8話「ついにライバルキャラ登場!!」
魔道士ニーナが恐らくドラゴン退治に出かけていったので、騎士ナセロンにはオレとヤマミが同行することになったぞ。
しかし、漫画のストーリーと違ってくるのは吉となるか凶となるか……。
「漫画と違ってくると都合が悪いの?」
ヤマミが聞いてくる。
「今までさ、展開が違うと良くない事が起きると思ってた」
「うん」
「でも、考えてみれば展開が多少違っても最終回が同じハッピーエンドなら問題ないんじゃないかって思う?」
「だといいけど……」
今はストーリー通りアマゾネス村へ行って、ソフィーナとかいう変な女と戦うんだっけな。
「はれ? なんの話ししてるの?」
「いや、こっちの話……」
「ふーん」
こうしてみれば能天気な性格なら誤魔化せるように見えるけど……。
「何を企んでるかしらないけど、敵にならないで欲しいね。そうなったら無慈悲に殺すから」
明るい顔で、そんな物騒な事を言ってくるから不穏なんだよなぁ。
性格が違うだけで中身は全く変わらない。
もちろん、殺し上等なので容赦してこないのは今までを見れば分かる。
「少なくとも敵対する事はないわね。何かしら予知と違う流れになったら、何か悪い事が起きるか心配してるだけ」
「ならいいや」
あっけらかんとナセロンは前を向く。
深い森へ入っているので、そろそろアマゾネス村へつきそう。
確か、この辺りでアマゾネス族が二人見張りについているはず……。
「ああっ!!?」
なんと二人の死骸が転がっているではないか。
腕がちぎれたり、足がなかったり、辺りに鮮血が飛び散っている。
「はれ? これも予知通り??」
「いや……」
「でも一体誰がやったの?」
ナッセとヤマミは駆け出す。もう気配何もないから不安だが。
ようやく村へ付いたら、案の定皆殺しされていた。死屍累々と死骸が散らばっている。
「道理で気配がないわけだぞ……。死んでるから……」
「例の変な女がやったの?」
「いや、そんなはずは……。ソフィーナはこんな過激な事をする性格じゃないぞ……」
ナッセとヤマミは絶句するしかない。
本来なら、ナセロンが見張りと戦う事になるが槍士チェルに止められる。
そんでアマゾネス村へ入ると変な女が襲ってくるので、ナセロンが撃退して終わる。
「やっぱりみんな死んでるなー。これからどうするの?」
「……墓は作っておこう」
「はれ? 無駄だと思うよ。日常茶飯事、世界でこういう事割と起きてるからキリがないや。さっさと行こうよー」
やっぱりナセロンの論理感ズレてる。
普通に弱肉強食の摂理を受け入れている主人公って、作者としてはどうだろう……。
自分で描いたのにモヤモヤするぞ。
「ナセロン、ザイルストーン方向へ行ってくれ。後で追いかける」
「無駄な事するの好きなんだなぁ。まぁいいや」
虫も引きちぎりそうな無邪気なナセロンが怖いと思ってしまった。
そのまま平然と去っていってしまう。
ナッセとヤマミは困った顔でしばし見合わせる。
小一時間くらい、簡易な墓を作って埋葬した。
「やっぱりチェルもソフィーナも殺されてたわ……」
「二人ともヒロイン候補として仲間になるんだけど、結局空気だったので要らないから途中脱退させるとはいえ気の毒だなぁ……」
「あなたもキャラの扱いひどいわね……」
「当時の中二病こじらせてるオレだからな。適当に好きなのを詰め込むだけ詰め込んでチグハグに描いてしまってる。クソ面白くないのも無理ねぇぞ」
「私は面白いと思うけどね」
「え?」
さらっとヤマミが読破しているみたいなこと言い出したので不安に駆られる。
「これから何が起こるか楽しみではあるけれど」
「……これ以上見て欲しくねぇ。恥ずかしすぎて穴があったら入りたいぞ」
「ふふっ」
ヤマミは微笑む。
なんか喉にトゲが引っかかってるような気がしないでもない。
しばらく森林を歩いて抜けると、砂漠が広がっていた。
ザイルストーン王国周辺は砂漠地帯だ。昼は熱く、夜は凍える。
「まっすぐ進めば、遺跡が見えるはず」
漫画では適当だったのに、ここでは普通に砂丘がウロコのように連なっている風景だ。
これほどのクオリティを描きたいぞ……。
砂嵐が時々吹きすさぶが風魔法のバリアで遮るからへーき。
なんかの遺跡が見えてきた。黄土色のレンガで作られた建造物が多く、水路やプールに水が溜まっている。
するとモンスターが湧いてきたぞ。
ぞろぞろと数十匹。
「下級魔族の更に下のレッサーデーモン……」
「ビジュアルは、どこぞの竜殺し魔法のラノベの影響ね」
「それは言うなよ」
容姿としてはツノの生えた横幅が広いオオカミみたいな感じだ。
「ぐるがあああああああああッ!!!」
「吠え声も似てる……」
「言うな。死にたい」
パクリでゴメンなさいと思いつつ、光の剣を生成して挑む。
レッサーデーモンは吠えると炎の矢を無数放つ。ナッセは空中手裏剣を足場に、縦横無尽に跳ねながら次々切り裂いていく。
ヤマミは複数の小人で囲んで、それらは地面へダイブすると黒筋となって地形を張ってレッサーデーモンを黒炎に包んでいく。
「大した事はなかったな」
準備運動にもならない。
しかしナセロンはどこにいるんだろう? 確かそこでライバルキャラが……。
「ほう。中々やるではないか」
「え?」
見上げると、空から降りてくる長身の男が見えた。
二本のツノが生えていて、太い一本の前髪が垂れた茶髪オールバック。眉とくっついている三角形っぽい目。八重歯。黒いマントに紫の衣服。やはり楽したいビジュアルだ。
「まるでベジー……」
「やめてやめて!! 言わんでも分かるぞ!!! 死にたい!!」
某龍球漫画のアイツを意識したキャラだ。
「そんなに死にたいなら、殺してやるぞ?」
「そういう意味で言ったわけじゃないけどな。ってかナセロンは……?」
「なんだそいつ? まぁいい。貴様も強そうだ。アマゾネス族ではつまらんかったからな」
ザワッと怒りが昂ぶる。
「まさか……!!」
「くっくっく!! 知り合いだったか? いやスマンな! 安心しろ、同じ所へ送ってやろう」
本来ならナセロンと死闘をするはずが、もう堪えられねぇ。
ナッセは怒りのままに光の剣を生成。キッと睨む。
「暗黒騎士ブラッドォ!!!!」
あとがき
これ以降は毎日一話ずつ連載です。