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虎132話 トゥルス捕獲作戦

「エイタ。その、あんまり根を詰めすぎるなよ」

「ああ。分かっている。もう少しだけだから」


 一心不乱に剣を振るエイタに、ユートが心配そうな声を掛けていた。


 ケイの熱心な看護により、エイタは意識を取り戻した。そして、すぐに理解してしまう。


 大切な友人が、もうこの世にいなくなってしまったことを。


「ケイ先生が毒を抜いてくれたとはいえ、お前は病み上がりなんだから」

「でもあいつは俺のせいで! あのアビリティを自分に使っていたらここにいるのはあいつのはずだった! あいつに、変な責任感を感じさせちまったせいで!」


 思わずユートに食って掛かるが、「すまん」と謝罪してすぐに素振りに戻ってしまう。


「兄貴も、エイタ先輩が無茶するのは望んでいないと思う。あいつ、ちょっとカッコつけなところがあったから」


 カエデまでもが慰めるが、エイタは黙って素振りをし続けている。ユートは心配そうに手を伸ばしかけたが、あきらめたように手を引っ込めた。


「あんまり、無理はするなよ」

「ああ。分かっている」


 エイタは振り返りもせずに素振りを続けている。その様子を心配そうに見つめていたカエデは、ユートに促されてその場を離れていく。


「あ! 2人とも! ここにいたんだ!」


 階段を上る途中で、ユートたちはヤマジに呼び止められた。


「どうしたんだ?」

「アキミさんに連絡があったんだ! 塔にトゥルスたちの部隊が入ったらしい。ウェヌスの部隊もだって。どうやらみんな、第4階層に向かっているらしいぜ!」


 息を切らして報告してくれるヤマジに、ユートたちは表情を引き締めるのだった。



◆◆◆◆



 食堂にはほとんどのメンバーが集まっていた。


『さて。ターゲットが塔に入ったのを補足したわけだが』

「私たち、動けます! なんだってしますから!」


 ノドカが意気込んでいる。元フェイルーンの4人も期待を込めた目でアオを見つめている。


 フェイルーンだった5人にとってミツは紛れもない恩人だった。だからこその反応だったが、ミツはそっと首を振った。


『お前たちが連中の前に行くのは得策ではないだろう。連中は探索者の顔をすべて把握しているはずだ。新顔のお前が言っても警戒されるだけだ。魔物の中には人間に化ける奴もいることだしな』


 その答えに顔を引きつらせるユートたちとカエデだったが、それを気にすることもなくミツが続ける。


『イゾウ。頼めるか? 私のアオと協力してトゥルスを捕らえたい』

「ふむ」


 ちらりとアオを見ると、イゾウは挑戦的な笑みを浮かべた。


「一つ、聞いておきたい。お主はトゥルスを捕らえたいと言ったが、敵とはいえトゥルスに無体をするつもりではないだろうな」

『しない。それは、約束しよう。むしろあいつらにとってここで私と話すのは最後のチャンスになるかもしれんぞ。今までのように、人間が主導権を握るためにはな』


 しばらくにらみ合うような2人だったが、やがてイゾウが目を反らした。


「請け負おう。ワシの想像通りだと、確かに正同命会は危険だからな」


 正同命会が危険、という言葉が気にならないでもないアオだったが、ミツはそのまま話を続けてしまう。


『あとは・・・。そうだな。エスタリス。頼めるか? お前の力なら、アオたちの力になれるはずだ』

「うふふふ! 了解しましたわ! このエスタリス! 必ずお役に立って見せますとも!」


 嬉しそうに羽ばたいたエスタリスだった。アオには彼女が元フェイルーンたち以上にミツの命令に忠実に従っているように思えた。


『そうだな。あとは・・・』

『待てケルベロス。我も出るぞ』


 レヴィアタンの言葉だった。誰もが絶句する中、ミツが眉を顰めて質問した。


『お前が、私の命令に手を貸す? どういうつもりだ』

『なに。少し試したいのだ。私の、リヴィアの力がここの魔物にどれくらい通じるか。そのついでに確認しておきたい。この塔が、どれだけ変わったか、そしてあれの原因がなんなのかをな』


 ミツはそっと先を促した。


『ここは〈暴食の塔〉のはずだが、どういうわけか気配がする。我が送り込まれた〈嫉妬の塔〉と同じ気配がな。もしかしたら我らがここの街に来たのと同様に、あそこの魔物が大量に呼び出されたかもしれんのだ』

「リヴィアさんに化けた、あの魔物!」


 叫び出すエイタを気にも止めす、レヴィアタンは続けた。


『魔物は塔からはなれれば存在できぬものだがまれにこの世界になじんだ個体もいる。そう言う固体はここにまで我を追ってきている可能性がある、そのしっぽを掴んでおきたい。それに適任な能力者はこちらにいるのでな』

「カーターが、こっちに嫉妬のほかグループを呼んだという話もある。リュムナデス以外の魔物も、こっちに紛れているかもしれないということですか」


 レヴィアタンの視線の先で、ハーパーが静かに頷いた。彼女は厳しい目でレヴィアタンを睨み返していた。


『まあ、いいだろう。保険は必要だな。お前は万一に備えて第2階層を』

「待ってください!」


 白狐のカエデが勢いよく立ち上がった。


「私も、レヴィアタンさんと行きたいです! もし嫉妬の魔物がレヴィアタンさんを狙っているなら! 兄貴のかたきが、狙っている可能性があるなら!」


 カエデの剣幕に、ミツは溜息を吐いた。


『まだ未熟なお前が、と言いたいところではあるが、その気持ちは分からんでもない、か。レヴィアタンのお目付けが必要なのも事実だしな。仕方がない。アゲハ』

「げっ。私?」


 顔を歪ませるアゲハに、ミツはこともなげに命令した。


「たまには引きこもってばかりじゃなくて運動しろ。お前は強くなったがまだ苦戦する敵はこの塔にもいるのだからな。ああ。エイタと言ったか。貴様はダメだ。貴様はまだ万全ではない。アゲハの足を引っ張りかねん」

「!! はい・・・」


 タクミのかたきを取りたいという気持ちはカエデ同様に強いのだろう。エイタは悔しそうだった。


『よし。他の奴らは我とイゾウを援護せよ。アゲハとレヴィアタンがうまく出られるようなサポートもな。こいつらは第2階層ので入り口からしか出られんからな。魔線組のメンバーはそろそろ街に戻る準備が必要だろう。この作戦に参加しないやつらも、ちゃんとしておくように! 以上。お前たちの健闘を期待する』


 そう宣言するミツの顔は、どこか得意気だった。

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