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92話「オーヴェ、黒竜人軍勢を相手に無双だ!!」

 ガロンナーゼ大陸の北西半島には七つの魔王の一角である暗黒魔竜(ダークドラゴン)クセアムスが占拠して、誰も立ち入れぬ『禁止区域』となっていた。


 これにはギルガイス帝国の皇帝陛下も頭を悩ませている。

 本気で武力制圧しようとすれば、多くの黒竜人が散らばって暴れられると被害が拡大するのは目に見えている。

 故に均衡状態を保っている……との(うわさ)だ。



「こんなに多いのかよ……!!?」


 オーヴェは切り立った丘の上で、目の辺りにした光景に驚くしかない。

 高く聳えた岩山の塔が、向こうにも何十基も建っているのだ。

 等間隔で数キロずつ立ち並んでいる感じだ。これだけの数、黒竜人の総人口は相当なものとなろう。


「おまえはヒトか?」


 なんと四体の黒竜人がオーヴェの前で滞空して、睨みを利かせていた。

 竜の頭をしていて大柄な人型の体。背中からは両翼。背中側は黒、腹側が白。まんま黒竜人としても差し支えはない。


「……迷った。気づいたらここにいた」


 オーヴェは左右の手を広げて、迷子を主張する。


「一人か?」

「なら、来てもらおうか?」

「歯向かうなら殺すまで」

「生きては帰さぬつもりなので観念するがいい」


 にじみ出てくる悪意にオーヴェは切羽詰る。

 どう見ても友好的になれそうにない。


「ギルガイス帝国から来た。やはり良からぬ事を企んでいるようだな」

「何!?」

「あのライティアス皇帝の国の!?」

「この数十年、やけに大人し過ぎると思っていたが、耐えかねたか!!」

「そうなれば容赦はしない!!!」


 カマをかけてみたら、案の定殺意が膨れた。

 黒竜人は隠していた殺意をあらわに、牙を剥いて四体一斉に襲いかかる。


「さて! 無双展開だ!!!」


 オーヴェは背中から両翼アームを広げ、右手からパタを伸ばして飛び立つ。

 通り過ぎたら、一瞬にして黒竜人の四体は上下真っ二つに散った。


「「「グオオオオオオオオオオオッ!!!!!」」」


 それを見た他の黒龍人が何千体もオーヴェへ殺到してくる。

 尋常ならざる殺意を剥き出しに、オーラを纏いながら押し寄せる大勢。それをオーヴェは見据え、突っ込む。


 ズッパアアアァァンッ!!!!!


 数百体が四方八方に蹴散らされ、オーヴェは後続の黒竜人へ襲いかかる。

 戦闘力十万ものチートを授けられたオーヴェは次々と突破し続ける。その度に飛び散る黒竜人。


「オオオオオオオヴァ──ッ!!!!」


 ヒロイン四人衆に切り捨てられてもおかしくなかった。

 それでも観念して無防備になった。しかし顔面に傷をつけただけで見逃された。

 この拾った命、来るであろう危機を粉砕できるなら安いもの。


 オーヴェは目の前の大きな塔へ突っ込む。


 ズガアアアアッ!!!!


 空に届くほどに高いであろう塔の中部が爆発したかのように爆ぜて、上部がズズズズ、と傾いていく。

 そのまま瓦解していって粉々と大地に散乱し、煙幕が立ち上った。

 オーヴェは貫くかのように突き抜け、次の塔へ目指す。


「きさまあああああああああッ!!!!」

「鳥男がいい気になるなああ!!!」

「我ら黒竜人と知っての狼藉か!!!」

「近い内にガロンナーゼ大陸を完全制圧すべき戦力を整えているところをッ!!!」

「「「グオオオオオオオ────ッッ!!!!!」」」


 オーラを纏った大勢の黒竜人が殺意まんまにオーヴェへ殺到する。

 それでもオーヴェは捨て鉢とばかりに蹴散らし続けていった。


「黒竜弾、撃て──!!!」


 大勢の黒竜人が光弾斉射による波状攻撃をしかけて、その弾幕をオーヴェは振り切ろうと高速飛行を続ける。


 ドガッ、ドガガッ、ドガン、ドガガン、ドガッ、ドガアッ!!!!


 逸れていった光弾が、あちこち岩山や崖や大地などで爆発する。絨毯爆撃のように連鎖されていく。

 オーヴェは何発か体に受けるも、構わず塔へ突っ込んで二本目を瓦解させていく。


「あの野郎ッ!!!」

「あいつ、強すぎる!! ギルガイス帝国の聖騎士(パラディン)かッ!?」

「これが聖騎士(パラディン)の実力か!!! 大したものだな!!!」

「一騎当千の聖騎士(パラディン)と知られているが……!!!」

「それはいいッ!! やつ一人で黒竜塔二基も倒されてしまったぞ!! 止めろー!!!」


 せっかく建てた軍事基地とも言える塔を二本も倒されて、黒竜人に焦りが走っていた。


「やや望み通りとは違うが、無双展開はまだまだ続くぜええええええッ!!!!」


 額に血を流しながらもオーヴェは獅子奮迅と黒竜人の大勢を蹴散らしていく。

 三本目の塔へ突っ込んで粉砕。同じく上部が傾いて地面へとズズズズと瓦解していった。




 無数ある塔の中で、一際黒い大きな塔。

 まるで本陣と言わんばかりの雲海さえも貫くほどの高い塔。その遥か上部にある尖った所。

 広大な部屋で、雲海が見渡せる大きな窓。


「少し騒がしくなったな。ギルガイス帝国からの刺客と伝心で連絡してきたがにわかに信じがたい」


 広大な部屋でポツンと王座が後ろの支柱にあり、そこに黒竜人が座していた。

 他の黒竜人とは違い、体格が大きく筋肉隆々。こめかみからぶら下がるようなツノ。頭上からはヒレのようなのが一対。真ん中から一本のツノが伸びている。

 黒いマントにローブ。腹には魔眼がギョロギョロしている。明らかに他とは別格だ。


「この七つの魔王が一角暗黒魔竜(ダークドラゴン)クセアムスさまと知って、単騎で挑む愚か者がいるなんてのはな……」


 王座から立ち、ただならぬ威圧が膨れ上がっていく。ズズ……!!!

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