95話「本格主人公ナセロン、久しぶり!!!」
ナッセたちはシシカイの監視能力でオーヴェやカカコたちの様子を見ていた。
「出ていいだろ?」
「待って」
焦らされるナッセを冷静なヤマミは呼び止める。
「いつも止めてばっかりよねー。見捨てる気なの?」
リョーコはジト目だ。それでもヤマミは意を介さない。
前々からナッセが助けに行こうと言い出しているのだが、ヤマミは頑として止めているのだ。
なにか考えがあって止めたのかなとナッセは勘繰る。
「ナッセが出れば暗黒魔竜クセアムスなんて簡単に倒せてしまう」
世界大会の煉獄竜王フレアネスドと同じように……。
ダクメーアとルルナナは魔法力を貯蔵して一時的に強さをアップできたが、基本的に七つの魔王の戦闘力は二〇万そこそこ。
「じゃああたしが一気にパーって」
「あんたも出ないで」
「なんでー!?」
リョーコが言い出しても、同じように止めてくる。
クラスチェンジできるから、一気に黒竜塔を全て刈り取れそうなんだが……。
「カカコたちヤベェぞ。一体倒したと思ったら別の奴が」
「間に合ったわね」
ヤマミが一息をつく。
カカコたちへ黒竜人が二体も翼を羽ばたいて降りてきた。
「ち、間に合わなかったか……!!」
「非常事態の最中で駆けつけたのに……、よくもやってくれたな! ヒトどもー!!」
カカコ、レイミン、ロンナ、リュウシ既に満身創痍。
この場に二体だけに限らず後続の三体が飛んでくるから絶望しかない。
一体だけでかなり苦戦してたのに、と愕然するのはムリもない。
「ちょっと待ったー!!!」
なんとオーラを纏って聖騎士ナセロンが飛んできたぞ。
すごい久しぶりな登場だ。そのまま「ルミナストッパー!!」と突進技を繰り出して黒竜人をドギャーンって次々粉砕していった。
撃墜された黒竜人は全て煙に巻かれながら落下していく。
「大丈夫か!?」
「あ、あんたは!?」
「助かったわ……」
「せ……聖騎士!!? ギルガイス帝国の……ヤツじゃないな!?」
「ご助力ありがたくいただく」
青いマント、純白の服、縁が黄金で白い手袋とブーツ、これこそが聖騎士ナセロンの全貌。
光の剣を携えてニッと自信満々に笑む。
「ボクは聖騎士ナセロンだよ」
まるでヒーローのように見えてカカコたちは感激していく。
ナッセと名前は似ているが姿形はまるっきり別人。それでも九死に一生を得たのだから頼もしい男には変わりない。
「きさまらー!!!」
「やはりギルガイス帝国どもかー!!!」
「もう一人、聖騎士が来たか!!!」
「ここは通させるな!!!」
なんとまた黒竜人軍勢がオーラを纏って襲いかかってくる。
するとナセロンとカカコたちを通り過ぎて、魔獣が人型になったような仰々しい男が飛び出した。
「獄炎魔王改め、超魔獣王ルシア見参ッ!!!!!」
黒竜人は「な!? 例の自称魔王ルシアか!!?」と驚きまくっている。
獄炎魔王ルシアは長年かけて魔族を超えるべき研究を続けて、自らを魔獣と化して劇的にパワーアップしたのだ。
「喰らうがいいッ!!! この拳王の力をなッ!!!」
オーラを凝縮させたパンチを振るい、黒竜人を殴り砕いていく。
尋常ならざる魔獣の力と卓越した体術によって、黒竜人をことごとく撃沈させていった。
「み、味方?」
「うん。すっごく強いんだよ。一緒に特訓してたし、おかげでボクも少しばかり強くなったんだよ」
ナセロンは明るい笑顔で答えると、飛び立った。
「ナセロン!!! あっちに凄まじい威圧を感じるぞッ!!」
「うん!!! 間違いなく七つの魔王だよ!!! 行くぞ──!!!」
聖騎士ナセロンと超魔獣王ルシアはそろって高速飛行して、黒竜塔一帯へ目指していった。
置いてかれたカカコたちはポカンとする。
意外なナセロンの登場にナッセも驚く。
「知ってたんか?」
「できればナセロンたちで挑んで欲しかったもの。原作ではそうしてたでしょう?」
「あ、ああ……」
自作漫画では、世界大会後にギルガイス帝国で依頼を受けてガロンナーゼの禁止区域へ入って黒竜人軍勢と戦うハメになる。
最初は聖騎士で圧倒していたが、七つの魔王暗黒魔竜クセアムスが現れて、一度は敗れる。
しかしユウリュウとヨスイが助太刀してくれて助かった。
三人がかりで必死に闘うも歯が立たず、再び負けそうになった時に奇跡が起きた。
なんと騎士の幽霊みたいなのがナセロンへ憑依合体してきたのだ。
そいつは聖騎士とは別に、一時的なクラスチェンジを与えた。
それは『騎士王』!!!
その力は暗黒魔竜クセアムスをも打ち倒すほどだった。
もちろん、その後は成仏してしまって騎士王の力は失われてしまった。発揮できたのはナセロンに自分の無念を晴らして欲しいという願いがあったからこそだろう。
「もしナッセがヤツを倒してしまったら、ナセロンも幽霊もその機会を失ってしまう」
「だ……だからか……!?」
「うん」
ヤマミは頷く。
同じ七つの魔王であるダクメーアとルルナナは戦っても影響はないとの事。
そもそも新キャラ化してたしなぁ。
なんか螺旋を描いた流星のようなのが黒竜塔の頂上から突っ込み、上から下まで粉砕しまくって地面で破砕した。
瓦解していく塔、そして巻き上がる煙幕。
もわもわ広がっていく。
「最後の力を振り絞ったか……。見事なり聖騎士……」
なんと喰らった側の暗黒魔竜クセアムスが平然としてて、白目のオーヴェの首を掴んだままぶら下げていた。
片方の手で漆黒のエネルギー弾を膨らまして、ブウウンと唸りを上げさせていく。
「黒壊玉で散るがいい!!!」




