71話「不条理の無限再生に、聖騎士猛る!!!」
聖騎士アーサーとクルッペルが乱戦して、度々衝撃波が撒き散らされる空中戦。
その余波に煽られて森林がバサバサ揺れ騒ぎ、葉っぱが舞う。
「はい、はい、はい、はいやあああーッ!!!」
煌びやかな装飾のビキニを着た踊り子の魔貴族クルッペルは、アクロバティックにジグザグ空中を跳ねながら、聖騎士アーサーへ嵐のような蹴りや手刀を振るってガンガン攻め立てている。
一方でアーサーは大剣型の聖剣『ギガトンカリバー』で猛攻を捌いていた。
ガガッガガガガガッガガガガガガガッガガガッガッガガガガッ!!!!
「グッ!! 小娘の分際で……ッ!!!」
「これでも立派な魔貴族……、高位魔族なんですよ!! はーいッ!!!」
ズガッ!!!
前転宙返りカカト落としでアーサーを地面に叩き落として、高々と飛沫を吹き上げた。
岩盤が捲れ上がって大きなクレーターが形成されるほど相当な攻撃力だ。
同じくしてレジャードは魔弓から凄まじい連射によって、禍々しい矢による弾幕が聖騎士グランハルトを呑み込む。
通り過ぎていった射線によって、直線上の森林や岩をも貫通して散らす。
「その程度で勝てると思うなッ!! 魔貴族ーッ!!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!
グランハルトは二刀流の聖剣を隙間なく振るって、矢の弾幕を切り抜けていたのだ。
これが一対の聖剣たるツインボルグを振るう聖騎士。
間合いを詰め、屈折する剣閃を描いてレジャードへ斬りかかる。
「なにッ!?」
「おしまいだッ!! 千折斬ッ!!!!」
「ぐあああッ!!!」
幾重の剣戟で切り刻まれたレジャードは八つ裂きになって霧散。
しかし違和感があった。グランハルトは怪訝に眉をひそめる。敵は今の攻撃を敢えて受けたような気がする。
確実に致命傷を受けて魔貴族は滅んだはず……。
プリンスはキザに薔薇にキスする。
それを粉砕せんとアレフは騎馬で駆け出す。オーラをまとったままマッハを超えた超高速により、周囲に衝撃波を散らして、後方から真っ直ぐ飛沫を吹き上げていく。
「では行きますよ。爆弾を生成する魔貴族の力……とくとご覧あれ!」
プリンスは手に持つ薔薇をズラして数十本に数を増やし、それを放り投げた。軽やかに黒薔薇の花が舞う。
そこへアレフが通ると被弾して、爆発が連鎖してドカンドカン爆風が広がる。
一発一発がかなりの破壊力だ。
「しゃらくさいッ!!! 絶槍殺ッ!!!!」
「な!?」
爆発を身に受けて血塗れになろうとも、憤怒の勢いで突進を維持してプリンスに槍の突きを炸裂させた。
一瞬にして破裂するようにプリンスは爆ぜた。
アレフは上空にいるクルッペルへ振り向く。
「不条理だと思っていいぜ!! 正々堂々とサシで勝負するつもりねぇからなッ!! ハハッ!!!」
「よし!! あとは女の魔貴族だけか……!!」
グランハルトとアレフはクルッペルを二人がかりで叩こうとする。
すると、塵が収束して人型を取っていく。思わず緊迫してアレフとグランハルトは振り向き直す。
なんと屠ったはずのレジャードとプリンスが万全の姿で蘇っていた。
「不条理だと思っていいぜ、か。どうぞ存分に思ってください」
「ふっ。我々は不死霊王ダクメーアさまの眷属として、不老不死の力を得ているんですよ」
「ふざけるなあああッ!!! 絶槍殺ッ!!!」
激怒したアレフがマッハで飛び出し、飛沫を引き連れて槍で二人まとめて貫き通す。
見事、木っ端微塵に散らす。
しかしその塵が再び収束していって、元通りのレジャードとプリンスが蘇る。依然余裕の笑みを浮かべる。
「お試しなら、そちらもどうぞ」
「蘇らぬよう切り刻んでくれるッ!!! うおおおおおッ!!! 千塵斬ッ!!!!」
今度はグランハルトが二刀流の聖剣を幾重に振るって、軌跡が数百と煌く。
レジャードとプリンスは粉微塵に切り散らされて絶命した。
……はずが、何事もなかったかのように元通りと二人は蘇った。絶句するグランハルト。
プリンスは「満足して頂けたらなによりです」と丁重にお辞儀する。
「クソッタレ……!!! 七つの魔王ってのは不条理かよ!! ハハッ」
「普通に戦っても強敵なのに……、中にいる騎士団がこうしている間にもッ!!」
クルッペルが「はいやーっ」と急降下してきて、グランハルトとアレフは互い離れた。
ドギャアアッ!!!!
地面を抉るように突っ込んだクルッペルにより土砂が波紋状に噴き上げられた。
ズズズズ……、地鳴りと共に煙幕が漂う。
グランハルトとアレフへ、クルッペルが躍りかかる瞬間、閃光が覆う。
「北闘豪剣流・龍轟破ッ!!!」
なんとアーサーが突き出した大剣から極太の光線が放たれて、クルッペルを呑み込んで向こうで大爆発を起こした。
烈風が吹き荒れ、大地を揺るがす。ゴゴゴ……!!!
「アーサー無事だったか!?」
「いや、それよりも敵の不死身が厄介だ……!!! いくら殺してもキリがねぇッ!!!」
アーサーは額から血を流しているものの、健在だ。
不死身に焦るアレフとグランハルトにアーサーは冷静に語り始めた。
「こいつらも無限に再生できるわけではない。奴らの魔法力が無尽蔵なれば七つの魔王に甘んじたりしない。ただし長期戦は覚悟しろ」
「ああ!!」
「要は根比べか!! ハハッ!!!」
アーサーがそう言い放っただけでアレフやグランハルトの士気が上がる。
もうもう煙幕が広がり続ける所から、無傷のクルッペルがアーサーへ飛びかかる。
「はいっやーッ!!!」
「ムッ!! 北闘豪剣流・猛壊砕ッ!!!」
逆にアーサーが振り上げた大剣を一気に地面に叩きつけるように振り下ろし、ズドンッとクルッペルを叩き伏せた。
その衝撃波が柱のように天高く吹き上げて、周囲に土砂を散らす。
豪快極まる一撃だ。
「……どういう理屈かは知らんが、粉微塵からも再生できるのは確かに厄介だな」
もうもうと煙幕が立ち込めている最中、塵が集まってクルッペルも蘇っていく。
それでもアーサーは大剣を嵐のように振り回す。
「北闘豪剣流・爆乱無尽撃ッ!!!」
荒れ狂う大剣の剣戟でクルッペルを飛沫に切り裂いていく。
離れている森林さえもズガンッとスライスに切り散らされて、全てが震撼に包まれた。
「旋波・絶槍殺ッ!!!」
「うおおおおおッ!!! 千柵斬ッ!!!!」
アレフも螺旋状の渦を纏いながら突進してプリンスを粉微塵に粉砕。
グランハルトも縦に並ぶ数多の剣戟を放って、レジャードを細切れに斬り散らす。
それでもクルッペルとレジャードとプリンスは塵が集まって元通りに再生。
「再生が有限かどうか、どうぞいくらでもお試ししてくださーい!」
「辛いねぇ……。もう結果は知れたものですがねぇ」
「ふっ」
それでもアーサーとグランハルトとアレフは戦意を漲らせて、それぞれ得物を振るって反射光を煌めかした。
「「「我ら聖騎士を舐めるなッ!!! いかなる無限も完膚なきに潰すまでッ!!!!!」」」




