93話「ヒロイン四人衆と黒竜人の死闘!!」
オーヴェが捨て鉢とばかりに黒竜人大勢を相手に無双し、黒竜塔を何本も崩していく。
「なんて事だ!!! もう五基も陥落されてしまったぞー!!!」
「まだまだ四〇基もの黒竜塔がある!!」
「バカ!!! 問題はそこじゃねぇ!! 単騎で黒竜塔が五基も落としているのが由々しき事態だろう!!」
「一刻も早く、あの聖騎士を撃沈させろッ!!!」
黒竜人軍勢は焦りながら、ギルガイス帝国の聖騎士だと思っているオーヴェへ殺到していく。
しかしドッカンドッカン蹴散らされてしまう。
その一方で、山道を迷っていたカカコ、レイミン、ロンナ、リュウシは身構えて息を切らしていた。
「そんなところでウロウロしているとはな!! 目障りだ!! 殺してやる!!」
なんと黒竜人が一体、殺意を漲らせていた。
カカコたちはナッセに会いたくて山道を通っていたが迷ってしまい、巡回していた黒竜人と遭遇してしまった。
「うっせぇよ!!! 黒トカゲ!!」
「レイミンは次の魔法を頼む!!」
カカコとロンナは突進し、纏ったオーラの尾を引きながら黒竜人へ飛びかかる。
「ヒトごときが!!!」
カカコの格闘と、ロンナの槍術が連携されてドガガガガッと地面震わす激戦を繰り広げていた。
リュウシが一直線と刀を振るい、無数の三日月の刃を飛ばす。黒竜人は気づいて片手でバシバシ弾く。
「中位階梯『爆裂波』三連発ッ!!!」
レイミンが三つの光弾を放ち、黒竜人をドガドガガドガンと爆発で覆った。
「この程度効かぬ!! 先に殺されたいなら望み通りにしてやるッ!!!」
爆煙から抜け出して黒竜人はレイミンへ襲いかかろうとするが、カカコとロンナが阻む。
「通させねぇぞ!!」
「また次を頼む!!」
「グッ!! しっつこい!!」
ズガッ、ズガガガッ、ズガッガッガ、ズガッガッ、ズガガッ、ズガガガッ!!!
一進一退とカカコとロンナが黒竜人と必死の激戦を繰り広げる。
リュウシが隙をついて通り過ぎざまに刀で切りつけるも、見切られてしまう。
必死にレイミンは詠唱を紡いでいる。
「こいつ強すぎるッ!!」
カカコは一発一発ダメージを受けつつも食らいついている。
かたやロンナもベテランとして槍術を披露して、黒竜人に少しずつ傷を負わせているが決め手に欠けていた。
リュウシも加勢して三人がかりの猛攻で黒竜人を追い詰めていく。
ズガガッ、ガガッ、ズガガッガガガ、ズガッ!!!
「グッ!! ハエどもが……!!! しかし……伝心が届いてないのか!? 援軍が来ないッ!!」
黒竜人は苦戦してて、二人三人ぐらい呼ぼうとテレパシー送ったのだが反応もない。
いつもならすぐ駆けつけてくるのにと焦らされていた。
リュウシが刀と小刀の二刀流で斬りかかってきて捌くのに必死になっていた。
「こ、この……ッ!!!」
バキッ!!
割って入ってきたカカコのストレートパンチに「ぐうッ」と怯む。
ロンナは「今だ!!」と言いながら、カカコやリュウシと一緒に離れる。
「中位階梯黒魔法『天空閃光玉』ッ!!!」
レイミンは杖から青白い光球を撃って、ドゴォンと黒竜人を爆撃した。
それでも倒れない黒竜人に、カカコが虎を象るオーラを纏って体当たり攻撃する。
「さっさとくたばれー!!! 必殺タイガーチャージッ!!!」
ズゴオオンッ!!!!
黒竜人をぶっ飛ばし、向こうの岩山に激突させて破砕した。煙幕が広がっていく。
カカコ、リュウシ、ロンナは激しく息を切らしていた。
しかしノソッと黒竜人が煙幕から現れ、血眼で怒りを表していた。
「きさまら……!!!」
カカコ、レイミン、ロンナ、リュウシは絶望を感じる。
彼女らの戦闘力は各一万そこそこ。しかし黒竜人は二万四〇〇〇。オーヴェが蹴散らしている大勢の黒竜人と同じ一体でしかないが、彼女たちとの力の差は開いていた。
「頑丈すぎる……!!!」
「黒竜人のウワサは聞いてたけど、こんなのがゴロゴロいるなんて……!!」
「あっし、なんとかコイツ一匹は落とせよう。だが加勢がこないとも限らぬ」
黒竜人は怒りに満ちていたが、ジリジリ歩み寄る。
「いい事を教えてやろう。ここから三キロ先に我らが黒竜塔四五基が設置されている……」
「「「な、なにっ!!?」」」
「それに俺は多くいる中の一体でしかない。長年かけて数を増やして力を蓄えてきたのだ。きさまらヒトどもを殲滅する為になッ!」
黒竜人は素早く駆け出し、カカコとロンナとリュウシが「くっ!」と迎撃に向かう。
ドガガガッ、ドガッ、ドガガガガガガッ!!!!
一進一退の激戦が再び繰り広げられ、余波で周辺の岩山や地面などが爆ぜていく。
満身創痍のカカコとロンナは一撃一撃喰らうようになってしまう。
リュウシも奮起して二刀流を振るうが、黒竜人はそれらを見切るようになっていく。
「ふははははははッ!!! 近い内にギルガイス帝国を落とし、ガロンナーゼ大陸を我らが支配するのだ!!! 七つの魔王暗黒魔竜クセアムスさまの下でなッ!!!」
回し蹴りでリュウシをバキッと飛ばす。
続いてカカコとロンナの首を掴み、締める。
「ぐうっ!!」
「あぐ……!!!」
レイミンが慌てて魔法を放とうとするが、黒竜人は「カッ」と口から光弾を撃って爆撃。
爆風に吹き飛ばされ、レイミンはズザザザザッと地面を滑って横たわる。
「ここまでだな!? さぁて……締めて食らってやろうか?」
カカコとロンナは両手でなんとかもがくが、凄い力で絞められて抜け出せない。
するとレイミンは横たわったまま気丈に杖を差し出す。
例え爆撃されようとも、唱えておいた魔法を手放さなかったのだ。それを今放つ。
「受けてみなさーいッ!!! 中位階梯黒魔法『火星凶貫光砲』!!!」
ズオビビビビッ!!!
螺旋を纏う独特な光線が鋭く黒竜人の脇腹をズッと貫き、そのまま軌道状を遮る岩などを次々貫通しながら彼方へ過ぎ去っていく。
黒竜人は「ゴフッ」と血を吐きながらよろめいて、カカコとロンナを取り落とす。
「き……さま!!! この……!!」
血眼でよろめきながら震える黒竜人は口から血がとめどもなく溢れ出している。
すかさずリュウシが刀を振るって飛びかかるが、黒竜人は片手で鷲掴みしてしまう。ギリギリと刀を握り潰す勢いだ。
カカコもリュウシもまだヤツに力が残っていたのかと見開く。
「こいつ……まだッ!!?」
「きさまらを片付けるだけの力は残っているぞ……!! いい加減……死ね!!!」
ロンナはゲホゲホ咳き込みつつも、槍をクルクル高速回転させて勢いを乗せた突きを繰り出す。
「そっちこそくたばれーッ!! ロンナ槍型流!!! メテオボンバーッ!!!」
それが黒竜人の脇にある傷に刺さってオーラ爆破だ。バゴオオンッ!!!
「ぐああああ!!!」
さしもの黒竜人も白目ひん剥いて仰向けにドサッと倒れた。ピクリともしない。
やっと終わった、安堵してカカコとロンナはへたりこんだ。リュウシも苦い顔でホッとする。レイミンも身を起こして「やったぁ……」と精一杯に笑う。
「ち、間に合わなかったか……!!」
「非常事態の最中で駆けつけたのに……、よくもやってくれたな! ヒトどもー!!」
なんと黒竜人が二体も翼を羽ばたいて降りてきたのだ。ガタガタ震えて愕然するしかない。
もはや四人とも疲労困憊で満身創痍。まさに絶体絶命の危機だ……。




