88話「無双ハーレムのヒロインズ奮起!!!」
ナッセたちが女神マザヴァスとかなんやかんやあった間、タッツウ王国に置いてけぼりされたカカコとレイミンは再び出国していた。
「よーし!!! ナッセに会いにいくぞー!!!」
「迷惑じゃないの? ナッセさん、忙しそうだったよ……」
「だからって消えることないだろ!!!」
おどおどするレイミンだが、カカコは納得いかないのでプンスコしている。
「ピキピキピキキー!!!」
獣道を歩いていたら、スライム総勢二〇〇体群がっていたぞ。
しかしカカコはギロッと睨む。
「邪魔だ!! 喰らえ!!! 必殺タイガーチャージ!!!」
なんと虎を象るオーラを纏って高速突進し、ズゴオオオオオッと飛沫を上げながら無数のスライムを一気に蹴散らしてしまう。
戦闘力一万級の攻撃力で全滅させてしまった。
「ギャオーッ!!!」「ギャッギャッ!!!」「ギャーッ!!!」「ギィギーッ!!!」
なぜかプテラノドンは六〇体も空から群がってきたので、レイミンは杖をかざす。
「火の精霊は我が意志に従い、敵なる者に激怒の破壊で粉々にしろ!! その圧倒的な爆発力で以て、我が敵に己の過ちを悔いさせろ!!! 上位階梯『大爆裂破』!!!」
上空で凄まじい大爆発が巻き起こって、哀れなプテラノドンを肉塊に消し飛ばしていく。
大気が震え、地響きが地面を伝う。
その破壊力にカカコも「オメーも凄いじゃん!!」と感嘆する。
「ずっと鍛えてきたんですからね! そしてナッセさんに……!! ポッ」
「あんたも好きなんだな」
「はい!!」
ナッセ……。ヒーローのように現れて去ってしまう。
頼もしくて優しい。爽やかな笑みが忘れられないほど高揚させてくれる。
いつしか彼が「愛してる」と囁きかける事を夢見て、胸がドキドキしていく。
「まずはギルガイス帝国へ行こう。そこのギルドで仲間を集めたり情報収集とかしよう」
「頑張ります!!」
こうして何日もの冒険を経てモンスターを約五六〇〇匹ほど倒していって、ガロンナーゼ大陸最大のギルガイス帝国へ着いた。
「大きいな……」
「はい」
強固な城壁で囲まれた厳かな国。国内にも城壁が仕切られている。中心には難攻不落っぽい頑強な城が見える。
入国する際に兵士から厳重に調査されて、やっと入れた。
豊かなのが窺えるくらい、賑やかな国。人々の喧騒がうるさく感じるほどだ。
しばらく歩いていくと、大きなレンガ造りの建物が目に入る。看板からギルドだと窺える。
「あそこがギルドだ」
「大きいね……。大丈夫かな?」
「行くぞ」
ナッセに会いたいがために決意をした。
入っていくと、歴戦らしい冒険者が佇んでいた。構わずカウンターへ向かって受付嬢に声をかけた。
「登録したい」
「では、こちらをどうぞ」
いろいろ記入したり、ステータスを調べてもらったり、なんやかんやあってカードを発行してもらった。
最初は低ランクだが、なんとかなるだろう。
「ナッセていう冒険者知ってるか?」
「……ナッセさまですか? バレンティア王国の王太子ですよ?」
「「えっ!!?」」
仰け反るカカコ、レイミン。
「有名になってますよ。なんせ世界大会で優勝しましたし、勇者として旅立って四魔貴族を壊滅させ、七つの魔王を三体も討伐してるんですから」
「「えええええええっ!!!?」」
カカコもレイミンも飛び上がるほど驚いた。
受付嬢はクスクス笑う。
「最近だと、魔王勢力に潜入して内部から改心させたそうよ。あの魔王まで天使に変えたとか本当かしらね」
「あ、あいつ教祖やってたっぽいけどさ……」
「うん。そんな事までしてたのね。もうこれ大物すぎるんじゃない?」
「うう……」
カカコも尻込みしそうになる。
すると女剣士が駆け寄ってきたぞ。タタタッ!
「面白そうな話してんじゃん!! 聞かせてくれよ!!」
栗色ボサボサロングのエルフ。軽装の銀の鎧を着ている。背中には槍。
「オメーは誰だ?」
「あなたは……?」
「私は槍士ロンナよ。ここら辺ではベテランだからね。あそこで話そうよ」
誘われるままに食堂へ行った。
彼女はギルガイス帝国で一と二を争う冒険者だそうだ。しかも同年代。
歯車が組み合うように、ごく自然に和んでワイワイ談笑する仲になってしまう。
元々はオーヴェの無双ハーレムゲームで仲間に加わる設定なので当然といえば当然か。
「よし! あたしとレイミン、ロンナでパーティー形成だな!!」
「よろしくお願いします!!」
「へへっ。ソロ飽きてたからちょうど良かったぞ」
ギルガイス王国の近くに、広大なダンジョンがぽっかり空いていた。
多くの冒険者が挑戦するという。
「資金いるだろ? ちっと調達していこうよ」
ロンナの提案でダンジョンへ挑んだ。
そこは階層が多く、百階以上にものぼる。相当深い地下まで届いているようだ。まるで地獄へ続いているかのように地下ほどモンスターが強くなっていく。
「グワオオオオオオオオオッ!!!!」
大きなトリケラトプスが四五体もぞろぞろ出てきて、カカコとレイミンは身構えた。
ロンナは槍をクルクル高速回転させていく。そして高く跳躍し、一気に槍を振り下ろした。
「ロンナ槍型流!!! メテオストライク!!!」
槍から放たれた圧縮弾が数十匹のトリケラトプスを巻き込んで直撃し、轟音を伴って爆散。
さしものトリケラトプスも肉片を散らして木っ端微塵だ。
ロンナはニッと笑ってみせる。
「おおっしゃああああ!!! 行くぜえええっ!!!」
「私だって負けてられませんよ!!!!」
触発されたカカコとレイミンが奮迅の勢いでトリケラトプスを殲滅させていった。
「こりゃ一気にSランク冒険者だな。負けてられないよ」
カカコ、レイミン、ロンナ揃って一万級の戦闘力なのだが、これもゲーム設定ありきだった。
元々はオーヴェと一緒に戦うためだったから当然か。
一つの空洞内で結界石を四方に置いて、テントを張って休息中。
焚き火をたいてカカコ、レイミン、ロンナが囲む。
「ナッセ王太子に惚れたから、また会いたいんだってね」
「ああ。勝手に消えやがって」
「うん……」
あの時は魔王勢力に属していて、教祖をやってたらしい。
勇者オーヴェを倒して瞬間移動で去ってしまった。その後で魔王勢力が改心したってのは驚かされた。
「王太子さまなー……。既に婚約者いるぞ。ヤマミ令嬢だったか?」
「「ええええッッ!!?」」
まさかの婚約者の存在に、カカコとレイミンは驚く。
続いて四魔貴族を壊滅させた時に二人が活躍していた事をロンナが語ったのだ。
ドラグストアル王国の『永遠の楽園』事件ではリョーコが解決したらしいとも。
その後、ある程度潜ってダンジョンから資源を引き当てて、それを資金に変えて再び旅に出た。
「あたし第三王妃になってみせる!!!」
「じゃあ私は第四王妃かな?」
例え婚約者が二人いようとも構うものか、とカカコとレイミンは息巻いていた。
彼女らはリョーコもナッセの婚約者だと勘違いしているようだ。
ロンナは苦笑いする。
「それほど惚れ込むなら、ナッセがどんなヤツか見てやろーじゃないか!!」




