表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/140

83話「第二ヒロインのレイミン!!! 逆に勇者を恨む!!」

 逃げ惑う住民とは反対方向へ、黒髪オカッパの女性が走っていた。


「お父さんっ!!!」


 本当はタッツウ王国に住んでいたが、久しぶりに父と一緒にオブ町へ来ていた。

 たまたま別行動して一人ショッピングを楽しんでた矢先に盗賊団が現れたと知って、慌てて広場へ向かったのだった。

 目にしたのは両翼アームを広げたイケメンの勇者と、赤黒のマントをなびかせた黒衣の銀髪チビが対峙していた。

 そして青髪ショートの女性が腰を抜かしている。

 盗賊団は既に殲滅させられて死屍累々。

 ……その周りで無関係の住民と一緒に父が倒れていた。思わず見開く。



「ここで戦うと被害が出る。町の外で戦おう」

「あ? 関係ねーよ!!! 弱いヤツは死んでて当然だろ!!! 巻き込まれる方が悪いんだよ!!」


 汗を垂らして提案する教祖ナッセと、激昂している勇者オーヴェ。


「お父さんッ!!!!」


 黒髪オカッパが飛び出してきて、そこらへんの男へしゃがみ込む。

 男は上下真っ二つで死んでいる。

 血の気が引いてワナワナ震え上がる女性。


「なんだぁ? あの女……。もしや!! レイミン!!?」


 黒髪オカッパでオフショルダーのローブを着た魔道士の女性。

 カカコと同様、無双ハーレムのヒロインだ。第二ヒロインというべきか。


「おい!! レイミン!! こいつらを虐殺したのは、そいつだ!! 教祖ナッセってヤツだ!!!」


 なんとオーヴェがこちらへ指さして罪をなすりつけてきたぞ。


「違う!! ウソついてるっ!! コイツが殺したんだ!!」

「なっ!!?」


 咄嗟にカカコが叫び指さす、オーヴェは驚いて仰け反った。

 レイミンは涙ぐみながらオーヴェを睨む。


「あんた……ッ!!」

「うっ! ウソじゃねーよ!!! バカ女、話聞けよ!! こいつは悪の教祖ナッセ!!! 黒霧魔王ヴィードを復活させて世界を支配しようとする悪いヤツだ!!」

「弱いヤツは死んで当然、巻き込まれる方が悪い、って言ってたよね!! あとバカ女ですって?」

「ぐぬ!! き……聞いてたのか!?」


 矛先が完全に犯人へ向いてくれて、ホッと安堵するナッセ。


「レイミン聞いてくれ!! 俺は勇者オーヴェだ!! 仕方がなかったんだ!! 盗賊団を殲滅させなければもっと被害は大きくなっていたんだ!!! 必要な犠牲だったんだっ!!! 分かれっ!!!」

「仕方がない……ですって?」


 レイミンはワナワナ怒りで震えていく。

 しかも腰を抜かしてたはずのカカコまで怒りに漲って、ゆらりと立ち上がった。レイミンは見開く。

 悪辣な勇者を許せないとオーヴェを睨み、突っかかる。


「テメー!!! なにが必要な犠牲だーっ!!!! ふざけんなー!!!」


 激昂したカカコはオーラを纏って拳の連打を繰り出す。オーヴェは慌てて素早く回避していく。

 本来なら勇者にベタ惚れするはずだったヒロイン。

 なにか間違ったか、逆に怒りを買ってしまったようだ。


「町の住民が何をしたって言うんだよ!!!! それを、それをーッ!!!」

「聞き分けがないクソアマが……!!!」


 短気なオーヴェが反撃しようとした時、ナッセがそれぞれの手首を掴んだ。


「うぐ!! て、てめぇッ!!!!」

「ううっ!!!」


 オーヴェとしては振り切ってナッセもろともカカコを切り捨てようとしていた。

 しかしピクリとも動かせない。


「なんで止めるんだよ!?」

「カカコ……。コイツはオレに任してくれ。これから場所を移す。レイミンと一緒に父の方を見ててくれ」


 悪の教祖みたいなカッコなのに優しく諭してくれる男に、カカコもレイミンもキュンとした。

 目にハートが浮かんだ気がした。


「あ、あなたは……?」

「一体誰なんですか?」

「ナッセだぞ。こんな格好で失礼するが」

「「うん」」


 安心して頷いてくれるカカコとレイミンに、ナッセは綻んだ。

 オーヴェはギリッと歯軋りして、両翼アームを広げて強引に飛び退いた。思わずナッセは手首を離してしまう。


「ここで戦うのはまずいから、場所変えさせてもらうぞ!」

「うるせえーッ!!!!」


 つっかかるオーヴェにナッセは素早く間合いを詰め、肩に手を触れて「界渡来(サイドトライ)」と呟いてフッとかき消えた。

 カカコはいてもたってられず駆け出した。

 彼女の脳裏にはナッセでいっぱいになっていたぞ。キュンキュン!


「行っちゃった……」


 レイミンはポカンとする。




 オブ町から数キロ離れた荒野にナッセとオーヴェがフッと現れる。


「てめぇ……!!!」

「巻き込むなよ!! 迷惑だろ!」

「綺麗事抜かしやがって!!! 悪の教祖が正義ぶってんじゃねーよ!!! ぶっ殺す!!!」


 頭に血がのぼったオーヴェは両翼アームを広げて超高速突進。

 振ってくるパタを、ナッセは太陽の剣(サンライトセイバー)で弾く。

 通り過ぎたオーヴェが空中で翻して、再びの突進。


 ガギィッ、ギギギンッ、ギィン、ギギンッ、ガギン、ギンギンッ、ギィンッ!!!!


 縦横無尽に飛び回るオーヴェを相手に、ナッセはひたむきに太陽の剣(サンライトセイバー)で捌いていく。

 その余波で荒野があちこち爆砕して破片が飛び交う。


「ぬ!? てめぇもあの女神からチート貰ってたのかっ!!?」

「女神??」


 なおもオーヴェの猛攻はやまない。点在する岩山が砕け、地面を穿ち、大小の破片が飛び、煙幕が流れる。

 それでもナッセは完全に見切っていた。

 長年切磋琢磨と鍛え抜いたのではなく、ただ強いだけの雑な攻撃なので楽に捌けていた。


「しらばっくれるんじゃねーよ!!! これだけの強さ、女神マザヴァスからチート貰ったろ!!!」

「女神マザヴァス……!!!」

「俺は異世界転移して、そいつから姿を変えてもらって強くしてもらえたのだッ!!! テメーもそうだろ!!!?」


 それを聞いて、ナッセは強めに太陽の剣(サンライトセイバー)を振るう。


 バギャンッ!!!!


 なんとオーヴェのパタが砕かれた。

 思わず怯んで後方の空中へ飛び退き、砕かれた刀身を見て青ざめる。


「な……なっ……?」

「オレの異世界転移も女神マザヴァスのせいかは知らないが、おまえは直に会ってたんだな」

「なに……!!? き、きさま!?」

「答えろ!! 女神マザヴァスは何が目的でおまえをここに転移させた!?」

「知るか!!! 魔王から世界を救えって言われただけだーッ!!!」

「そうか」


 ナッセは空中を跳ねるように天高く登っていった。

 オーヴェはキッと見上げて、両翼アームを高速で羽ばたかせた。


「死ねーッ!!! ゴッドバード・デス・トルネード!!!!」


 凄まじい竜巻が唸りを上げてナッセへと急上昇する。ゴゴゴゴ!!!!

 戦闘力一五万級に跳ね上がった猛威がひしひしと伝わる。しかし悲しいかな、自ら研ぎ澄ますように鍛えこまれていないので見た目ほど脅威を感じさせない。

 もし丹念に鍛え上げていればナッセを追い詰めるほどの強さになっていただろう。


「サンライト・フォール!!!!」


 ナッセは一気に太陽の剣(サンライトセイバー)を振りおろしながら急下降。まるで流星のように光り輝く軌跡を描いて、竜巻を切り裂いていく。

 そのままオーヴェの顔面に刀身がめり込む。メシィ……!!


 ズガガァン!!!!


 脳天を地面に叩きつけられたオーヴェは「グガハッ」と吐血。

 カカコが駆けつけていた。


「ん?」


 太陽の剣(サンライトセイバー)をぶら下げて振り向くナッセが愛おしくなってきた。目が潤んでくる。


「ナッセー!!! 大好きだー!!!」

「えぇ……」


 ベタ惚れしてきたカカコに、ナッセは引いた。

 本来なら勇者オーヴェに惚れまくるヒロインだったが、恋心が教祖ナッセへ向いてしまったのだ。




 それを映像で見ていたヤマミは黒髪ロングを舞い上がらせてメラメラ燃えていた。

 邪神官たちは「ヒッ」とおののく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ