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第112話 憤慨する新進気鋭

「くそっ! あんたたちがうだうだしてるから先を越されたじゃねええか!」

「おいおい。出し抜かれたのはお前たちだろう。俺たちにせいにすんじゃねえ。てかなにか? やっぱりお前らは俺たちがいねえと何もできねえか? 新進気鋭の新人が、聞いてあきれるぜ」


 向こうのテーブルでヨースケとミナトが騒ぎ出している。ニヤニヤ笑いをやめないヨースケとは対照的に、ミナトは怒りを隠せない様子だ。


「ほらほら。こんなところで油を売っててもいいのかよ? うるせえのが出てくんじゃねえのか? レンジとかよ。東雲の爺さんもわめいてるかもしんねえぜ?」

「いつまでも街でうだうだしてられると思うなよ! お前らにも働いてもらうからな!!」


 そんな捨て台詞を言い捨てながら、ミナトは慌てて席を立つ。彼の仲間たちも慌てて店を出ていった。


 呼び出しがあったのはミナト隊だけじゃなかった。


「あっ。私たちのとこにも来た! と言うか、今頃って気はしますね。情報共有はこまめにしろって言われているのに」

「かぁ! やっぱりか! アゲハ。わりいが上に呼ばれている。会計はこっちで済ませておくからな。遅くなる前に帰れよ!」


 そういってウェヌスとウィルトンは席を立った。マスターに何か言って頭を下げる姿は彼女らしいと言えるのだけど。


 店に残ったヨースケ達が、店員に何かを言って席を移動してきた。


「なに? あんたたちは行かなくていいの? あのミナトっていうクソガキ、仲間なんでしょ?」

「別に俺たちが呼ばれたわけじゃねえからなぁ。うちの親父は初攻略にあんまりこだわっていねえんだよ。ま、こっちはこっちでいろいろあるからよ。伝えておこうと思ってな。海外組の動向ってやつをさ」


 ヨースケは肘をついてアゲハを覗き込んだ。


「海外組? レヴィアタンは必死でリヴィアを鍛えているんじゃないの?」

「リヴィアがひいひい言いながら修行しているのはこっちでも把握している。問題は他の連中さ」


 アゲハはどんぶりを掻きこむ手を止めた。


「他の連中?」

「そうさ。街に来た奴らの一部に、こっちの対応に不満を持っている奴もいてなぁ。反抗的とまではいかなくても苦い顔で見下してくる奴らもいてよぉ。やつら、自前の技は使わねえかわりにいろんな武器を持っているらしくてなぁ。まあ、あれだけたくさんの武器を持ってたんだ。だからどうだって感じだがよ」


 そういえば・・・。


 アゲハは思い出した。あの軍人のような大男が、見慣れぬ銃を使っていたことを。隙だらけになったとはいえ、あの〈憤怒〉の強力な探索者を仕留めたほどの威力。簡単な武器ではないとは感じていたのだけど。


 まあそれは、アゲハが相手の魔力障壁を無効化したからなのだが。


「海外組は武器だけは持っていますからね。こっちに横流しされた量だけでも相当なのですし。特別な武器が見つかるのはこの塔でも同じなんです。今回の正同命会の躍進も、そんな武器が一枚かんでいるとか」

「そう言えば私のナイフも塔で見つかった物って言ってたっけ。でも、オリジンを覚えていない人がそんなの使えるの?」


 アゲハから反応があったのがうれしかったのか、ヤヨイは嬉しそうに説明を続けた。


「どうやら魔道具は魔物の魔力を強制的に使ってくれるらしく、熟練度が上がるのを控えながら戦うことができるらしいんですよ。やっぱり銃って強力じゃないですか。特に対人戦なら無類の強さになるみたいですよ。もっとも、魔物の中には通じない相手もいるようですけど」

「連中のように、魔物に魔道具を発動させりゃあ便利だがよぉ。自分の魔力制御を鍛えることには繋がんねえわなぁ。それが良いことか悪いことかはわかんねえけどよぉ。ま、そんな感じで道具を使えることをアピールしているのさ。海外組はよぉ」


 ヨースケが頭を掻きむしった。


「嫌な予感がすんだよなぁ。東雲の狸爺も魔装具を積極的に使おうっていう一人だからなぁ。調べによると海外組の軍人連中と頻繁にコンタクトを取っているらしいのよ。例の、このままだと塔から魔物があふれ出してくるって話がじわじわと広まって来ているから、不安に思う人間が多いんだ」

「なに? その東雲って人。あんまり聞かない名だけど?」


 ヨースケとヤヨイが顔を見合わせた。


「東雲の爺さんってのは、うちの親父に次ぐ影響力を持つ魔線組の重鎮だなぁ。ある意味、あの爺さんのおかげでうちは戦力を確保できたという見方もできるけどよぉ」

「根っからのタカ派なんですよね。力こそがすべてっていう考えを隠さないみたいな。レンジみたいな強硬派を支援してるのもあの人ですし、成果を上げているミナトを、ボス以上に贔屓しているのもあの人です」


 アゲハはアオから聞いていた。レンジと言う魔線組の男に焼き殺されそうになったことがあると。さっき会ったミナトからもいい印象はなかった。舐めるように見てきたあいつを、アゲハは好きになれそうになかった。


「東雲の爺さん、今回のことを相当不快に思うだろうなぁ。あれんぞ、あの人の周り。レンジやミナトに無茶を言う可能性だってある。それどころか・・・。あー。やだねえ。あの爺さんが海外組の軍人とつながったとしたらどうすることか。親父に迷惑をかけるような事態にはならなきゃいいけどよぉ」

「あなたは・・・。いえ、あの方が良い方なのは分かりますけどね。植草さんが攻略に積極的だったころとは違い、今は情報がそれほど入ってこない。何かしない限り、うちが正同命会に追いつくにはもう少し時間がかかりそうですし」

「店員さん! あんみつをもう一つ追加で!」


 深刻に話をする2人をほおっておいて、追加で注文をするアゲハだった。


「一つ片付いたと思ったらもう次のもめごとか。海外組のはずれ軍人と魔線組の乱暴者がつながったのは気になるわね。あんまりこっちに面倒が起きなきゃいいけど」


 出されたあんみつをつまみながらつぶやくアゲハだった。

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