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78話「異世界転移の黒幕か!!? 女神マザヴァス登場!!」

 青空一面の空に、ギラギラ輝く太陽。まさに蒸し暑い夏真っ只中……。

 とあるマンション一室で、小汚い布団の上で大の字に寝転がるデブがいた。周囲にはカップめんやペットボトル、ビール缶などが散乱している。

 飲みかけもあり、パンパンになったゴミ袋が何個もあって臭いが充満しているぞ。コバエがブンブン飛び回っている。


「あー、なんなんだよぉ……!! 暑すぎだろぉ……!!!」


 彼は大我(ダイガ)オーヴェ。黒髪ブサメンのデブ。タンクトップにトランクス。


 朝からずっと寝転がったままで、ぜぇぜぇ息を切らしている。

 起きたくないと体が拒絶していて、昼になっても何もしていないという虚無な気持ちに沈んでいた。

 せっかくの休日なのに寝たままでいいのかと焦燥が渦巻いている。


 比較的涼しくなる夕方になって、空を赤く染めて薄暗くなってくる頃、オーヴェはやっと身を起こした。

 朝からずっと飲まず食わずだった為に腹が空き、喉が渇いている。

 冷蔵庫を開けてもビール缶二本とウィンナー三本だけという。しょうがないのでそれで腹を満たした。


「ちっ、後で買えばいいか」


 面倒で後回しばっかりなオーヴェは、夜になってゲームをやり始めた。

 久しぶりに昔に作ったRPGツクーラで懐かしもうとしたが、結局面倒になってきた。リセットしてツクるモードに切り替えて設定を変えていった。


「レベルアップ、メンドクセー……」


 なんとプレイヤーのステータスをカンストさせて保存。

 しかしその後プレイしても数分立たずに飽きた。楽勝すぎたからか。

 また布団へ寝転がってグガーグガー夢の世界へ行ってしまう。そんな折、枕元の卓上ミラーがカッと閃光を放った。




 気づけば青空一面で雲海の上、オーヴェはそこで立っていた。


「な、なんだっ!? まさか……熱中症で死んだ…………??」


 キョロキョロ見渡して戸惑う。

 しかし肩を落として神妙になっていく。


「どうせパッとしない人生だったんだ……」


 すると目の前で渦のように歪んでいって、徐々に女神さまが姿を現していく。

 オーヴェは見開いて見上げていく。

 巨人かと思うほどの美しい女神。立ち振る舞いが悠然としていて、白いキトンが揺らめく。


《ようこそ……。大我(ダイガ)オーヴェ》

「まさか本物の神様っ……!?」

《いかにも》


 マジで女神さまを目の辺りにして驚くしかない。


「まさか……天国か地獄か行かせられんのか??」


 もしそうだとすれば、自分は間違いなく地獄へ落ちるのだろう。

 確かに殺人も窃盗もしてはいないが、悪態をついたり怒鳴ったりして人間関係を壊す事が多々あった。

 仕事でも趣味サークルでも何一つ上手くいっていない。

 そればかりか、気になった女性をネチネチ絡みまくって嫌われて周囲とも険悪になってしまった。


《ご心配なさらず……。あなたはまだ死んでいません》

「え? なんでだ??」

《あなたを呼んだのは他でもない、とある異世界で魔王の猛威にさらされて危機に陥っているのです》

「まさか本当に異世界転移!!? マジで??」

《はい》


 棚からぼた餅か、オーヴェは目を輝かせていく。


「スゲー!! まさか本当に異世界転移できるなんて夢みてーだ!!」

《夢でもありません。本当に異世界転移するのですよ。ふふっ》

「ってか、マジでいいのか?」

《はい》


 女神は優しく笑んでいる。

 上手くいきすぎてるような感覚に、さすがのオーヴェは疑心で沸く。


《そうそう申し遅れましたね。私はグレチュア天地を創造し、それを統括する女神マザヴァスです》

「め、女神マザヴァスさま……!!」


 恐れ多いと縮こまるオーヴェ。


《そう畏まらなくてもいいですよ。それに……》


 女神が手をかざすと、なんとブサデブだったオーヴェはイケメン化した。

 全身を映せるスタンドミラーが現れ、その姿に驚く。

 引き締まった顔立ちに、緑かがった金髪。スラッとした体型に浮き上がる筋肉。服装もファンタジーっぽくオシャレだ。


「こ、これが……俺か……!?」

《あなた自身、元の容姿にはコンプレックスを抱いてたでしょうし望むままに作り替えておきました》

「ありがてぇ!!! 本当にありがてぇ……!!」


 歓喜していくオーヴェ。


「ってか、俺は戦った事もねぇド素人だし、誰にも負けねぇチートくれよ!!」

《そのつもりです。最初っから最強レベルにステータスを補強しておきました。ステータスオープンしてください》

「ス……ステータスオープン!」


 なんと数値が表示されたウィンドウが現れた。

 力や素早さなどが九九九九九とカンストしている。総合戦闘力一〇万。

 努力も苦労もせず、一気に超人レベルに強くなったのだ。


「スゲェ!!! 無敵じゃん!!! リアルで俺TUEEEEEEEできるぞ!!!」

《実はあなたの自作ゲームを参照して再現したのです。もちろんスキルもね》

「よし!!」


 ステータス欄に二つのスキル名が表示されていた。


「まずはミラクルウィング!!!」


 背中から紫の両翼アームが生え出してバサッと広げる。すると足が床から浮き出す。

 思い通り自由自在にビュンビュン飛び回って飛行能力を堪能していた。


「スゲー!! 鳥が好きで憧れて作ったスキルだ!! しかもこの『ミラクルウィング』の造形がカッコいい!! 更に!」


 右手の手甲から銀に輝く刀身が伸びた。

 試さなくても分かる。強靭で神秘的で鋭さで高い攻撃力を誇る。


「伝説の剣『ミラクルパタ』まで再現できてるじゃねーか!!!!」


 新しいオモチャに喜ぶようにオーヴェはブンブン振り回している。

 そんな彼を、女神マザヴァスは薄ら笑みを浮かべた。

 なんのリスクも代償もなく不相応のチートを与えられて喜んでいるのが滑稽(こっけい)に見えていたからか。


《勇者オーヴェさま。これでゲーム通り無双ハーレムを存分に楽しめますよ。素敵なヒロインたちもリアルになって登場しています》


 オーヴェはカカコ、レイミン、ロンナ、リュウシがドットキャラからリアルになると想像して「うへへ」とよだれを垂らす。

 もはや感謝しかない。さすがは女神さまだぜ。


「なにからなにまでサンキューだ!!」

《ふふふ。そろそろ異世界転移させますよ》

「おお!!! 待ってました!!! 無双ハーレムカモンカモーン!!!」


 眩い閃光が全てを覆った……。

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