65話「やっぱり洗脳王国だった!!? そして次なる罠!!」
ドラグストアル王国……。
そこでは何もかも充実していて、世界一かと思うくらい美味しい料理が出ていて、ほぼ勝てるカジノなど爽快な娯楽施設が揃っている。
毎年、多くの人々が『永遠の楽園』へ導かれる為に訪れて来るところだ。
「ハハハッ!!! 最っ高だぜ!!!」
「これで億万長者!!! 勝ち組だぜええええッ!!!」
「やればやるほど儲かる儲かる!!!」
「遊ぶだけで一生食うに困らねぇ!!! こんなところがあるなんてっ!!!!」
「なんで、もっと早く来なかったんだろうなァ!!?」
昼夜を問わず、歓喜に満ちて笑う人々。
こんなに満ち足りるのなら、わざわざこの国から出ていこうなんて人はいない。
「まだ……『永遠の楽園』に入ってるわけじゃないだろ!?」
「ええ。でも、こうして何回も出ようとしても、入国したかのように戻ってしまう!!」
リョーコを連れてナッセとヤマミは、この国を出ようと四苦八苦したが無駄に終わったようだ。
「えー、もういい加減諦めたらー? せっかく楽しんでるのにー?」
リョーコは乾いた笑いで呆れてくる。
もはや目は正気を示していない。まるで洗脳されたかのように……。
切羽詰るナッセとヤマミは互い顔を見合わせる。
「あたしはカジノ行ってみた──」
ボウッと高次元オーラを噴き上げて、ナッセは妖精王化した。
足元にポコポコと花畑が広がり、背中に二対の羽が浮く。銀髪がロングに舞い上がる。
すると頭がスッキリしてくる。
「もしかしたら、これをっ!!」
右手を伸ばすと、花吹雪が収束していって鈴を創造していく。
スイカの大きさほどの純白に燦々輝く鈴が生成された。
「トゥインクルサニー!! 快晴の鈴──ッ!!!」
その鈴を振るい、優しい音色をキーンと鳴り響かせ、暖かい光の波紋を広げた。
キラキラ光飛礫を撒き散らし、純白の蝶々の群れがブワッと舞い、たちまち明るい世界に満ちる。
ブワッと浴びたリョーコは仰け反り、紫のモヤが霧散していく。すると彼女の目の色が元通りになっていく。
「え……? あれ??」
「おお!! やっぱり幻惑術にかかってたんだな!!」
「……やっぱりね!!」
ヤマミは確信した。
精神耐性が高くないヒトなら、気づかずに幻惑術にズブズブはまっていく。
それは快楽に身を委ねて堕ちていき、自分で物事を考えられなくなってしまう。そしてそのまま二日後に『永遠の楽園』とやらに導かれる。
「私たち妖精王だから、高い精神耐性で効き目が弱かったのね」
「そうみてぇだな。あの騎士団も精神鍛錬してたようだけど結局全員洗脳されてたしな」
「……私も」
ヤマミも黒い花畑を広げて、漆黒の羽を二対背中に浮き出して妖精王化する。
両目の虹彩に三日月の紋様が浮かび上がる。
ドラグストアル王国の出入り口を目で凝らす。ギン!
「やはり、時空間が捻れて反転するように仕込まれている。だから出ていこうとしても入国させられてしまうようね」
「出れるんだよな?」
「ええ……。私の時空間魔法なら出れない事もないけど……」
「ち、ちょっとー!? 何の話!!?」
リョーコはワケが分からないようなので、かくかくしかじか説明したぞ。
「ええ~~!!? ガッツリ洗脳されてた!!?」
「ああ! ヤバかったぞ! 目がイッてんだからさ」
リョーコは「うそ……!!」と戸惑い動揺していた。
洗脳されていると、それまでの記憶がおぼろげになってたようだ。盲目的に快楽へ身を落としてしまっている。
「お前は出ろ!! ヒトじゃ精神攻撃をモロに受ける」
「私が国外に出すから……」
ヤマミがズズズズ……と黒い花吹雪の渦を作り出していく。
「ち、ちょっと待なさーい!! ここにいる洗脳しようとしてるボスとか叩けばいいじゃん!!」
「オレは散策てがら『察知』で探してたけど、ルルナナってヤツはおろか怪しいヤツいなかったぞ」
「ええ。私の小人で調べても、この国では何も出てこない」
「じゃあ……!? 『永遠の楽園』ってところに行かないとボスいないってワケー!?」
ナッセとヤマミは頷く。
「ここにいたら、精神がおかしくなっちまう。出ろ」
「ねぇ、だったら一緒に出ない??」
「…………そうね」
残り二日、それまでバカ正直にこの国で待つ理由はない。
《あらあら、そんなもったいない。あなた方もコレクションに加えたいからねぇ》
「その声は……!!?」
「月夜の悪夢女王ルルナナッ!!!!」
どこからか声が響いてくる。
間違いなくエルフの国で倒したやつだ。どうして生きているのか不可解だ。
「なぜ生き返っているんだッ!?」
「確実に燃やした……。魔貴族とて生き返る道理はないはずよ」
《ほほほ……言ったでしょう? 私は永遠の存在……。いかなる方法を持ってしても死なないのよ。常に若く美しく咲き誇れる》
「なにそれー!!?」
《貴方たちは邪魔……。ちょっと別室で大人しくしててね》
ズズズズ……、と周囲が歪んでいってナッセとヤマミとリョーコは底知れない闇へと呑まれた。
思わずリョーコの手を握り、咄嗟に「ヤマミッ!!!」と叫ぶ。
しかし時空間転移ができないのか、苦い顔をしている。
「おかしい!! この途方もない魔法力!!! まるで……四首領クラスッ!!?」
「なにっ!!?」
《貴方たちを招待する為の贅沢な仕掛けよ。これ使うのすっごく疲れるからね。洗脳が効かないかもと思って、数日溜めておいたのが功をなしたわ》
そのままなすすべなく亜空間へ引きずり込まれてしまう。
そして、真夜中の砂漠へ降り立つ。
「こ、ここは……!!?」
星々すらない真っ暗闇で、妖精王でなければ自分の姿すら見えないだろう。
「なになに?? 何も見えないよー!? 地面柔らかいんだけど?? 砂?」
「ここは砂漠地帯ね。砂丘が並んでいるのが見えるわ」
「えぇ!? あんたら見えるのー!!?」
「ヒトと違って、オレたち妖精王はそれ以外で視認できるから昼間のように見える」
ズブズブ足が沈む。相当深い砂漠だろう。
それにあちこちで白骨が散らばっているみてぇだ。
《少し散らかってるけれど二日間ゆっくりしていてちょうだい》
「ルルナナ!! ここはどこだぞ??」
《ふふっ。そこは通称『金輪際』で別名『万物の墓場』ね。元々は『永遠の楽園』へ導く際に選別から外れた方々を落とすところ……》
ナッセは怪訝に空を見上げる。
「また魔貴族お得意の『深淵殿造』とやらか?」
《残念。違っててゴメンなさいねぇ。そこは数多ある次元の一つ。なーんにもない不毛の次元でね、そこの砂は五劫の擦り切れほどに時が進んで塵となったものらしいわ》
「なんですって!!?」
《うふふ。選別から外したゴミを捨てるのにちょうどいいから利用してたのよね》
オレたちは絶句してしまう……。
「ねぇ!! ずっとこのままにすんのー!?」
《ご心配なさらず……、二日間が経てば迎えに来るから辛抱しててね。是非とも貴方がたをコレクションに入れたいから……。ふふ》
「ま、待てぞっ!!!」
手を伸ばすが、声はそれきりとなった……。




