84話「無責任!? ヒロインを置いて去るナッセ!!」
横暴な勇者オーヴェは戦いの最中で、女神ザマヴァスの存在とチートを授けてもらった事を自白してきた。
その上でナッセは戦い完封した。
それをカカコに見られてベタ惚れされてしまったぞ。
「あたしと付き合ってくれ!! ビビッと惚れた!!」
「それよりレイミンとその父はどうするんだぞ? 町にそのままだろ? 埋葬やらないと……」
「……そうか。そうだったな」
落ち込むカカコ。放っておけない自分にもどかしいと思いつつ空に叫ぶ。
「シシカイ!! 来てくれ!!!」
フッとサイコショッカーみたいな不気味な邪僧が現れて、カカコは仰け反ってビビる。
「は、なにか?」
「タッツウ王国を映像で映してくれ!」
「お容易い御用で」
丁重にお辞儀して、腹の魔眼でタッツウ王国の風景を映し出す。それをナッセは視認。
「感謝する。シシカイは帰っていいぞ」
「ハッ!!」
シシカイはフッと消えた。
ナッセはカカコと捕縛済みのオーヴェに手で触れて「界渡来」を唱え、フッと消える。
オブ村へ一度現れてレイミンとその父の亡骸にも触れて再び「界渡来」を唱えた。
タッツウ王国は同じガロンナーゼ大陸にある小国。
山に囲まれてて、緑豊かな王国。田舎ながらも充実した日々に住民も不自由なく暮らせている。
そんな門前でナッセたちがフッと現れた。
「す、すごい……!!!」
「あなた……すごい黒魔法を……!?」
カカコとレイミンは感嘆してしまう。
そして、事もあろうかレイミンは顔を赤らめてドキドキし始めた。
「一度見た事がある国なら一瞬に転移できるからな。さぁ父を……」
「あ、ありがとうございます!! 素敵です!!! ナッセさん!!」
なんとレイミンはベタ惚れの顔で感謝してきたぞ。
「あ、ああ……。それはいいから国へ」
ナッセは父を抱えて、カカコとレイミンと一緒に入国した。
住民などに事情を説明して父を埋葬してもらった。ナッセの衣服で誰もがビックリしてきたが、恩人という事で感謝してくれた。
しかしオーヴェに対して住民は殺気立ってしまう。
「どうしてくれるの!! カイラスさんには罪が無いでしょ!!」
「なぜ巻き込んだ!!?」
「この野郎!! カイラスさんの恨みだ!!!」
「カイラスさんに世話してもらった事あるのに恩知らずがッ!!!」
「あんたなんか勇者じゃねぇ!!!」
「この国の恥さらしだ!! 出て行けー!!!」
ふん縛ってあるオーヴェを袋叩きして煙幕が舞う。ボッコボコだ。
「ご……ごめんちゃい…………」
腫れた顔で痛々しい姿のオーヴェは俯いたまま掠れた声で謝罪した。
カカコが全力疾走で飛び蹴りを放った。ドゲシッ!!!!
「ふんだ!!!」
レイミンはドキドキ惚れ顔でナッセに歩み寄ってくる。カカコもほおを赤らめて振り向いてくる。
二人からのアイラブ集中砲火だぞ。やばい。
「ねぇ……ナッセさん……」
艶かしくレイミンが抱きつこうとする寸前、ナッセはサッと退いた。
「レイミンさん、カカコと一緒に暮らしてくれ。コイツはオレが預かる。まだ聞きたい事あるからな」
「「えっ!?」」
「気持ちだけは受け取る。ありがと。じゃ!」
笑顔を向けて手を振ったあと、オーヴェを連れてフッとかき消えた。
「ああ……行っちゃいました……!!」
「ああああ~~~~っ!!!!」
恋する人に逃げられてレイミンは呆然し、カカコは叫ぶしかなかった。
ふっふっふ。これぞ必殺『フラグが立つ前に消える』術だ。
物を言わせず、グダグダ言い合いせず、そのまま一言述べてから『界渡来』で消える。これは便利すぎる。
去ろうとする所を引き止められずに済む道理。
魔王の根城で、ヤマミが腕を組んですごい剣幕で待ってたのにはビビったぞ。
「今回は大目に見るけど、あんたは“ナチュラルたらし”なのを自覚して」
「わ、分かったぞ……。あれはゲームの設定だからな」
プレイヤーである勇者に一発でベタ惚れするように設定されているからムリもない。
まさかリアルで設定を再現するなんて思わなかったもん。
こっちだって勇者って設定だから、ベタ惚れ効果範囲に収まってるのが迷惑すぎる。
しかし、これで切り離せた。二度とタッツウ王国には行かぬ。
「あと戦利品だ」
「おお……。さすがは教祖さま。あの勇者を捕らえるとは……」
「教祖さま、どうしましょう?」
ナッセは「うん」と頷いて、ボウッと高次元オーラを噴き上げて妖精王化する。
銀髪がロングに伸びて舞い上がる。何度見ても神秘的で美しいと見惚れるほどだ、邪神官は感嘆する。
同時になぜ魔王の教祖をやっているのかも疑問が浮かぶ。
「この鈴でっ!」
スイカの大きさほどの純白に燦々輝く鈴が生成された。
シシカイとメミィは「げっ!」と青ざめる。
「トゥインクルサニー!! 快晴の鈴ッ!!!」
優しい音色をキーンと鳴り響かせ、暖かい光の波紋を広げた。
キラキラ光飛礫を撒き散らし、純白の蝶々の群れがブワッと舞い、たちまち明るい世界に満ちる。
邪神官ゲマル、邪闘僧キョウラ、ジャキ、キルア、そして勇者オーヴェから黒い邪念が抜け出て霧散。
しかしシシカイとメミィが「ぎゃああああ~!!!!」と被害を被ったぞ。
ブスブス……黒焦げみたいになって横たわる。
「あっ、いけね!!! 純粋な魔族だったな!? 悪い……!」
「全く……」
ヤマミは細めで呆れるが、実はこの結果を予想していた。
だが敢えて見過ごした。
特に女の形をしているメミィは早々に始末したかった。色気満載でナイスバディだからだ。
「あいつらせっかく仲間になったのに致命的だなぞ」
「っても所詮は邪念だけで存在する精神生命体。それが魔族。彼らはダメージを受けざるを得ない」
「死んだらどうしよ……」
「大丈夫」
ヤマミの上で、宙に浮く黒薔薇のツボミが怪しい放射光を放つ。
それが開花すると中からシシカイそっくりが現れる。
「こっちにブラックローズ・アバターがあるじゃない」
ヤマミの能力で生み出したアバターは一〇〇%従ってくれるので裏切られる心配もない。
「そっか。それならいいか、助かる」
「任せて!」
ムフッと満足げに笑う。
ナッセは私のものだと言わんばかりに……。
「か……勝手に殺さないでくださいい……!!!」
「あたし……、死んでないからぁ……!!」
ピクピク痙攣しながらも生存を訴えてくるシシカイとメミィ。あ、生きてた。
《ぐううっ…………!》
黒霧魔王ヴィードも鈴の浄化攻撃をモロに食らって水晶から黒いモヤが抜け出ていた。
高位魔族だったので熱中症寸前くらいの精神ダメージで済んだのだが、中でグッタリしている。
ヒキコモリよろしく二度寝した。働け。
「な、ナッセ……!!! 俺はなんて事を……!!!」
鈴によって邪念が吹き飛ばされたオーヴェは罪悪感に苛まされていく。
無双チートを得たばかりに関係ない住民まで巻き込んだ事を蒸し返したのだ。
「それより女神ザマヴァスの事を詳しく聞かせてくれ」
「は……はい…………」
俯きながらオーヴェは語り始めた。




