94話「これが本物の魔王!! 暗黒魔竜クセアムス!!」
ドガアアッ!!!!
オーヴェが一〇基目の黒竜塔を粉砕する。
中部を突き抜けられて上部が傾いて、ゆっくりと地面へ崩れていく。中にいたであろう逃げそびれた黒竜人は瓦解するとともに全滅する。ズズ……ン。
「クソッ!!!」
「俺たちの産卵場が!!!! 竜晶核がッ!!!」
「ダメだ!! ヤツ一騎を仕留めきれねぇッ!!!」
「一〇基……。数年分の損失は避けられん。なんという事だ……」
「この失態!! 暗黒魔竜クセアムスさまに申し訳ない!!!」
焦りが大きくなって、必死にオーヴェへ光弾の嵐を浴びせていく。
何発か受けて傷だらけになっていくも、歯を食いしばってオーヴェは空を飛び回る。十一基目へ突撃する。
(……俺は死ねば、恐らく元の世界へ帰らされてしまう)
ドガアアアァンッ!!!!
オーヴェは煙幕まみれる黒竜塔の中部から抜け出し、群がる黒竜人を突き抜けていく。
次々と蹴散らされて命が消えていく。
まさにチート無双。獅子奮迅がごとくの無双。
(そうなったらチートもこの姿もなくなる)
「オオオオオオオオヴァ────ッ!!!!!」
力の限り吠えるオーヴェ。右手のパタを振るって次々と黒龍人を斬り散らす。
光弾を浴び、爪や打撃を受け、血塗れになろうが勢いは止まらない。
体験した事のない圧倒的な力で敵の攻撃を若干耐え、ことごとく蹴散らせる。
(当たり前だろう。所詮は女神マザヴァスから与えられたニセモノの強さ)
「なかなかやるではないか。褒めてやろうぞ……」
重々しい威圧が自分を重くしてしまうかのようだ。思わず空中で停止する。
目の前に大柄な黒竜人が一人、威風堂々と立ちはだかっていた。
他の有象無象とはまるっきり違う。別格って分かる。
「七つの魔王が一角、暗黒魔竜クセアムスだ!」
「ほ、本物の魔王ッ……!!!」
ズズズズズ…………!!!!
(ナッセたちのように長年鍛え上げた本物の強さとは違う)
「ではゆくぞ!!!」
暗黒魔竜クセアムスは瞬時に飛び蹴りを放ち、オーヴェの腹を穿つ。ズンッ!!!
重い蹴りを受けて激痛が染み渡り「がはっ!!!」と吐血。
勢いよく吹っ飛んで、いくつか黒竜塔をバゴンバゴン突き抜けて意識が飛びそうになる。それでも気張って空中で停止する。
「はぁ……はぁ……」
「ギルガイス帝国の聖騎士らしいが、よく単騎で無謀な事を始めたものだな」
逃がさんとばかりに暗黒魔竜クセアムスが前に立ちはだかっている。
ケタ違いの強さだ。
(だからこそ……私欲のために住民を巻き込み殺してしまった。軽率だった)
「負けられねぇ──!!!」
オーヴェは両翼アームを広げ、暗黒魔竜クセアムスへ高速で飛びかかる。
右手のパタでガムシャラに格闘を繰り広げていく。
ドガガッガガガッガッガッガガッガガガガガッガガガッ!!!!
いくら攻め立てようが暗黒魔竜クセアムスは依然余裕で捌いている。
こっちは武術も何も学んでいない素人。
ただ強いだけのガムシャラな戦い方では、ヤツを崩せない。
「黒竜塔をことごとく破壊していくから強いと感心していたが……剣技そのものは素人ではないか!?」
「くっ!!!」
「きさま、帝国の聖騎士ではないな……!!? 誰の差金だ!?」
(その罪で自分で作ったヒロインにそっぽを向かれた。自業自得だろう)
ドガガッ、ドガッガガッ、ドガガ、ドガッ、ドガガッ!!!!!
周囲に衝撃波を散らす激戦をくり広げるも、オーヴェを相手に暗黒魔竜クセアムスは遊んでいるようにしか見えない。
それでも命を懸けて攻め立てるしかない。ヤツの力を削ぐために。倒せれば御の字だ。
「答える気はないか? 見上げた根性だ……!!」
「オオオヴァ────ッ!!!」
「きさまが聖騎士であるにしろないにしろ、使命感のある必死さは買おう」
(耐え難い罪悪感に苛まされようが、それでも前を向くしかない)
「黒壊!!!」
暗黒魔竜クセアムスが右手から放つ漆黒の爆破がオーヴェに炸裂。
「ぐあっ!!!」
「そら!! そらららららら!!!!」
左右交互に両手を繰り出して、黒壊を連発してくる。
次々と黒い爆発が連鎖してオーヴェはたまらず「がはっ!!!」と吐血する。
まるでマシンガンのように全身を穿つような弾幕。速く強く重い。
(過去は変えられない!!! 未来しか変えられない!!!)
「ギルガイス帝国のみならず、ガロンナーゼ大陸を征服するつもりだろうが、ここでテメェを倒せばこれまで!!!」
「ムッ!!?」
黒い爆発の連鎖にも必死に耐え、折れたパタを突き出す。
暗黒魔竜クセアムスは不意をつかれてか、ほおを殴られる。
「オオオオオオオヴァァァ────ッ!!!!」
畳み掛けるように連打連打連打連打連打。
さすがは魔王。硬くて致命傷を負わせられない。それでもダメージは蓄積させれる。
(俺の作った未来でナッセたちが楽になれるのなら────!!!)
「認めてやろう。きさまは命をかなぐり捨ててまで我を倒そうとせんとする。確かに立派な聖騎士だ」
多少ダメージを負ったぐらいでは暗黒魔竜クセアムスは揺るがない。
この戦闘力一〇万をもってしても敵わない……。
「恐らく才を認められて早くに聖騎士へ昇華したのだろう。ここで殺すには惜しい逸材。気が逸ったか……?」
「ああ。俺の後ろには頼もしい奴がいる。俺が死んだとこで困らねぇよ!!」
「やはりギルガイス帝国の聖騎士か……!! 侮りがたし!!!」
暗黒魔竜クセアムスが逆にオーヴェを攻め立てて、次々と打撃を浴びせていく。
繰り出される重い攻撃になすすべもないオーヴェは血飛沫を散らしていく。
それでもオーヴェは暗黒魔竜クセアムスに抱きつく。
(この命惜しくない!!!)
オーヴェは暗黒魔竜クセアムスを抱きついたまま、螺旋回転しながら飛び上がっていく。
天高く飛び上がった後は、逆に下へとキリモミ回転を始めていく。
必死に回転しながら遥か地面を目指して急降下────!!!
「ぬうおおおおおお──ッ!!!?」
「喰らえーッ!!! これが俺の奥義ゴッドバード・スカイダイブだ────ッ!!!!!」
ズガガガァン!!!!!
黒竜塔の頂点から暗黒魔竜クセアムスの脳天を打ち付け、そのまま内部を貫通しながら大地まで落としきった。
上から豪快に破裂するように破片を散らしながら黒竜塔は無残に瓦解していった。
(これが……俺の精一杯だ!! 後は頼んだぜ友よ…………!!!)




