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85話「ヒキコモリ魔王よ出ろ!! そして働け!!」

 女神マザヴァス……。

 巨人のようにデカい巨乳美女。金髪ロングでウェーブ。白いキトンに、波のように揺らめく羽衣。

 大我(ダイガ)オーヴェが自白した限りでは、天女かと思うほどの風貌だろう。


「なんと……!? かような女神が存在してたとは!!」


 邪神官ゲマルは驚く。


「ああ。俺も目を疑ったさ。でも姿を変えてくれてチートも与えてくれたんだ」

「オレの時はいきなり異世界転移だったぞ」

「そうね。漫画のナレーションから始まってたし」

「え?? ナッセは違うのか???」


 オーヴェは見開いてナッセに振り向く。ナッセは「ああ」と頷く。


「じゃあ……どうやってチートもらったんだ!!?」

「いや、オレのは素で」

「私たちはもともと鍛えて強くなっただけ」

「嘘だろ……!? あれであの強さか……!!?」


 同じチートで戦っていたと思っていたらしく、愕然するオーヴェ。


「さて……」


 ナッセは柱の上の水晶を見やる。

 黒霧魔王ヴィードが引きこもっているらしい所だ。


「お────い!!! ヴィード!!! 来てくれねぇか──?」


 しーん……。


 腐っても魔王。寝入っているものの、何かあれば気づくように鋭さは持っている。

 しかし呼びかけに目を覚ましたが黙っている事にした。

 すると水晶がバリーンと破られて、光が差し込んだ。


《ぎえっ!!?》

「起きろ!!!!!」


 妖精王のナッセがズカズカ入り込んできて、黒霧と思わしき不定形の魔王は隅に引っ込んでいく。


「起きてんじゃねぇか!!! 降りろ!!!」

《やめろ!!! 我は黒霧魔王ヴィードだ!!! 教祖風情が指図するな!!!》

「いいから来い!!」


 ナッセは裾を引っ張るように、不定形の魔王の端っこを掴んでズルズル水晶から引きずり出す。


《ま、待て!!! なんで我を掴めるのだ!? まだ心の準備ががが……!!! ひいいっ!!!》

「まずは外へ一歩!!」


 ズダンとみんなが待つ広場へ、ナッセによって下ろされた黒霧魔王……。

 放射状に黒霧が広がる姿をしていて、中心には両目と左右対称の赤い紋様が歌舞伎(かぶき)メイクのように走っている。


《うう……!》


 邪神官ゲマルとキョウラたちは、初めて見る魔王の姿に驚いていた。

 巨大で底知れない闇を覗かせる魔王。見てるだけでも圧倒的な威圧が滲み出ている。

 しかしカッコ悪い登場だったので、やや萎えている。

 直属の部下であるシシカイとメミィはナッセが怖いので押し黙るしかない。


「邪神官になってから初めて見た。今まで水晶から出てこず、生け贄を捧げよとだけおっしゃっていたが……」

「え? 生け贄を?」

「教祖さまはフラフラ放浪していたから忘れているかもしれませんが、生け贄を捧げるたびに力を増す。そして七つの魔王など高位魔族を上回れば、世界を支配できると語っておった」

「うむ。その為に我々が生け贄を調達していたのです」


 キョウラが自白した。


「キョウラ、そしてジャキ、キルア!! 二度とするな!!!」

「は……??」

「むむ!?」

「お……オデ……!」

「関係ない人を巻き込むんじゃねぇぞ!!」


 語気を強めたナッセに叱責され、キョウラたちはビビる。

 そして跪いて「すみません……。二度としないと誓いましょう」と深い謝罪をしてくれた。

 邪神官ゲマルは戸惑うものの、浄化の鈴を浴びてたので「私の責任だ」と素直に頭を下げる。


「ねぇ、あたしたち……」

「うむ。教祖さまの機嫌を損ねてはいかん。ここは従おう」


 メミィとシシカイも恐怖で震えながら大人しくする事にした。


「それからヴィード、力を貸せ」

《な、なんなんだ……!? この我をなんだと思って……!!?》

「次、ゴタゴタ言ったら鳴らすぞ」


 ナッセは煌びやかな純白の鈴を生成する。

 ヴィードは《ヒイッ》と見開く。黒い霧の塊がガクガク震えて縮こまる。


「おまえも相当な力を持っている。女神マザヴァスの企みがどんななのか分からない以上、戦力は揃えておきたい」

《うう……》

「聞こえなかったか? 返事!」

《は、はい……!!》

「声が小さい!」

《はいいいッ!!!》


 竦み上がる魔王ヴィード。

 邪神官ゲマルもキョウラたちもシシカイもメミィも、そんなありえないシーンに絶句するしかない。

 まるで部下と上司、もしくは親子としか……。


「でもよ魔王ヴィードは邪悪な精神生命体(アストラル)だろ? 善悪反転できねぇ?」

《む、ムリだ……!!! 最初っからこの姿だ……!! 長い年月をかけてヒトの欲望や邪念などから少しずつ集まってきて生まれたらしい存在だ……》

「なぜ知ってるんだ?」

《他の魔族から聞いた……。自分の出生が気になるのは我も同じだからな》

「うーむ」


 ナッセは腕を組んで首を傾げる。

 浄化の鈴で邪念を吹き飛ばして、いいやつにできるのは肉体を持つ生き物だけ。

 魔貴族はテンショウのようなやつがいるから、その気になればいいやつになれるかもしれない。

 同じ魔貴族であるダクメーアとルルナナは普通に死んだが、まぁそれはそうとして。

 完全な精神生命体(アストラル)だと完全にダメージだからなぁ。過剰に与えればもちろん死ぬだろう。



 ズォンッ!!!! 唐突に重々しい威圧が膨れてきて、辺り一面闇に覆われた。


《その必要はない!!!!!》


 なんと薄らと巨大な女神が闇に浮かんできた。ズズ……!!

 怒りに満ちた顔をしている。ヴヴヴ……唸り声の様に聞こえてきた。

 姿の特徴からしてあれが……!?


「「女神マザヴァスッ!!!?」」


 異世界転移の黒幕であろう存在。


《いかにも!! この私こそが、この世界を統べる存在!!! そして絶対的な創造主である!!》

「まさか……ここに現れてくるとはっ!!」

《面白くなるかと思って見過ごしてやったが、やはりイレギュラー!! 排除せねばならぬか!!?》


 徐々に強まる威圧で、この根城が震え上がっていく。

 あの魔王ヴィードですら《ひいい……!!!》と縮こまってるぞ。

 ナッセとヤマミは苦い顔ながらお互い手を繋ぎ合って妖精王にボウッと変身。

 それでも女神マザヴァスは圧倒的すぎる……。


《およしなさいッ!!!!》

《やはり現れたかッ!!! 黒幕ッ!!!》

《ちょっち待ってくれんかのー》


 なんとオレたちを囲むように、三体の白い影が現れると徐々に姿が浮かんでくる。

 その内の一人は知っているヤツだ。


「し、支配神ルーグ!!?」

《うむ。また会ったね。ナッセ君とヤマミ君》

「見て!! 他の二体も同格よ!!」


 オレもヤマミも驚愕するしかない。

 邪神官ゲマルとキョウラたちはビビって言葉を失ったままだ。

 シシカイとメミィは「教祖さまは支配神と知り合いだったのか……!?」とますますビビる。


《初めましてです。私は生命神ガーデスです。よろしく》


 薄ピンクの羽衣で胸や股の恥部を隠しつつ、両翼を広げている全裸女神。金髪ロングの美女。

 優しく柔らかい顔をしている。


《我は闘神ブラッディー……だ》


 大柄で長身の男。左右に広がる両肩アーマーにマント。厳つい顔。黒髪が逆立っている。二又の角が左右から伸びている。

 三人とも凄まじい威圧を放っていて、女神マザヴァスと衝突し合っていた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!!!


《むう……!!! あの世界三柱神がここに来るとは……!!!!》


 創造主らしい女神マザヴァスの出現に対して、支配神ルーグと闘神ブラッディーと生命神ガーデスも登場。

 まさかの展開!? 世界三柱神がいきなり勢揃いしてきたぞ!!

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