96話「騎士王の怨念!!? 恐怖する暗黒魔竜!!!」
なんと喰らった側の暗黒魔竜クセアムスが平然としてて、白目のオーヴェの首を掴んだままぶら下げていた。
片方の手で漆黒のエネルギー弾を膨らまして、ブウウンと唸りを上げさせていく。
「黒壊玉で散るがいい!!!」
そのままオーヴェにゼロ距離でブチ込む瞬間、ナセロンが「ルミナスフォール!!!」と剣を振り下ろしてきた。
暗黒魔竜クセアムスは見開き、バッと目標を変えて撃った。
ドズオッ!!!
ナセロンの光の剣と漆黒弾がぶつかり合って大気を震わす爆発を起こす。
周囲に地響きが広がり、破片が烈風に流され、轟音とともに爆風が広がっていく。
相殺したものの威力で押されたナセロンが吹き飛び、ルシアが胸で受け止めた。
「ぐうっ……!!」
「ナセロン大丈夫か……?」
「ああ、助かったよ。やっぱり強いや。まさしく」
「……七つの魔王!!! そして暗黒魔竜クセアムス!!!」
「うん!!」
煙幕が晴れると、漆黒の黒竜人が睨みを利かせていた。
他の黒竜人とは形状も威圧も断然違う。重々しい威圧が席巻し、周囲が震え上がり破片が舞っていく。
ズズズズズズズ……!!!
「また聖騎士……か! 全く因縁は切れないものよ……!!! 忌々しいわ……!!!」
クセアムスは目を細めた。
ムッ、と慌てて掴んでいたオーヴェを投げた。地面を滑っていったオーヴェは仰向けながら顔を上げていく。
「くそ……鋭い……!!」
オーヴェの右手に竜巻が唸りを上げていた。
ナセロンに注意が向いている間に、ゼロ距離でぶちかまそうとしていたのに見破られたようだ。
「そこの自称魔王まで一緒にいる理由は知らんが数を揃えれば、この私に勝てると思っているのか!?」
「ギルガイス帝国で依頼を受けてたからね」
「こちらも同じく。ただしもう魔王ではない。超魔獣王ルシアとしてリボーンしたのだッ!!!」
聖騎士ナセロンと超魔獣王ルシアはオーラを噴き上げていく。
その凄まじい覇気にクセアムスは目を細める。
「約五〇年前の騎士王の時からしっつこいわ……!!! 心底ウンザリする!!」
皇帝ライティアスの父にあたる前皇帝。
雌雄を決する大激突の末に、勝利を収めたもののギルガイス帝国は更に力を増してしまう。
後継者となったライティアスが歴代最強となった為に、余計な事をしたと後悔した。
ヤツラは騎士王の死後、更に士気が強まるタイプの厄介な人種。
いつしか、逆に討ち取られるかと悪夢を見続けてきたのだ。
「きさまにはギルガイス帝国の血筋を感じる!!! 名はなんという!?」
「ボクか? 聖騎士ナセロンだ!!!」
「ふっふっふ……!!! いつかはギルガイス帝国と戦争をしようと思っていた矢先に、そちらから仕掛けてくれて手間が省けた!! この因縁、完全に切ってやるわッ!!!」
クセアムスは腰を落として力んでいく。
「グオオオオオオオ……ッ!!!」
更に威圧が膨れ上がって数百キロにまで大地が震え上がっていく。
暗雲が渦巻いていく。
戦闘力が徐々に高まっていって五〇万を越えていく。戦慄するしかない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
「な、なんて事だ……!?」
「こんなん驚きだよ!!! もっともっと強くなっていく!!!?」
「フハハハハハハ……!!! 黒竜塔を増やしたのはこの為なのだッ!! 竜晶核を通じて、この私へ力が集約されていくのだッ!!!」
戦闘力が一〇〇万近くにまで上昇をしてきて、ナセロンとルシアは恐怖していく。
暗黒魔竜クセアムスにとっては皇帝ライティアスを始め、ギルガイス帝国をも制圧すべきと執念を燃やし続けてきたのだ。
それを、今叶えんとする!!!!
それを見たナッセは「やべぇ!! じゃあ外行ってくる!!!」と告げるなり外へ飛び出した。
「行かしていいのー??」
「あんたを助けたのと同じ方法だからね」
「あーアレね……」
ヤマミは頷く。
魔城の外に出たナッセは空へ向けて掌をかざす。ブウウンと漆黒弾を膨らましていく。
「中位階梯黒魔法『黒壊玉』!!!」
左右交互に手を突き出して漆黒弾を連発しまくっていく。
数十発バババババッと空の彼方へと吸い込まれていった。
「これじゃ間に合わねぇ!! 今度は上位階梯黒魔法『黒壊凶悪玉』連発でいくか!!!」
更に大きな漆黒玉を膨らました。ズン!!
それは直径数十メートルもの大きさで、周囲が震え上がるほどの威力を感じさせる。
そのままナッセは上空へ何十発もそれを撃ちまくる。
撃つたびに衝撃波が周囲に広がって、嵐のように森林とかバサバサ揺れていく。
「黒壊凶悪玉!! 黒壊凶悪玉!!! 黒壊凶悪玉!!!! 黒壊凶悪玉!!!!! 黒壊凶悪玉!!!!!!」
巨大漆黒玉が何十発も空へドドドドドッと飛び立っていくかのようだ。
これを大陸とかに撃っていたら絨毯爆撃で多くの国が壊滅するレベルだぞ。
キョウラ、ジャキ、キルアも見学しに来たのだが後頭部に汗を垂らしている。
「何をしているのか分からん……?」
「うむ。教祖さまが凄まじい魔法力の持ち主だと分かるが……さっぱり分からん」
「オ、オデ頭悪いから……なにも分からない……」
なおも無駄に巨大漆黒玉が何十発も空へと飛び続けている。ドドドドド!!!!
「ぬがあああああ……!!!? 力が急激に抜けていく……!!? い……一体何がぁぁあ……???」
暗黒魔竜クセアムスは胸を押さえてもがいていく。
急激に疲労が蓄積し魔法力が失われているのだ。そんな不可解な現象に戸惑いが走っていった。
一〇〇万に達する瞬間、急激に減少を続けているのだ。なおも五〇万近く減少は続いている。
「まだまだ竜晶核よ、力を持ってこいッ!!!」
ムリするように力を絞り出そうと集約し続けるが、減少のスピードが落ちるだけだ。
まるでバケツの下に大きな穴があいて水が流れ出しているので、いくら水道から水を供給しても増えない理屈みたいなもん。
「な、何が起こってんだ??」
「分からぬ……? 勝手に苦しみだしたが……??」
ナセロンとルシアは戸惑うばかりだ。
瀕死ながらオーヴェは怪訝な顔をする。
「ぐあああああああ……!!!? な、なぜだぁぁぁあ……!!?」
クセアムスは血眼で空に向かって呻く。
もしかしたら騎士王による死後強まる呪いかと勘違いして、勝手に恐怖を募らしていった。
「ろ……騎士王ッ……、やめろおおお……ッ!!!」




