82話「勇者オーヴェ、やべーサイコ野郎だった!!?」
とりあえず引きこもってる魔王は黙らしておいたぞ。
何にもしない無職のくせにプライドだけ高くて偉そうなんだよな。働け。
「なぜオーヴェが勇者だと分かった?」
「はい。我が監視能力で各地を見張った所、タッツウ王国の王様が「魔王ヴィードを討伐せよ」とオーヴェに命じたのを確認しました」
「それで、現在はあの町へ寄っていると?」
「左様です」
シシカイは頭を下げてくる。
「タッツウ王国……」
「これも存在しない国ね」
「ああ。あいつが作ったゲームの国名だぞ」
ヤマミは地図を広げた。案の定、いくつか知らない名称が新たに浮かんでいた。
ガロンナーゼ大陸にタッツウ王国が記されている。
前に見た時にはなかった。
「やっぱりリョーコ同様、合作されているわね。今度はゲーム世界……」
「ああ」
今度は中学生ん時の同級生できたか。
ちぇ……、せめてモリッカとかノーヴェンとかフクダリウスとかだったらよかったのにな。
ナッセはモヤった。
「ともかく今は勇者の動向を監視するか」
「「「「はは──ッ!!!!」」」」
やけに気合い入っているなぞ。忠誠心高すぎて引く。やり過ぎたか……。
一方でオーヴェは青髪ショートの女性と一緒に、のどかな町で気だるそうに歩いていた。
イケメンになっても言動は相変わらずだ。
「ゲームの世界かと思ったら、フィールドマップ全然違うし、知らん町もあるし何なんだよ……。ここでレイミンと会えるのか?」
「どういう事だよ?」
「ああ。カカコには関係ない話だったか」
カカコ、青髪ショートで胸が大きめのグラマーな女性。第一ヒロイン。
今はオーヴェの言動や本性に不審を抱いている。
すると、盗賊団がぞろぞろとやってきた。
しかも女子高生まで現れたぞ。
「ガトガト……!! オーッホホホホ!!! このわたくしは盗賊の女頭領、そして最強の女子高生ミッチーよ!!」
「なんだよテメェ……!?」
オーヴェに睨まれて、ミッチーはゾクッと身震いする。
「と、とにかく行きなさい!!! あいつをしばきなさいよ!! ガトトーッ!!」
「へ、へい!!!」
「やっちまえー!!!」
「「「わああああああああああああッ!!!!」」」
性懲りもなく盗賊団が大勢でオーヴェへ殺到する。
カカコが身構えようとする。
しかしオーヴェは背中から仰々しい両翼アームを展開し、右手からパタを出す。
「へっ、無双してやるぜ!!」
瞬時に低空飛行で飛び去ると、盗賊団は上下真っ二つで虐殺された。
加減が難しかったのか、近くにいた町人まで巻き込んで死屍累々にしてしまう。
肉片が散乱し、鮮血で地面が染まる。
「ひいっ!!」
ミッチーは液状化しサササッと逃げ去った。
「やっぱ相手が人間だと違うな……。爽快だぜ」
初めての殺人にも関わらず、ゾクゾクと心地よい快感に酔いしれるオーヴェ。
あくまでゲームの世界としか見ていないからか、それとも元からサイコ野郎だったのか……。
カカコ、ドン引きしてるぞ。
生きていたらしい盗賊の一人が呻きながら震えている。
「あ……ううぅ……助け…………」
「お、生きてんのかよ」
オーヴェは生き残った盗賊の頭を踏むと、ゆっくり体重を乗せていく。メシメシ嫌な音がするとともに「あぎゃあぁぁ……ぁ……」と悲痛な呻き声がこもれ出る。
バキバキと骨が砕ける音がし、更に鮮血が地面に広がっていく。
グチャッ!!!
「んん~~~~いいぜぇ……」
まるでトマトを潰すかのような感覚に恍惚するオーヴェ。
元いた世界では殺人などできなかった。
無双できるほど強くないのもあるし、なによりお尋ね者になって追われる立場にはなりたくなかった。
しかし、ここでは何をしても許されるんだ。
気に入らねぇヤツは好きなように殺してもいいんだ。
「あ……ああっ…………」
そんな残虐にカカコは青ざめて腰を抜かした。恐怖で震えてて動けない。
人間相手でも残虐な本性は変わらないからだ。
そんな映像をナッセは指差しながらヤマミを見る。
「なぁ、アイツやっつけた方がいいんじゃねぇか?」
「それはそうね……」
ヤマミも引いているらしく、同意するしかない。
そしてニーナが恨みづらみと語っているのを思い出す。こいつらみたいなのが転移してきたからこそ、悲劇が起きたのだという。
今はサイコ野郎一人だから、今の内に摘めば被害は広がらずに済む。
「ちょい行ってくる」
教祖ナッセが歩みだして、邪神官たちは「えっ!?」と驚く。
止める間もなく、ナッセは「界渡来」と呟いてフッと掻き消えた。
ヤマミは呆れて肩を竦める。
映像を見やると、突然現れたナッセにオーヴェはビックリしているのが見えた。
「てめぇは!!?」
「よう……」
オーヴェにとっては中学生の頃を思い出す、かつての友人。
一緒に学校生活を送っていた一人。
「……ナッセか!! 大人になってもチビのままだな」
ニヤリとオーヴェは笑む。
「しかもゲーム通り、悪の教祖としての登場か!! ざまぁねぇな!!」
「だったらどうだって言うんだ」
「これから俺はヒロインをたくさん仲間に加えていって、貴様ら悪の刺客を撃退していくんだよな。なのに、教祖自身が現れるなんてな……」
「その方が被害少なくて済むだろ? これ以上巻き込みたかねぇ」
癇に障ってかオーヴェはピクッと眉を跳ねる。
「た……助けて……!」
腰を抜かして震えるカカコが、悪の教祖ナッセに手を差し伸べていた。
ナッセは優しく笑みを見せる。
「もう大丈夫! オレが来た!」
そんな頼もしさにカカコの目が潤む。
まるでヒーローがやってきたかのような安心感と高揚感を覚えた。
なんとかしてくれそうな雰囲気に、カカコの口元が和らぐ。
「おい! まるで俺が悪者じゃねーか!? 前々から気に入らねぇって思ってたんだ!! ちょうどいい!! テメーのようなヤツをいたぶってスカッとさせてもらうぜ!!!」
身構えたオーヴェから凄まじい威圧が膨れ上がっていく。
ピリピリと震撼が伝わってきて、周囲の住民は恐怖して逃げ惑っていった。
カカコはビクッと竦む。
「オオオオオオオヴァ──ッ!!!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!!!
周囲に衝撃波が吹き荒れ、高次元オーラを噴き上げるオーヴェ。
背中から両翼アームを広げ、右手からパタを生やして、こちらに殺意を向けてくる。
「さぁ、じわじわいたぶってやるぞ……!! クックック」
「勇者の言うことじゃねぇな……。古の勇者の血が叫ぶ!! 魔を滅ぼせし雄大な魂を具象化せし聖剣となれ!! ブレイバーセイントソードッ!!!」
ナッセも右手から聖剣を具現化し、更に太陽の剣で包んでいった。
そんなカッコよさにカカコは高揚して、恐怖を振り払えた。
「すごい!? 本物の勇者じゃん!!?」
思わず驚いたオーヴェは次第に顔を歪ませ、パタの切っ先をナッセに向ける。
「な、なんで、てめぇが聖剣を出せるんだよっ!!!?」
「勇者の血を引いている王族という設定で、バレンティア王太子だからな。リョーコの設定に巻き込まれてこうなった」
「リョーコ……?」
「ああ。アニマンガー学院の同級生だぞ……。あ、いけね」
忘れてた。ヤマミがこっちに来ているという事は、リョーコ置いてけぼりじゃねーか。
「ちぇ、仕方ねぇな……。さっさと終わらして迎えに行くか」
「お前は勇者ではなく、悪の教祖だろがっ!!! この俺こそ真の勇者だっ!!!!」
「能書きはいいから来いよ」
ナッセのふてぶてしい態度に、短気なオーヴェはプチンとキレた。
「メタクソに殺してやらああああああッ!!!!!」




