87話「生命神ガーデスさまの種族転生術!!!」
感情任せにうっかり登場してきた女神マザヴァスのおかげで勝敗条件が分かってきたぞ。
「早い話が“ハッピーエンドかバッドエンドかに拘らず”作中の最終回と“同時刻”まで、創造主たるオレが生きていれば著作権を全部頂ける。でも最終回前に死んだらゲームオーバーで著作権があっちに取られる……って事か」
「しかも完成度の高い世界だから、なんとしても奪いたいって事ね」
「たぶん、これまでも卓上ミラー型魔鏡で異世界の人を手当たり次第引っ張ってきて、盗作を繰り返してきたんだと思う」
《そのようじゃのー》
まだいた世界三柱神の内、支配神ルーグも頷く。
《幾度なく繰り返してきた最中で、妖精王ナッセ殿が魔鏡に引き込まれて、やっと完全版の世界が具現化されたのだろう。ヤツの言った通り千載一遇ってワケだな》
「闘神ブラッディーさま。なんでオレだと完成度高いの?」
《上位生命体はすべからく『星幽界域』で創造主となって世界を創り統括していく立場になりえる。つまり、ナッセ殿を間接的に創造主扱いで女神マザヴァスが世界を創れたのだろう》
「え……?? なんでだぞ? 女神自身は創れねぇんか?」
《ヤツはまだ未熟ということだろう》
確かに感情的になってオレを殺そうと姿を現してたもんな。
《『星幽界域』へ入って間もない若い上位生命体ゆえかのー?》
「だからオレのをパクってたのか……」
「はた迷惑ね……」
ヤマミは目を細めてため息。
そんな世界三柱神とナッセたちの会話に、魔王ヴィードら勢力は蚊帳の外だ。
邪神官ゲマルは気難しそうな顔をする。
「むう……何を話しているのか分からん……??」
「神々の会話みたいですな」
「……理解できん」
「オデも……分からない…………」
彼らにとっては天上の話のようにも見えるのだろう。
《我なんか格下だって見下してるんだろ? なにやったって無駄なんだろ? もういいよ……一生寝たい》
黒霧魔王ヴィードに至っては格の違いを思い知らされていじけている。働け。
「とはいえ、女神マザヴァスはオレの先輩みてーなもんか」
《そうですね……》
にっこりする生命神ガーデスにナッセは振り向く。
「生命神ガーデスさま。お願いがあるんだけどいいかな?」
《何でございましょう?》
「魔王ヴィードたち悪性魔族を善性に作り替えてくれないかぞ?」
それを聞いて魔王ヴィードら勢力は「えええええッ!!?」と驚き竦む。
《今回だけは特別ですよ?》
「ありがてぇ、頼むやってくれ!!」
《ちょっと待て!!!!! 待て待て待てっ!!!!》
なんと黒霧魔王ヴィードが放射状に霧の体を広げて、一つの伸ばした手で制止してくる。
しかしナッセは鈴をスッと出す。
「肝心なところで裏切られると困るし、嫌なら浄化された方がいいか?」
《すみませんでしたー!!! 是非やってくださーい!!!》
霧状の体でわざわざ手足を作ってペコペコ土下座する。
巻き込まれそうだったシシカイとメミィはホッとした。一緒くたに浄化されたらたまんねーもん。
そんな情けない魔族に、邪神官ゲマルたちはジト目で呆れた。
今まで最高権力者として支持してきたのに、思ったより小物だと落胆してしまった。
《では、黒霧魔王ヴィード、シシカイ、メミィ、そして他の魔族の方々を善悪反転させましょう》
生命神ガーデスが少し高く浮き上がると、祝福するように光の波紋が幾重にも広がっていった。
暖かい光が魔王ヴィード勢力を包んでいくと、徐々に容姿が変わっていった。
「おおっ!!?」
ヴィードは四枚の翼を広げた白い巨大毛玉。ツリ目は相変わらずだったが、トゲトゲしい赤い紋様はポップな水色になっていた。
生命神ガーデスによって熾天使ヴィードに生まれ変わったようだ。
シシカイは一対の天使の羽を備えた白いサイコショッカーみたい。
「なんで、あたしがこの姿なのよっ!!?」
なんとメミィは縮んで、淡く灯る蝶々の羽を備えた小さな妖精になってたぞ。
妖精王より下位にあたる妖精に生まれ変わったようだ。
未だ見ぬ他の魔族も、仰々しい姿だったのがマイルドになってた。
《ふふっ、みなさん可愛くなりましたね》
《わ……我が毛玉に……モフモフに……》
「羽ふさふさが素晴らしいです」
「ちょっと妖精なんて嫌なんですけど? ねぇ、ちょっと!?」
ヴィードはモフモフ毛玉になって満足げっぽい。シシカイは天使の羽が気に入ったようだ。メミィだけはなんか喚いてる。
思わずナッセは「ふふっ」と綻んだ。
「ナッセ、ゲームでもそういう展開になるの?」
「どうせオーヴェの無双ハーレムストーリー破綻しちゃってるから、好きにしていいんじゃねぇ?」
「それはそうね」
「おい!!! おいいいいい!!!!」
オーヴェは抗議をしたかったが、後の祭り……。
彼としてはゲーム上、倒すべきモンスターって設定だったのに作り替えられて台無しになった。
「気づいたら私たちも衣服変わってるんだが?」
「あ、本当だ!」
《うふふ。そちらにも少しサービスしちゃいました》
邪神官ゲマルは、白い衣服の神官になっていた。
キョウラ、ジャキ、キルアも黒衣包帯男だったのが、白衣の闘僧風になってたぞ。
しかもキョウラはキョンシーみたいに包帯巻いて札を張り付けてたのがなくなって、素顔さらされて銀髪イケメンだ。
これも生命神ガーデスからの粋なサービスだぞ。
「せっかくの無双ハーレムがぁ…………」
オーヴェは愕然と両膝をついて諦念たのだった。しくしくしく……。
《それでは頑張ってねー》
《我は行くが、いつでも味方をするぞ》
《ふふっ、またね……》
世界三柱神は光の柱を伸ばして、フッと消えていった。
オーヴェのゲームはとりあえずクリアできたと、ナッセは晴れ晴れした顔で「よし!!」と満足したぞ。
ヤマミは真顔で、愕然しているオーヴェと嘆くメミィを見ていた。
「妖精なら、ナッセをたらし込むことはないようね……」
ナイスバディでエロい魔族が、ちっちゃな妖精になったので対象外になったようだ。
オーヴェはハナっからアウトオブ眼中。




