈するが、不満顔は収まらない。特に魔線組の面々は鋭い目でイゾウを睨んでいる。


「街の様子はリクたちが探っておる。アゲハの監禁場所もな。その情報を知った後でも遅くはあるまい。今は待って、アゲハ奪還のチャンスを待つのだ」


 そう言って、イゾウはどっかりと座り込んだ。ゲンイチロウはバツが悪そうにしながらも、上目遣いでイゾウに問いかけた。


「情報が必要なのはわかるがよ。本当に大丈夫か? あのリクってやつは確かにすげえが、元はただの大学生だったんだろう? それともあれか? ヤマジってやつに期待してんのか? 確かにあいつにも探索の腕はありそうだが、力不足じゃねえか? 時間だけが過ぎていくことも考えられるぞ」

「ワシらの情報収集を侮るでないぞ。なにせ、こちらにはプロがついているのだからな。あやつは口うるさいのが玉に瑕だが、仕事だけはきっちりやるらしいからの」


 自信満々に笑うイゾウに、全員が同じ人物の顔を浮かべたのだった。



◆◆◆◆



 ここは、街にある正同命会の隠れ家の一つ。


(ふぇっふぇっふぇっふぇ。さすがにいろいろありますなぁ)


 リクの召喚したフィルムスが鼻歌交じりに荒らしまわっていた。


 ここを見つけたのも彼女なら、探索することを主張したのも彼女だった。ちなみにリクたちは街に潜伏中で、声を潜めながら他の場所を探っている。魔線組の構成員が我が物顔で闊歩しているので大胆な捜査はできない。


 もっとも、それでも手に入れた情報は多い。ヤマジなどは持ち前のコミュニケーション能力で街の人から次々と情報を集めているそうだ。失敗を糧に力を付けようと意気込んでいるらしい。


(ふぇふぇふぇ。どんなに頑張ろうとプロのワタクシには敵わないのですけどな。プロの目から見て、アゲハ嬢が監禁されているのはここですな。ご丁寧にスペシャルを封じる手錠まで用意して・・。あれってオリジンも防ぐでありますか? どういう理屈でありますか。まあ彼女があまりひどいことはされていないようなのは朗報ですが、さて)


 フィルムスは情報収集のプロである。わずかな情報からこの場所を探り出した。さすがに彼女と接触することはできなかったが、とりあえず5体満足であることを確認している。


(ワタクシ一人なら潜入も脱出も思いのままなんですけどね。さて。どうやってアゲハ嬢を連れ出そうか)


 建物の構造を探っていた時だった。


「いーけないんだ、いけないんだ。こんなところにケルベロスの諜報員が来ているなんて」


 驚いて振り返ると牛の角を生やした大柄な少女がゆがんだ笑みを浮かべていた。次の瞬間、少女が変貌する。第2形態の探索者の姿から、6枚のオレンジの翼を持つ天族の姿へと。


「姿かたちが変わっても一目でわかったぜ。フィルムスちゃぁん。ちょっとお話ししようか。しばらくぶりの再会なんだ。楽しい時間をすごそうぜぇ!」


 人間が天族のウェネスに変わっていく様子を見て、フィルムスは目を真ん丸に見開いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ